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早くから「長く使う」を追求してきたブランド
アークテリクスは1989年、カナダ西部ブリティッシュコロンビア州・バンクーバーで誕生しました。太平洋沿岸に広がる「コーストマウンテン」と呼ばれる急峻な山岳地帯まで車でわずか1時間という、日常のなかにアウトドア・アクティビティが自然と溶け込む街で、クライミングギアを製造・販売するガレージブランド「ロックソリッド」としてスタートしています。
同ブランドが製品開発において大切にしているのが、「Authentic(山に根ざした必然性があるか)」「Functional(現場の課題を解決しているか)」「Beautiful(不要な要素を削ぎ落とした美しさか)」「Responsible(長寿命・修理性まで責任を持っているか)」という4つのデザイン原則です。そのデザイン思想を感じることができるのが、1998年発売のアルファ SV ジャケットにハンドポケットをあえて設けなかったエピソード。ハーネスを装着した際に使えなくなるポケットは不要と判断し、機能性のためにあえて汎用性を手放しています。
2019年に本格的に立ち上げられた修理・アフターケアサービス「ReBIRD™」は、その思想に共感するユーザーからの指示が年々高まっています。日本国内では新宿店に月間およそ250件、丸の内店で月100件前後、池袋店で50件前後の持ち込みがあるといいます。海外に目を向けるとオーストラリアの店舗では週80〜150件、北米の旗艦店では単店で年間数千件規模の修理依頼が寄せられているといい、後発の日本の店舗でも今後の成長が期待されています。
この修理によって蓄積されたデータは、どの部位が壊れやすく、どう補強すべきかという設計段階へのフィードバックとして活かされ、より良い製品づくりへと生かされています。

新フレームワーク「SYSTEM 0™」とは
2026年8月28日、アークテリクスは新たな取り組み「SYSTEM 0™(システム・ゼロ)」を発表しました。これは、原材料の調達から製品デザイン、販売、メンテナンス、そして製品寿命を迎えたあとの分解・リサイクルまでを一つの環(サーキュラーな設計思想)として捉え直す枠組みです。

これまでのアパレル産業は、素材を調達し、製品を作り、使い終えたら廃棄するという「リニアエコノミー(直線型経済)」が主流でした。SYSTEM 0™が目指すのは、そこからの脱却です。原材料の段階からリサイクル可能な素材を選択。耐久性とリペアのしやすさを設計に組み込み、使用中はメンテナンス方法の啓蒙や修理サービスを提供。そして寿命を迎えた製品は分解し、リサイクル可能な素材を再びものづくりのラインに戻す——この環を閉じることを最終的な目標としています。
具体的には、①環境配慮型素材の調達、②耐久性を高めるデザイン、③修理のしやすさの優先、④循環型行動をシンプルにすること、⑤ループの完結、という5つのステップで構成されています。アークテリクスCEOのスチュアート・ハセルデン氏は、「サーキュラリティを最優先としたアプローチであり、ビジネスを構築・拡大する方法を根本から変えるものだ」とコメント。最高クリエイティブ責任者のケイティ・ベッカー氏も、「最初のプロジェクトとして、あえてブランドで最も複雑な製品であるハードシェルを選んだ」と、その挑戦的な姿勢を語っています。
なお、アークテリクスは半年でおよそ300型ものモデルを展開するブランドですが、今回のSYSTEM 0™はまだそのスタート地点。今後、対象となる製品を順次拡大していく方針だといいます。
第一弾プロダクトは最高峰ハードシェル「Sperro SV」
SYSTEM 0™の思想を初めて具現化した製品が、2026年9月11日(金)に発売される「Sperro SV Jacket(スペーロ SV ジャケット)」です。マルチスポーツ対応の本格的な登山用ハードシェルで、素材にはGORE-TEX PROとePEメンブレンを採用。GORE-TEXブランドの性能基準である耐久性・防水性・防風性・透湿性をすべて満たしながら、表地・裏地のナイロンには、Aquafil社とのパートナーシップで開発された再生ナイロン糸「ECONYL®」を使用しています。
このジャケットが画期的なのは、修理不可能になった際の”分解のしやすさ”まで設計に織り込まれている点です。バンクーバーのノースショア捜索救助隊など山岳のプロによる徹底的なテストを通じて、摩擦やダメージを受けやすい部位を補強。なかでも故障が頻発していたジッパー部分には、ブランド初となる交換しやすいジッパースライダーが採用されました。ReBIRD™を通じた保証修理を経てもなお使用できなくなった製品は、ケミカルリサイクルによってGORE-TEXメンブレンとナイロン素材が分離され、ナイロンはAquafil社で新たなECONYL®糸として再生されます。
こうした循環性の高さは、スイスの検査機関TESTEX®とアークテリクスが共同開発した「TESTEX® Circularity」認証によっても裏付けられており、スペーロSVはブランドとして初めてこの厳格な認証を取得した製品となりました。耐久性、修理のしやすさ、素材の再利用性といった要素を科学的・透明性のあるアプローチで評価するもので、その結果は社内の予想を大きく上回ったといいます。




登山準備で気づいたものも即対応 “直して使う”を支える「ReBIRD™」
発表会では、実際にジャケットをハサミ一本で解体するデモンストレーションも披露されました。ジッパー部分も旧モデルと新モデルでは修理しやすくアップデートするなど、「直して使う」ことを前提にしたデザインにすることにより修理の痕跡が残りにくくなっています。





修理・分解のノウハウはReBIRD™を通じて着実に蓄積されており、ReBIRD™サービスカウンターは東京 丸の内と大阪心斎橋、洗濯機を設備のあるReBIRD™サービスセンターは新宿、池袋、札幌に展開。ブランドとしても、この取り組みを今後さらに強化していく考えを示しています。
機能性ウェアへのニーズの高まりとともに、アウトドアウェアを日常着に取り入れる流れも生まれています。厳しい環境条件にも対応できる高機能ウェアだからこそ、着慣れたもので最高のパフォーマンスを維持できるようメンテナンスし、自分の身を守る。アークテリクスの意思ある人とともに歩むための試みは、アウトドアウェアの世界にまた新たな扉を開こうとしています。
アークテリクス https://arcteryx.jp/




