連載【漕いで、釣って、食べて】カヤックフィッシング奮闘記Vol.45
何も知らないところからカヤックフィッシングを始めてそろそろ1年になるが、ふたつわかったことがある。まずひとつが「沖へ出たからといってバンバン釣れるわけではない」ということ。そもそも魚がそんなにいない。いる場所は根周りなど限られているが、いつもいるわけではないし、季節によって魚も違う。
そしてもうひとつは「いくら魚探に反応があっても釣れるとは限らない」ということ。魚探では群れがいるのは明らかなのだが、まったく釣れないことがよくあるのだ。これには驚きだったが、考えてみれば魚だって常に捕食しているわけではないから、当然といえば当然かもしれない。
そして、9月22日の釣行もまさにそんな感じだった。朝から反応のあるところにルアーを落とすのだが、まったく釣れない。手を変え品を変え、違うルアーを試してみるのだが、何も起こらない。魚探では真下にベイト(小魚)の群れと、それを狙っているであろう大物の影もちらほら写っているというのに。こういうときは、ひたすら「そのとき」が来るのを待つしかない。
そのまま時間だけが過ぎて行き、これで何もなければこの群れは見切って違うポイントに移動しようと最後にルアーを落としたときだった。ルアーが着底すると同時に、ググッと引っ張られる感覚があったかと思うと、そのまま物凄い力でギューンと走り出した。ロッドが大きくしなる。遂に「そのとき」が来た!
とにかく大物には違いない。リールが巻けないほどの引きからそれがわかる。ときおり、ゴンゴンと頭を振るような感覚が伝わってくる。ということは、鯛か。鯛だとしたら、恐らくこれまでで最大クラスだろう。隣で見守る沼野さんに「たぶん、鯛です!」と叫ぶ。
このとき使っていたのがブリなどにも耐えられる硬いロッドだったのだが、その硬いロッドが大きく弧を描く。そして、なかなかあがって来ない。ちょっと巻けたと思ったら、ゴンゴンゴンと深く潜られる。10分くらいは格闘しただろうか、ようやく浮いてくるのがわかった。が、まだ油断は出来ない。しかし、どれくらい大きな鯛だろう。