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オトナの贅沢カンパイ旅!Summit to Sea … to Beer!!

執筆担当。山歩きは下山後にビールで乾杯するためにあると思っている。まさにNo Beer,No Hiking! なのだ。この英語、合ってる??
編集 ハラボー(同・右)
今特集の編集担当で、夏休みは戸隠ハイキングを楽しんだ。実は編集部イチの食いしん坊だが、ビールはひとくちでほろ酔いに。
ハイキングは、自然の中を歩く行為そのものが爽快だ。しかし、その先になにかもうひとつ欲しくなるのが人の常……。
「お刺身、アジフライなんかもいいですよね〜。やっぱ海鮮!」
ハラボーは海の幸に舌鼓を打つ姿を想像しているらしい。
「歩いた後はビールが欠かせないでしょう! これ、ゼッタイ」
一方、スドーは燦然と煌めく琥珀色を脳裏に描いていた。
かくしてふたりの願望を叶えるべく向かったのは、静岡県伊豆の国市。ロープウェイで葛城山山頂を踏み、そこから海に向かって歩こうという計画だ。山頂から麓へ、ご馳走とビールを目指すダウンヒル。とはいえ、登りもあれば下りもある、歩き甲斐のある道のりなのだった。
起点は、今年7月にリニューアルしたばかりの「伊豆パノラマパーク」。山麓駅から山頂駅までは約7分でひとっ飛びだ。山頂エリアの碧テラスでは、富士山や駿河湾が一望できる。すぐに歩き始めてしまうのはもったいない、素晴らしい眺望だ。
見れば、抹茶色の暖簾が我々を手招きしていた。静岡抹茶や甘味をいただきながら、存分に景色を味わうことにする。雲間から少しだけ見える富士山を愛でながら、出発前のエネルギーチャージだ。静岡抹茶との相性抜群な、白玉ぜんざいソフトの濃厚な冷たさを堪能した。
葛城山の三角点は、源頼朝像の横にある。源氏が平治の乱で敗れ、頼朝が流されたのはこの近く。平家討伐の挙兵までのおよそ20年を過ごした場所でもある。頼朝もこの景色を見たかも? と古に思いを馳せる。
いよいよ海へと続く登山道へ。山頂エリアは多くの観光客で賑わっていたが、ハイキングコースに出たのは我々のみだ。静かな木漏れ日の中を歩いていく。
ふたつ目のピークの発端丈山を目指す前に、途中にある益山寺に立ち寄ることにする。弘法大師が開祖と伝わる創建1200年の益山寺の境内には、カエデ(静岡県下で最大)とイチョウの大きな木があるという。
葛城山からの道中は一部舗装路もあり、里山のような雰囲気がある。徒歩約1時間10分で益山寺分岐着、そこから寺までは約10分。まず現われるのは寺の本堂奥に位置する伊加麻志神社だ。神社の階段をさらに下っていくと、益山寺本堂に至る。ひっそりとした境内に踏み入ると、二本の巨木が見えてきた。
「わぁ! 大きいですね!」
見上げるハラボーの口はあんぐりと開いている。本当だねぇ、と答えるスドーの口もあんぐり。カエデとイチョウの木は本堂の前に並んで佇んでいる。イチョウの立派な枝ぶりと、カエデの動き出しそうなコブにしばし無言。写真に収まらないスケールは是非とも現地で見てほしい!
益山寺からルートに復帰したら、次は発端丈山へ。約30分で山頂に到着! 再び駿河湾を望み、海が近くなってきていることを実感する。発端丈山から先は、海まで急な下り道が続く。つづら折れの細い道や不安定な路面に、ハラボーは苦戦気味だ。休憩を取りながらだが、ここまで2時間近く歩いているので疲労もある。安全第一で進み、約1時間で麓の集落に着いた。
「海だ! 海に出たぞ〜〜〜!」
歓喜。ようやく海に出た。ここから先はご褒美のみ。思いの外長かった下りでかなりの空腹だ。バスで沼津港近くまで移動する。
沼津魚健 海ごはん食堂で、念願の地魚料理にありついた。「沼津港 地魚海鮮海ごはん」は、途中まで食べたら熱い出汁と薬味をかけ、この地域に伝わる漁師飯「まご茶漬け」に味変できる。
「あ〜これこれ! 沁みる~」
満面の笑みで美味しそうに食べるハラボー。新鮮な刺身はもちろんのこと、やさしい出汁が疲れた体に何よりよく効いた。
〆は沼津フィッシュマーケットタップルームへ。数あるタップの中から「沼津ラガー」をオーダー。斜陽に照らされた沼津港を前に、待ち望んだ乾杯。ほろ苦い旨みが全身を駆け巡っていく。これこれ、これですよ~。極上の一杯で締めくくり、サミットトゥシーここに完結!
COURSE TIME 3時間30分
葛城山 452m ~ 発端丈山 410m

伊豆半島の付け根辺りに位置する葛城山から発端丈山を経て駿河湾に下りるコース。葛城山山頂までロープウェイを使用し、山頂から海を目指す。細かなアップダウンが続く、歩き応えのある道。徐々に海が近づくのが実感できる。
Summit to Seaの心得
一、十分な補給食と水を持つべし!
二、分岐では必ず方角を確かめるべし!
三、コース後半の悪路は集中すべし!
7分の空中散歩で山頂へ!

