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    2018.04.25

    ハイカーズ・パラダイス! 香港100㎞ロングトレイル

    「大都会の香港にトレイルなんてあるの?」と人々は思うだろう。でも香港は東京やニューヨークと環境が異なる。

     高層ビルが密集する市街地の背後に山々が連なっている。東京のようにビル街がどこまでも続くのではなく、摩天楼の裏側はいきなり山なのだ。六甲山系が連なる神戸のイメージに近い。

     しかも香港は1997年までイギリスに統治されていた。フットパスが発達しているハイキングの先進国、イギリスの歩く文化が浸透しているのだ。

     740万人もの住民が集中する過密都市でありながら、いくつもの自然特別区があり、山々や海岸には何本ものトレイルが整備されている。治安は良好で、猛獣もいない香港は、じつはハイカーズ・パラダイスなのである。

     今回僕が歩いたトレイルは、香港のトレイルの整備を推進した25代総督の名を冠するマクリホーストレイルだ。全長100kmのコースは香港最長のロングトレイルであり、それぞれに特色がある10のセクションに分かれている。

    最初のステージ1(10.6km)は人造湖の周囲を歩く舗装路。

    ステージ2(13.5km)に入ると、浜沿いのトレイルとなり、山頂が鋭く切り立ったシャープピークと海原を望む絶景が続く。

    ステージ3(10.2km)からは山岳地帯。歩きごたえのあるトレイルが幕を開ける。

    ステージ4(12.7km)とステージ5(10.6km)は見晴らしがいい尾根沿いのトレイル。高層ビルが密集する大都会と海を眺める天上のハイキングが楽しめる。個人的に最もオススメしたいコースだ。

    ステージ6(4.6km)は舗装路のみの殺風景なトレイルだが、ステージ7(6.2km)から山登りになり、眺望が楽しめる針山を経てステージ8(9.7km)で香港最高峰の大帽山に到達する。

    そして舗装路が続くステージ9(6.3km)を経て、平坦なコースが多いステージ10(15.6km)を歩き通してj市街地にゴール、というコース設定だ。

    トレイルの起点となる北潭涌(パクタムチャン)は、西貢(サイクン)という町から路線バスが出ていて、簡単にアクセスできる。そこから先はトレイルの道標が1番から200番まで500mおきに設置されており、それが歩く目標になる。分かれ道にも標識があって整備状況は良好なので、ビギナーでも道に迷う心配はほとんどない。

    コースの途中には簡素な店が所々にあって、ジュースやお菓子などを買うことができる。初日の夜は海の家のような店で夕食をとったが、出てきたチャーハンは量が多く、しかも美味しくて、さすがは美食の香港と感心した。

    トレイルでは香港のハイカーとたびたび出会った。誰もがフレンドリーで、日本の山と同じく、すれ違うときは香港人もお互いにあいさつを交わす。ほとんどの人が「チョウサン!」と口にするので、僕もそれに倣って「チョウサン!」とあいさつを返した。

    広東語で「おはよう」を意味する言葉だが、午前も午後も関係なく、夕方でも香港の人々は山で「チョウサン」とあいさつをする。「チョウサン、チョウサン」と連呼する人もいる。音の響きがかわいいから、僕も積極的に「チョウサン、チョウサン」とあいさつを続けたが、そのあと広東語で僕に話しかけてくるハイカーもいた。

     何を言っているのかわからないので、自分を指さして「ヤップンヤン(日本人)」と伝えるのだが、納得した人は誰もが優しい笑顔になる。

     香港の人々が親日家だという事実を、トレイルでも実感した。

    国内外のロングトレイルを歩く旅をライフワークにしている僕は、テント泊にこだわってマクリホーストレイルの踏破に臨んだ。

    香港のトレイルには適度な場所にキャンプ場があって無料で利用できるのだ。トイレがある程度の質素なキャンプ場だが、日本の山を旅する感覚で気兼ねなくテントを張ることができた。

    でも毎日テントだったわけではない。3日目の夜は街に出て宿に泊まったが、利便性のよさに感動した。

    トレイルは要所にバス停がある。路線バスはすぐやってくるし、乗車時間わずか10分程度でバスは都会の雑踏に入り込んだ。ついさっきまで山を歩いていたのに、いきなりの都会。その落差が「ありえない」ほど痛快だ。東京で例えれば、高尾山を歩いた10分後に歌舞伎町へ到着したような感覚なのである。

    ホテルに泊まった僕は、シャワーを浴び、冷えたビールを飲み、美味しい料理をたっぷり食べて、清潔なベッドで眠りについた。

    香港のトレイルを歩くハイカーのほとんどが日帰りするのも当然だと思う。市街地から近くて交通の便がいいため(おまけにバス代も安い)ロングトレイルを歩く場合もホテルを拠点としたスルーハイクが成り立つ。

    軽い荷物でトレイルを歩き、夜は街でおいしい料理を食べて、快適なホテルに泊まる、というぜいたくなハイキングが香港なら可能なのだ。

    うれしいことに香港には個性的なトレイルやハイキングコースがいくつもある。

    今日は市内観光、明日は気軽にハイキング、といったフレキシブルな旅が香港では楽しめる。

    日本から遠くないし、おまけに格安航空会社も就航している香港。次は山歩きが得意ではない妻を連れて、アーバン・アウトドアの旅に出ようと思う。

    ※構成、撮影/シェルパ斉藤

    ☆アウトドアアクティビティが盛んな香港。自然豊かな西貢(サイクン)のジオパーク・ボートツアーのご案内はこちらから。https://www.bepal.net/trip/overseas/45711

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