今回はBBQの起源や歴史とあわせてアメリカのなかでも特に人気の高いLow & Slow(低温でじっくり調理する)スタイルのテキサスBBQ の作り方をご紹介します。
BBQのルーツは16世紀
BBQの語源は、1492年新大陸・西インド諸島(現在のカリブ諸島)を発見した冒険家クリストファー・コロンブスが、そこに住んでいた先住民Taino(タイノ)がBrabacot(ブラバコット)という調理法で獲物を丸ごと焼く際に用いたBarabicu(バラビク)という、生木で組んだ台をスペイン語で丸焼きを意味する言葉Barbacoa(バルバコア)に転訛(てんか)したことに由来するといわれています。
その後16世紀から17世紀にかけてグアムならびにアメリカ大陸に渡ったスペイン人が、グアムの先住民CHamoru(チャモロ)や、ヌエバ・エスパーニャ北部(現在のテキサス州)などに暮らしていたネイティブアメリカンのApache(アパッチ)などに鹿や野豚などの獲物を丸焼きにする調理法を伝授。長い年月を経てBar=B、be/ba=B、que/cue=Qとよばれるようになったという説が有力です。
ほかにも、1800年代初頭、イギリスからアメリカ南西部に入植した人たちが1870年代になってテキサスに移住した際、ノースカロライナに暮らしていた先住民Roanoke(ロアノーク)から教わった野豚を丸焼きにして食べる方法を広めたという説など諸説あります。

グアムの先住民は太古からBBQをしていた⁉︎
しかし1565年、スペインがグアムを統治するよりはるか昔から、チャモロたちは海水から抽出した塩、ココナッツ、カラマンシー、マンゴーなどで作った調味液に漬け込んだHaggan(ハゲン/ウミガメ)やFanihi(ファニヒ/マリアナコウモリ)などをバナナの葉で覆(おお)い、地面深く掘った穴に木材(薪)や平らな石を何層にも重ねて作ったChåhan(チャハン)とよばれるカマドで、Tunu(トゥヌ/いぶし焼き)して食べていたという記録が残っています。ということは、BBQの起源はアメリカ・テキサス州ではなくグアムなのでしょうか。

BBQが出版物に登場したのは1661年
ちなみにBBQという言葉が活字として最初に登場したのは1661年、Edmund Hickeringill(エドマンド・ヒッカリングギル)が著書「Jamaica Viewed(ジャマイカの見方)」のなかで「Some are slain, And their Flesh forthwith Barbacu’d and eat(あるものは殺され、そしてその肉は直ぐバーベキューされて食べられる)」と、記した一節だといわれています。
また1707年にイギリスで出版された「THE BARBACUE FEAST OR, THE Three Pigs of Peckham, broil’d under an Apple-Tree(バーベキューの饗宴(きょうえん)または、りんごの木の下で焼かれたペッカムの3匹の豚)」には、著者Edward Ward(エドワード・ウォード)がグリーンバージニアペッパー(マメグンバイナズナ/わさびのような辛味がある野草)とマデラワインで下味をつけ、串に刺した3匹の豚をジャマイカの先住民Hausa(ハウサ)の調理法Babbake(ババケ)を用いて焼いたあと、肉を切り分けてふるまうまでの宴(うたげ)の詳細が記されています。
日本と欧米諸国のBBQ
ところで皆さんは、日本のBBQと欧米諸国のBBQの違いをご存知でしょうか?
1980年代のバブル経済期にレジャーとして普及し始め、その後のキャンプブームと連動し、アウトドア文化として定着した日本のBBQは、サシの入った薄切り肉など火の通りやすい食材を直火で軽くあぶり、ソースやタレ、塩などをつけて味わうGrilling(グリル/あぶり焼き)、いわゆる焼肉です。
これに対し欧米諸国のBBQは、狩猟で獲(え)た鹿など肉質の硬い食材をいかにおいしく食べるか、試行錯誤を繰り返した末、大きな塊肉や厚切り肉をカマドのなかでじっくりいぶしながら焼くBarbecuing(バーベキュー/いぶし焼き)にたどり着いたものだといわれています。
アメリカではPit(ピット/カマド)のなかの温度をコントロールしながら最適な状態に仕上げて肉を焼く、熟練したプロの職人をピットマスターと呼びます。彼らピットマスターのBBQに対する情熱とこだわりは半端なく強く、食材の選定からBBQ Rub(BBQラブ/スパイスミックス)の調合、薪の種類、火加減の調整など、すべてを入れるとなんと18時間以上の時間をかけ低温でじっくり肉を焼き上げます。
究極のスローフード・BBQを作ろう
では、テキサスBBQを作る手順をご紹介しましょう。
今回はグアム島内にあるBBQ専門店・Fire Slave BBQ(ファイヤースレイブBBQ)のオーナー兼ピットマスターのTomさんに取材したほか、ヒューストンに住む友人Garyさんから、秘伝のスパイスの調合を教えてもらいました。


【BBQ】
材料:
Brisket(ブリスケット/牛の肩バラ)、Sparerib(スペアリブ)など
※以下「肉」と表記
BBQラブ
イエローマスタード
その他の用意するもの:
薪(ポストオークなど)
ミートサーモ(肉用温度計)
厚手のアルミホイル
作り方:
1.肉表面の薄い脂肪分を残して余分な脂肪層をトリミングする

2. BBQラブがなじみやすくなるよう、肉の表面にイエローマスタードを塗る

3. BBQラブをたっぷり振りかけてすり込む

4. 3の肉を最低でも15〜30分(可能であれば冷蔵庫で一晩)寝かせて味をなじませる
5.薪を燃やし、スモーカーグリルの予熱温度を250〜275℉(約120〜135℃)に設定しておく

※テキサスBBQではスモークチップは使わない
6.5のスモーカーグリルの棚に肉を並べ、肉の内部温度が195〜205℉(約90〜96℃)に達するまで熱と煙で10〜18時間程度いぶし焼きにする

※内部温度が190℉(約88℃)に近づいてきたら、肉の底面をアルミホイルで覆い、頻繁に温度をチェックする
7.スモーカーグリルから取り出した肉全体をアルミホイルで包み、少なくとも2時間以上休ませる
8.好みの厚さにスライスして食べる。


BBQラブの調合は各人各様
ブリスケットなどの肉にすり込むBBQラブの調合は地域や家庭によって人それぞれ。コリアンダーやクミンなどカレー作りに使うスパイスを加えるレシピもあり、BBQの本場テキサスでは毎年、味付けを競うイベントやコンテストが行われます。

【Garyさんの秘伝スパイス】
ブラウンシュガー:1/2カップ
スモークパプリカパウダー;1/4カップ
チリパウダー、ガーリックパウダー、オニオンパウダー、カイエンペッパー、シナモン、タイム、塩、粗挽きこしょう:各大さじ1
※ 上記すべての材料を空き瓶などに入れ、シェイクして使う
正統なテキサスBBQは至高のおいしさ
低温でじっくりBBQされた肉は、濃厚でスモーキーな旨味がたっぷり閉じ込められたトロトロホロホロの食感です。是非一度、厚切り肉やかたまり肉をいぶして作る究極のスローフード、正統なテキサスBBQのジューシーなおいしさを味わってください。








