
ヤマユリの英名はLilium auratum
ユリ科の多年草。日本の代表的なユリで山野に自生。高さ約1.5m。葉は互生。花は黄色い筋が入った白色で斑点が多く、漏斗状で、強い香りを放つ。花期は7月ころ。東北、関東、東海地方に多く分布する。
大型の花が、わずかな風にも揺れ動くことから、「ユリ」の名になったといわれるが……
ヤマユリは、日本特産のユリだ。近畿地方以北の本州の山の中や明るい高原などに育つ。
花期は6~8月ころで、太い茎の頂部に15~20cmほどの大型の花を数個付けるが、ときには50個もの花を付けるおばけユリもある。
花には強い芳香があり、基部には乳頭状の突起がある。6個のオシベの花粉は赤褐色で、衣服などに付くと、ねばりがあってなかなか取れない。
生花店の店頭のユリは、オシベを取り去ったものが多く、なんとなく間の抜けた感じがする。
ヤマユリは、地方によってはユリ、ヤマユンリ、ボンノハナ、ハナユリ、コウライ……などともよばれる。
ヤマユリの球根(鱗茎)は年々大きくなり、花の数もふえていく。鱗茎は昔から「ユリ根」とよばれ、茶碗蒸しや金団などにして食べられてきたが、近年はヤマユリが減ったためスカシユリの鱗茎などが食用に用いられている。
漢方では鱗茎の生薬名を「百合」とよび、滋養強壮、利尿、咳止め、去痰、止血、排膿のほか、腫れ物、切り傷や火傷、なんと肺結核や神経痛、リウマチ、などにも効果があるといわれ、漢方薬として利用されてきた。
大きな花を付けるヤマユリだが、タネはとても小さくて、めったに発芽しない。個体数の少ないヤマユリは、食べるためにではなく、観賞用に育てたい。いまではカサブランカなどのさまざまな園芸種が、切り花としても店頭を賑わせている。

大型の花をつけた森の中のヤマユリ。

花粉は衣服に付くと落ちにくい。

花粉を取り除いた店頭のユリ。

ユリ根とよばれる球根(鱗茎)。
おくやまひさし プロフィール
画家・写真家・ナチュラリスト。
1937年、秋田県横手市生まれ。自然や植物に親しむ幼少期を過ごす。写真技術を独学で学んだのち、日本各地で撮影や自然の観察を開始。以降、イラストレーター、写真家として図鑑や写真集、書籍を数多く出版。
(BE-PAL 2025年9月号より)