油断禁物!秋雨シーズン到来、意外と知らない?ヤマビルの生態を知ろう | BE-PAL

油断禁物!秋雨シーズン到来、意外と知らない?ヤマビルの生態を知ろう

2021.09.04


暑かった8月が終わると、涼しくなってきたこともあり、ついヒル対策の手が緩みがち。しかし、秋になると天候が優れない日が続く秋雨シーズンが始まります。ヒルの活動は4月から11月までといわれ、特にヒルの生息や活動に最も適した気象条件が揃う10月までは生息密度も高まります、特に、雨中や雨後は活動が活発なのです。

台風の到来や秋雨前線の停滞で雨の日が多くなりがち、ヒルってどんな生き物なのか理解した上で、本気のヒル対策を始めませんか。

ジョニーとの出会い

ヤマビル忌避剤 ヒル下がりのジョニー 50ml 定価880円(税込)。

神奈川県の丹沢山系で、筆者が仲間とトレイルランニングを楽しんでいる時でした。

「たくさんやられてるー」「俺もだ!」

ショートパンツにTシャツ姿の筆者たちの脛には血を吸って丸々と太ったヒルが付き、靴下が赤く滲むほど血がダラダラと垂れていたのです。

ヒルは人や動物の吐く息に含まれる二酸化炭素と体温を察知し、近づいてきます。虫除けスプレーでは天然成分100%で作られたものを愛用していますがヒル対策で環境に配慮した薬がないかと探していました。そんなとき化学薬品のディートを使用せず、自然界で生分解される素材で造られたヤマビル除けスプレー「ヒル下りのジョニー」というとても面白い商品名に惹かれて手に取ったのが、ジョニーと出会いです。

ヒルたちはどのように暮らし、なにを食べ、どこからやってくるのか?知っているようで知らなかったヤマビルの生態について 「ヒル下がりのジョニー」を開発・製造している株式会社エコトレードの西村代表に話を伺いました。

ヒルを殺す目的の薬は体にも悪い

中央がジョニーを開発した西村さん。

──ディートを使用しない製品を開発した、その理由は何だったのでしょうか?

たとえば、それまでヒルを殺すこと自体が目的のスプレーはあったのです。しかし私は化学薬品アレルギーで、子供の頃にディート入りの虫よけ薬で気分が悪くなり寝込んでしまった経験がありました。また渓流釣りを楽しんでいるので、自然に影響の少ないものを目指しました。虫を簡単に殺す成分は、やはり人の体にもよくないと考えたからです。ヒルに噛まれなければ良いわけですから、ヒルをやっつける薬ではなくヒルが近づいてこない薬を開発することにしたのです。

ヒルは木から落ちてこない

──ヒルの生態を調べると、木の上から落ちてくるから気をつけなさいという記事を見かけるのですが、あれは本当なのでしょうか?

 皆さんも山を歩くことがあると思いますが、上からポタポタ落ちてきたり木登りをしているヒルを見たことありますか?きっと無いと思うんですよ。おそらく首筋や背中にヒルがついたことのある経験者が「ヒルは木から落ちてくるから、上にも気をつけましょう」と教えてきたのでしょう。あれは休憩の時などに地面に置いたザックに付いたヒルが移動しただけなんです。

私たちは”子どもヤマビル研究会”というところで、樋口先生と子供達が一緒になって11年にも渡り様々な研究をしてきましたが「ヒルは木から落ちてきません!」と明確に言えます。検証ではブルーシートを地面に敷いてヒルが木の上から落ちてくるのを何時間も待ったり、時には木にヒルを上らせようとしましたが、皆んな下に移動してしまいました(笑)、あの小さな体で湿気のない木の上にわざわざ上ったり降りたりしないのです、湿ったところに好んで移動する性質がありますから、足元の湿った落ち葉や石の下、土の中に移動して暮らしています。

ヒルは水に乗って移動するサーファー?

ヤマヒル被害の70%は地表から。靴、靴下などにたっぷりスプレーする。

──常識だと思っていたことが実は間違っていたのですね。ではもう一つ「ヒルは鹿の脚に噛み付いて広い範囲に移動する」と聞きますが、それはどうなのですか?

以前から、鹿によりヒルの生息範囲が拡大するという俗説がありました。子どもヤマビル研究会では常識に囚われて判断されるのではなく、子供達と一緒に「シカ犯人説」という定説に押し込められて考えを制限されるのではなく自由な発想で研究を始めました。

それは貴重な体験でした。子供達からは「奈良公園でヒルの被害が多いなんて聞いたことないよ」「鹿の水飲み場の近くなのにヒルが見つからない」とシカ犯人説には素直な疑問を投げかけます。

私たちは、調査を重ねるうちに世界的な大発見をしたのです。実はヒルは水に流されて拡がるのです。なので、斜面の下側で水が流れる先で落ち葉が溜まっている平らなところに多く見つけることができました。キャンプ場なら近くに川などの動物の水場になりそうな場所があり、石灰岩質の斜面が近くにあるテントサイトなどはヒルに要注意です……。もちろん、ヒルは鹿や猪、猿などを吸血することで移動する説を全て否定するものではありませんが、斜面から平らなところに水に流されてきたヒルたちが落ち葉などで堰き止められることで留まり、そこで増殖を重ねます。そういったところでは動物も集まりやすいので、彼らにとっても非常に都合が良い場所になると感じました。

驚きのヒルの食事風景とは

吸血して丸々と太ったヤマヒルはこんなに大きくなる。

──研究を重ねるなかで、新しい発見は他にありましたか?

