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第18回 里山WONDER通信
焚き火料理といえば「そりゃ肉でしょ、肉、肉!」という人が圧倒的。でも、薪を使うと野菜だっておいしいんです。
【今月の里山クイズ】
熱した石を布に包んだ昔のカイロの名は?

①おんじゃく
②くじゃく
③ヌンチャク
※答えはこの記事の一番下にあります。
まずは石選びから
軽トラックに薪窯を積み、街角に甘い香りを漂わせていた移動販売の石焼き芋売り。今はもう懐かしい光景になってしまったけれど、かつては冬の都会を象徴する風物詩だった。
人気の秘密は味の良さだ。薪の火力で鉄釜に入れた芋を焼くのだが、中には小石が詰めてある。石で芋を包み込むことで温度がむらなく回り、ふっくら穏やかに焼き上がるのだ。
今回のチャレンジは、この石焼き芋の原理をダッチオーブンに応用したら、どんな料理に仕上がるか? というもの。
サツマイモもおいしいはずだが、甘い味ばかりでは飽きるので、冬に味が増す根菜類を片っ端から石焼きにしてみた。
まずは石選び。昔の焼き芋業界では、神奈川県大磯海岸で採れた粒の小さな「大磯三分」という造園砂利が理想とされたそうだ。三分とは直径9㎜ほどの意味。大磯石はホームセンターになかったけれど、近いサイズの黒玉砂利を購入できた。
小石の役割は、熱伝導率が高く食材が焦げやすい鉄との直接接触を防ぐこと。まずはダッチオーブンの底面に5㎝ほど小石を敷いてから食材を並べる。生じたすき間を埋める感じで小石を入れたら、あとはダッチオーブンを焚き火にのせるだけ。
蓋の上に熾火を置いて、底面、側面、上面からまんべんなく熱が伝わるようにする。待つことおよそ1時間。石の間から少し顔を出している根菜の皮がきつね色に焼けていれば、どの食材も中まで火が通っている。
ニンジンはサツマイモより甘く、レンコンやサトイモはほっくりとして滋味いっぱい。ニンニクのバターのような柔らかさとコクにも驚かされる。クリはパリの街角で売っている焼き栗にも負けない香ばしさだ。
簡単で、手軽で、ビジュアルも味もすばらしい。なんといっても安上がりなのもありがたい。根菜料理の人気が肉料理を超える日は、近いかも。
石焼き芋風 五目根菜焼き

晩秋に収穫期を迎える根菜類は冬が旬。サツマイモ、ニンジン、サトイモ、ジャガイモ、ニンニク、クワイ、ラッカセイ、クリと、片っ端から石焼きに。
1 食材の泥を洗い落とす

泥がついている根菜類は水で洗う。掘っているのはお正月の煮物でおなじみのクワイ。

初めて見たかも。
根菜類はすべて皮付きのままで焼く。水分を閉じ込めた状態で熱が回り全体がふっくらとする。
2 ダッチオーブンに小石を敷く

買ったばかりの小石は水洗いし、細かい砂を落としておく。まずは底5㎝の厚さで敷き詰める。
3 食材を並べ小石に埋める

食材を並べ、すき間に小石を詰める。完全には小石に埋めず八分目に。表面の焦げ色で火の通りを確認する。

クリはそのまま焼くと爆裂するので皮に切れ目を。食べるとき皮を剝きやすくなる効果も。
4 薪の熱で全体を包む

火が落ち着いたら蓋をしたダッチオーブンをのせる。外周にも熱が回るよう熾火を配置。

蓋の上に熾火をのせる。小石の表面に顔を出している食材にきれいな焼き目がつく。
5 ときどき焼け具合を確認

小石の輻射熱効果で火はむらなく通るが、表面についた焼き色を見ると判断しやすい。大きな食材の場合は串を刺してみる。すっと中まで通れば食べごろだ。
6 焼き目が付けば完ぺき

ハンパない!
ダッチオーブンを開けた瞬間から歓声があがること間違いなし。切って皿に並べれば次のオベーションが。上から時計回りに、レンコン、ニンジン、ニンニクとサトイモ、クワイ、ジャガイモ、クリ、ラッカセイ、サツマイモ。塩やバジルソースなどお好みの味で。もちろん肉料理があればなお楽しい。
Complete!

日本海の野趣あふれる郷土料理「わっぱ煮」

石を使った料理といえば、忘れてはならないのが日本海地方の漁師料理「わっぱ煮」。木製の曲げわっぱ(食器)にぶつ切りの魚と野菜、味噌を入れて水を注ぎ、焚き火で暖を取るついでに入れておいた熱々の石を投入する。鍋を使わず石の蓄熱で沸騰させる、豪快で野性味あふれる汁料理だ。
【作り方】

❶石を火の中へ。

❷木の器の場合は焦げ防止にハクサイの芯を敷く。

❸食材、味噌を入れ

❹水を注いだら焼けた石を投入。

旧石器人も楽しんでいた? 石焼きステーキ

液体調理を可能にした土器の発明は、縄文時代。それより古い旧石器時代の加熱調理は、焼いた石で直に焼くか、食材を葉などで包んで蒸し焼きにするしかなかった。実際、旧石器遺跡からは焼けた石がたくさん出土している。試しに焚き火で焼いた大きめの石に肉をのせてみると、火の通りが絶妙でじつにうまい。旧石器人は石焼きステーキを食べていたとしか思えない。
【里山クイズの答え】
A
答えは①おんじゃく。温石と書く。江戸時代以前の保温方法の一種で、焼いた石を布切れにくるみ、懐や布団の足元に入れ体を温めた。アウトドアで使ってもかなり温かいが、石を加熱しすぎると布が焦げやすいので一瞬水に浸け温度を下げると良い。化繊だと溶けたり異臭が出るので布は木綿製を(着古したTシャツなど)。
【編集後記「石焼き料理ってファンタジー?!」】
byハラボー
山のてっぺんに生地を持っていって、太陽の熱で大きな大きなケーキを焼く――。子供のころ、そんなちょっぴり不思議なお料理絵本が大好きで、繰り返し読んでいました。今回つくったわっぱ汁は、焼いた石を器に入れて魚や肉にまで火を通しちゃう、まさに絵本の世界のようなレシピ! なんだか懐かしくてほっとするお味なのでした。
※構成/鹿熊 勤 撮影/藤田修平
(BE-PAL 2026年2月号より)







