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磯野貴理子の推し鳥DIARY 第13回 樹海の裏話
磯野貴理子
1985年、お笑いアイドルグループ「チャイルズ」の一員としてデビュー。解散後はタレント、俳優としてマルチに活動。軽やかなトークとユーモアあふれるキャラクターでお茶の間の人気者に。

問い合わせ先:モンベル・カスタマー・サービス TEL:06(6536)5740
先月号のビーパルの富士山大特集、とてもおもしろかったですね。「富士山には、こんな楽しみ方もあるのか」と感心しながら、じっくり読みました。やはり日本一の山、富士山。実際に登った人も、遠くから眺めた人も、それぞれ富士山にまつわる思い出があるのではないでしょうか。
私にとっての思い出は30年ほど前に、テレビ番組の企画で登頂したときのこと。ずいぶん昔の話ですが、いまでも驚くほど鮮明に覚えているんです。あいにくの雨で、合羽を着て息をきらしながらの登山でしたが、気持ちだけは意気揚々。富士山に登ってカップヌードルを食べるという長年の夢も、山小屋でしっかり叶えました。
やっとの思いで頂上にたどり着くと、いつの間にか雨は上がっていました。眼下には、どこまでも真っ白な雲海が広がり、そのあまりにも圧倒的な美しさに、思わず号泣しました。無事に登り切れた安堵と、目の前に広がる絶景への感動が一気に込み上げてきた、忘れられない瞬間でした。さて、話を戻しましょう。先月号のビーパルを読んでくださった皆さんならすでにご存じのとおり。わたくし、富士山特集の“大地を楽しむ樹海ハイキング”というテーマで登場させていただいたんですが、伝えきれなかったこぼれ話がまだいっぱいあるんですよ。
初めての樹海散策
スタッフの皆さんと一緒に青木ヶ原樹海に入りましたが、正直にいえば、ちょっと怖かったんです。あのいわくつきの樹海ですよ! 暗くて寒くて枯れ木ばかりの森じゃない? って。ところが実際に足を踏み入れてみたら、抱いていたイメージは一変。ちょうど新緑の季節で、瑞々しい緑に包まれた森は清々しくて、とても気持ちのいい森だったんです。
それに、ガイドの渡邊さんから聞いた樹海のお話も印象的でした。樹海にはいたるところに倒木が見られますが、それは溶岩の上にできた薄い土壌のため、樹々が地中深くまで根を張れないからだというんです。でも、倒木はただ朽ちて終わるわけじゃありません。倒れた樹をよく見ると、その幹から栄養を受けて、小さな木が芽吹いているのがわかります。この循環は“倒木更新”といって、倒木の多い樹海では、その様子が多く見られるんだそうです。朽ちてなお新しい命を育む。樹海は、そんな自然の循環や植物のたくましさを間近で感じられる場所でもありました。
渡らないジョウビタキ
期待どおり、たくさんの鳥たちにも出会えました。メジロやかわいいヤマガラ、センダイムシクイの水浴びなど。何よりうれしかったのは、本来、夏には見られないはずのジョウビタキに遭遇できたことです。
ジョウビタキは大陸で繁殖して、冬を越すために日本へやってくる渡り鳥。秋に日本へ渡来して、春になると再び大陸に帰るので、日本では冬鳥として知られています。それが初夏の富士山麓で、しかもつがいで見られたんです。
近年、渡らずに日本で繁殖するジョウビタキの個体がいる、という話は耳にしていました。実際に目の当たりにしてみて、噂は本当だったんだなあと。きっとカップルで「渡るのやめようか」って相談したんでしょうね。鳥たちもまた気候変動に少しずつ順応しているのかもしれません。もしかしたらジョウビタキは今後、日本に一年中いる留鳥になるのかもしれない。その移り変わりの途中に立ち会えたのだとしたら、それはとても感慨深い出来事でした。
山梨名物ほうとうの味
発見や驚きに満ちた樹海散策でしたが、この日一番びっくりしたのは意外や意外。帰りに食べたほうとうのおいしさです。
この連載を担当している編集の酒井さんは無類のほうとう好き。わざわざ都内から車で往復4時間かけて、休日にほうとうを食べるためだけに山梨に行くっていうじゃないですか。私はというと、ずいぶん昔に食べたきりで、あまり印象に残っていないものでした。
それで今回、富士山取材の帰り道に「疲れたし、食べていこうか」という流れになって、30年ぶりくらいに口にしたらもう、言葉に表わせないぐらいおいしかったの。歯ごたえのある手打ち麺に、かぼちゃの甘さや、きのこの旨みが混然一体となった味わい深さといったら。完食したあと、酒井さんとほうとうに心の中で謝りました。「侮ってたわ、ごめんなさい」って。
さすがに、ほうとうのためだけに山梨まで行くことはないですが、これから富士山周りを訪れるときは、間違いなくほうとうを食べてから帰るでしょうね。

青木ヶ原樹海の人気スポット「竜宮洞穴」。静謐な空気に包まれた洞穴から見上げる景色はとても神秘的。
ジョウビタキのカップルを発見!


写真の上がオスで下がメス。どちらにも翼に白い斑点があり、それを着物の紋に見立てて"紋付きどり"と呼ぶ地方もあるそう。ときどきお辞儀をしながら、尾を震わせるしぐさがかわいい小鳥です。

初夏に東南アジア方面から飛来するセンダイムシクイ。茂みを好み、滅多に姿を見せない小鳥を撮影できました。

ほうとうは優しい味噌仕立てで具沢山。この山梨の郷土料理にも心身ともに癒やされました。
【出演情報】CSフジテレビTWO「はやく起きた朝は…」(新作エピソード毎月第2日曜日 6:30〜7:00)が放映中。
フジテレビ「ホンマでっかTV」毎週水曜日21:00〜21:54 出演中。
撮影/磯野貴理子
※構成/安井洋子 竜宮洞穴撮影/三浦孝明
(BE-PAL 2026年9月号より)




