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時代の変化に揺れ動く、チベット牧畜民家族を描く映画『羊飼いと風船』

2021.01.21

私が書きました!
著述家・編集者・写真家
山本高樹
1969年岡山県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとザンスカールに長期滞在して取材を敢行。以来、この地方での取材をライフワークとしながら、世界各地を取材で飛び回る日々を送っている。著書に『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)など。

チベットの草原地帯で暮らす羊飼いのタルギェ(右)とドルカル(左)の夫婦。
©2019 Factory Gate Films. All Rights Reserved.

チベット人の映画監督、脚本家、作家として、これまでに世界各国の映画祭で数多くの賞を受賞している、ペマ・ツェテン監督。同監督の最新作で、2019年の東京フィルメックスで自身3度目となる最優秀作品賞を受賞した作品『羊飼いと風船』が、2021年1月22日(金)から、シネスイッチ銀座など全国各地の劇場で順次公開されます。ペマ・ツェテン監督にとって初めての、日本での劇場公開作品となります。

草原に羊たちを放ちながら、老父といたずら盛りの息子たちと過ごすタルギェ。
©2019 Factory Gate Films. All Rights Reserved.

物語の舞台は、中国・青海省の広大な草原地帯。腕利きの羊飼いのタルギェは、妻のドルカルと、幼い2人の息子、年老いた父とともに暮らしています。家族から離れ、町の寄宿学校で勉強中の長男ジャムヤン。過去の出来事から出家し尼僧となった、ドルカルの妹シャンチュ。ジャムヤンの学校の教師で作家でもあるタクブンジャ。それぞれの登場人物の関わり合いの中に潜む小さなひずみは、物語が進むにつれて次第に大きくなっていき、やがて、彼らはある決断を迫られることになります。

わけあって出家したシャンチュとともに実家に向かうジャムヤン。
©2019 Factory Gate Films. All Rights Reserved.

羊のあばら肉を豪快にむしりながら、団欒の時を過ごす家族。
©2019 Factory Gate Films. All Rights Reserved.

中国で暮らすチベット人の牧畜民は、過去に文化大革命などの激しい弾圧に晒されながらも、輪廻転生を信じるチベット仏教徒としての伝統を、頑なに守り続けてきました。その一方で、現代社会特有の物資や文化の流入によって、牧畜民のライフスタイルは急激な変化の波に晒され、存続の危機に瀕しています。また、少数民族である彼らは、1世帯で3人までしか子供を持つことを許されておらず、違反すれば高額な罰金を払わなければなりません。彼らを取り巻くこうした現実の数々が、この作品の横糸となって、物語を形作っていきます。

移りゆく時代の中で、チベットの牧畜民である彼らは、どんな生き方を選ぶのでしょうか。
©2019 Factory Gate Films. All Rights Reserved.

チベットの美しい草原で暮らす牧畜民たちの暮らしと信仰を、時に叙情的に、時にコミカルに、そして時にリアルに描き出した『羊飼いと風船』。青空を漂う風船を見上げながら、物語の登場人物たち、そして観客の私たちは、何を思い、何を選び取るのでしょうか。

『羊飼いと風船』
監督・脚本:ペマ・ツェテン
出演:ソナム・ワンモ、ジンバ、ヤクシンツォ
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:http://bitters.co.jp/hitsujikai/
2021年1月22日(金)より、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー!

同作品の原作を収録した短編集『風船 ペマ・ツェテン作品集』(ペマ・ツェテン著、大川謙作訳、春陽堂書店刊)も現在発売中です。

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