国道沿いの山麓から一気に標高452mの山頂へGO。眺めを楽しんでいるとあっという間だ。

「今日は登らなくていいんですよねぇ」。景色を眺め、嬉々とするハラボー。さ〜て、それはどうかなぁ〜。
伊豆パノラマパーク
山麓から山頂の碧テラスまでは約7分の遊覧散歩。山頂エリアには周囲を360度見渡せる展望台や喫茶店、足湯、アスレチック、神社などを有した広い公園がある。ゆっくり散策すると20〜30分ほど。
住所:静岡県伊豆の国市長岡260-1
電話:055-948-1525
営業:夏季(2/16〜10/15)9:00〜17:30 ※上り最終17:00
冬季(10/16〜2/15)9:00〜17:00 ※上り最終16:30
料金:ロープウェイ片道 大人(中学生以上)¥2,500、子供(小学生)¥1,400、 幼児(3才以上)¥700
10:00 到着したらまずは一服! 青空喫茶でスタート

山頂の「かつらぎ茶寮」で甘味をいただき、駿河湾を見下ろしてひと息つく。青空に抹茶のライトグリーンが映える。
白玉ぜんざいソフト ¥800

静岡抹茶 ¥500

抹茶わらびもち ¥700

かつらぎ茶寮
住所:山頂・碧テラス内
営業:9:00〜17:30(冬季は〜17:00)
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真の山頂である三角点は、山頂エリア中央辺りの源頼朝公ブロンズ像の横にひっそりとあった。「ここはしっかり踏んでおかないと!」三角点を確認する我々。

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山頂はフェンスで区切られた有料エリア。登山道から出入りする際は、インターホンで知らせて開錠してもらう※。

もらいます!
10:30 海と乾杯を目指して出立! 木漏れ日の回廊を軽やかに

気持ちいい
扉から登山道へ出たら、緩やかな道を下っていく。しばらくは緑に囲まれたハイキングコースとなる。
※登山道から徒歩で山頂エリアに入る場合は、ロープウェイ片道料金と同額の施設利用料が必要になる。
12:00 イチョウとカエデのはざま。巨木を見上げてなに思う

樹齢900年と伝わるカエデと、イチョウの立派な巨木が並んでいる。進路からはずれる寄り道だが、一見の価値あり!

歩き始めてすぐ現われる「龍神岩」。葛城山が火山岩頸だと実感させられる。迫力に思わず合掌。

さっき乗ったロープウェイを、今度は見上げる形に。「コンニチハ〜」と、乗客に手を振ってみる。
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進路を確認!
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益山寺は808年に弘法大師が堂宇を建立。真言宗で高野山の直末寺と伝わる。
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益山寺を後にして発端丈山へ。山頂目前の生かさず殺さずの勾配をじわじわ登る。「あと少しで山頂だ!」
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「着いた〜〜!」発端丈山山頂到着。ようやくひらけた青空の下、深呼吸して腕を伸ばす。海風が心地よい。
13:00 眺望のいい山頂でひと休み。海がだんだん近づいてきた

標高410mの発端丈山山頂。雲間に富士山山頂がプカリ。駿河湾の海岸線を望み、起点の葛城山山頂も見える。

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海に向けてラストスパート! 時折、写真のように木々の間から海が見える。特徴的な三角形の小さな島は淡島だ。
終盤の下りは集中して!!

発端丈山から先は、道幅が狭く勾配もきつい。さらに足場が悪いところが連続する。終盤で疲れも出てくるころなので、気を抜かないように!

「長浜三津」の分岐を長浜方面へ。海はもう目と鼻の先。集落を抜けて歩いていく。

海に到着〜! バス停「長浜」から沼津駅行きに乗車。沼津港近くのバス停「槙島」で下車。港までは徒歩約20分。
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沼津港でお土産を物色したら、遅めのランチ。地元の新鮮な海の幸をたっぷりいただく。
キンメの干物

沼津港 地魚
海鮮海ごはん
¥1,960

地魚刺身定食
¥2,180

沼津魚健
海ごはん食堂
住所:静岡県沼津市千本港町124
電話:055-939-8755
営業:平日 11:00~17:00(L.O. 16:30)、土日祝 10:00~17:00(L.O. 16:30)
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17:00 港を見ながら念願の乾杯! 輝く泡と琥珀色が美しい

今年25周年を迎えた沼津発のベアードビールの直営店。地元民に愛される地ビールのお店だ。常時15種類のビールが楽しめる。

沼津ラガー500㎖
¥1,200



沼津フィッシュマーケット
タップルーム
住所:静岡県沼津市千本港町19-4 2F
電話:055-963-2628
営業:月・木・金 17:00~23:00、土・日・祝日 12:00~23:00
定休日:火・水
※構成/須藤ナオミ 撮影/岡野朋之
(BE-PAL 2025年10月号より)