ヒルはカエルの血も吸うんですよ。東京農工大の森嶋さんと言う方の論文に、ヒルの体内に残った血のDNAを解析したところ、カエルのDNAが発見されたと発表されていました。子どもヤマビル研究会ではこれについても実証実験を実施、捕獲したカエルとヒルを瓶の中に入れて観察したところ、カエルを吸血する姿を確認できたのです。大昔はカエルとヒルが共存していたのでしょう。鹿が大量に増えるなかで、ヒルはカエルから鹿に浮気したと考えています。

ところでヒルがどうやって血を吸っているかご存知ですか?

──ヒルは蚊のように刺して血を吸っているのとは違うといういうイメージはありますが、どのように血を吸うのですか?

ヒルは二酸化炭素や体温を察知して近づいてきます。皮膚の柔らかくて血を吸いやすい場所を見つけます。足の裏の皮膚の厚いところより、くるぶしや脛などの皮膚の柔らかいところ狙って噛み切ります。鹿の血を吸う際も、蹄の間の皮膚の柔らかいところを狙って噛み切っているんですよ。

吸血の際には痛みをなくし、血液が固まるのを妨げる「ヒルジン」という物質を出すため、本人は吸血されていることにすら気づきません。そしてお尻の吸盤を踏ん張って、歯で噛み切って垂れてきた血を”ドックンドックン、チューチュー”と吸っているのです。この出血は1時間以上も続き、吸血後も傷痕からはタラタラと出血が続くのです。

また、秋のヒルは冬を越すために攻撃的になっていると感じています、外気温が10度C位になると越冬のため活動がみられなくなります。

ヤマビルもみもみ!?

──筆者はヒル拡大を防ぐためにも、山で見つけたら殺すように教わりました。これって正しい行動なのでしょうか?

一般的には見た目も気持ち悪いし、血を吸われたわけですし嫌われていますからね(笑)、被害を拡げないためにも殺してしまうのは仕方ないことです。ヒル下りのジョニーをひと吹きしてもらえれば、3分ほどで死んでしまいます。でも私たち研究会にとっては、研究対象として一生懸命に捕獲するぐらいですから、研究員の子供たちは見つけたら大喜びしてます。

ぜひヒルに興味を持ってください、実は手に取ることも簡単なんですよ。私たちは「ヤマビルもみもみ」と言っていますが、ヒルを指先で摘んでクルクルと回すようにしてみてください。小さくなって大人しくなるので噛まれて血を吸われることはありません。

知りたいという気持ちを大切に

──最後に、西村さんが想う「ヒルたちと人間の将来」とは。

ヤマビルは山の先住民です、多くの生き物がそうであるように絶妙なバランスの中で共存しています。人間に被害を与えているからといっても、別のところでは重要な役割を担っているかもしれません。だから嫌われ者のヒルも絶滅させてはいけません、共存する道を探ろうと言うのが“子どもヤマビル研究会”の基本スタンスでもあります。ヒルが全国に拡がったのには、林業が盛んだった頃、下草刈りや間伐がおこなわれることでヒルの住みにくい環境が保たれていました。それが木材の輸入自由化とともに日本の林業や害獣駆除などの山の保全が衰退したことにより、手入れが行き届かなくなりヒルが勢力を拡大。増加した鹿などがより遠くへヒルを運び、全国に拡まったと考えています。それが人や小動物に付いて、山から里まで広く移動したのでしょう。

ヒルの被害を拡げたものを元に戻すのにはどうしたらいいのか、その昔に僕の師匠の東大大学院で研究をされていた故・山中先生に質問をしたところ即答してくださいました。

「ヒルが拡がったのと同じ時間を掛けて、山を整備して元の環境に戻せば自然の数まで減ってくのです。日本人が山とちゃんと関わっていくことが大切なのです」

決して鹿を減らすことだけでもなく、薬でヒルを絶滅させることでもないと思います、猟をして適正な数を保つ、下草を刈るなど山の手入れを怠ってきたことをじっくりと時間を掛けて逆のことをしていくしかないんです。

だけど、ヒルはまだまだわからないことだらけ、子供たちの知りたいという気持ちと好奇心で出来た私たちの研究が少しでも役に立て多くの人に知ってもらうことで、ヒルと皆さんが心地よく生きてく状態になるのかなと思います。

私が書きました!
JSPO公認山岳コーチ
岸 正夫
アウトドアの楽しみを多くの人と共有したいと“山ごはんクラブ”を主宰。キャンプだけでなく低山ハイキングから高山縦走まであらゆる山行を楽しむ。トレイルランニングやウルトラランニング歴も長い。遊ばせてもらっているフィールドに恩返しする気持ちで、ハイキングコースの整備に取り組んでいる。
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