
日髙良実さんの外飲みが進む!ガッツリイタリアンを再現しよう

日髙良実さん
東京・南青山「リストランテ アクアパッツァ」のオーナーシェフ。日本のイタリアンブームを牽引したひとり。著書多数。
「基本、私の料理はどれも酒飲みレシピなんですよ」
多忙で、なかなかキャンプ場までは足を運べないけれど、「外飲みが好き」な巨匠・日髙良実シェフ。自宅の駐車場でご近所さんとバーベキューをする休日が楽しみなのだとか。そんなシェフがキャンプでパーティーするならと妄想したのは、外飲みが進むがっつりイタリアンだ。
まずはイカが主役のパスタ、ではなく、なんと焼きそば。もちろん味はイタリアンだが、関西出身のシェフらしい一品。「麺をゆでる必要がないから野外向き」。肝とアンチョビを効かせた、猛烈に酒を欲する味だ。
近ごろスーパーで見かける手頃価格かつビッグサイズのアルゼンチン赤海老は、大胆な調理法に出た。海老が溺れてしまいそうな量の塩で旨みを閉じ込めながら焼くのだ。ビールに最高。
「せっかくだから道の駅で新鮮な野菜を入手して活用してくださいね」と、どれも緑が映える料理に。さらにすべてが「飲みながらつくれるシンプルレシピです」。その言葉に偽りなし!
プリッとイカが踊るイタリアンイカ焼きそば
イカが主役のおつまみパスタならぬ焼きそば。肝とアンチョビ、ダブルの旨みが白ワインを誘う。フォークでくるっと巻いてぜひ!

●材料(3~4人分)
焼きそば麺…2袋
イカ※…2杯
タマネギ(薄切り)…1/2個
フルーツトマト(4等分)…2個
ルッコラ(ざく切り)…適量
セルバチコ(ざく切り)…適量
白ワイン…適量
アンチョビ…2切れ
塩、黒コショウ…各適量
オリーブオイル…適量
※イカは足を抜いて肝、軟骨を取り、水で洗う。足は肝を切りはずし、くちばしを取る。肝は使うので捨てないこと。
Point
焼きそば麺なら、ゆでる手間なし。味つけ次第で、気軽に素早く、パスタ風の一品に。

●作り⽅

❶イカの胴体は幅1㎝の輪切りにし、足は縦に2等分に切る。肝は適当な大きさに切る。

❷フライパンにオリーブオイルを強火で熱し、イカの胴体と足を炒める。

❸軽く火が通ったら塩を加えて炒め、8割方火が通ったら、いったん取り出す。

❹③のフライパンにオリーブオイル少量をひき、タマネギを炒める。しんなりしたら、麺を投入。

❺麺をほぐすために白ワインをドボドボとたっぷり回しかけて炒める。

❻肝を加える。アンチョビは生臭みをとるために鍋底に落として軽く熱してから炒め合わせる。

❼イカを戻し入れ、塩、黒コショウ、白ワインを回し入れる。

❽トマトを加え、さっと炒め合わせる。火を止め、ルッコラ、セルバチコをのせて完成。

イタリアンに欠かせないルッコラとセルバチコ。完成した焼きそばにどっさりのせれば、フレッシュなサラダ感覚も加わって美味しさ倍増!
たっぷりのハーブ塩が香るアルゼンチン赤海老の塩焼き
シェフがシチリアで味わった塩焼きをアレンジ。殻付きのままたっぷりのハーブ塩を絡めながら焼き旨みを閉じ込める。高級海老のスカンピにも負けない味!

●材料(3~4人分)
アルゼンチン赤海老…6~8尾
塩…100g
オレガノ(乾燥)…5g
A
オレガノ(生)…10g
ミント(生)…5g
●作り⽅

❶海老はヒゲ、尾のとがった部分をハサミで切り、背中の中央に竹串を刺して背ワタを取る。

❷フライパンに塩、ドライオレガノを入れ、弱火にかける。ヘラで混ぜながら加熱する。

❸塩を平らにならし、海老を並べる。ひと呼吸おいて蓋をして、蒸し焼きにする。

❹2回ほど上下を返しながら焼き、均等に火を通す。

❺Aをのせ、蓋をして、軽く加熱して香りをまとわせる。のせるハーブは好みのものでOK。
Point

ドライオレガノとたっぷりの塩を混ぜ合わせたものを用意。野外で豪快に塩焼きを楽しもう!
トロッとした煮汁も絶品!イサキのアクアパッツァ
シンプルで最高に美味い、日髙シェフの十八番。コツは強火でぐつぐつ沸かしながら煮汁を乳化させること。素材の旨み満載な煮汁も極上。最後の一滴まで酒の肴に。

●材料(3〜4人分)
丸イサキ(下処理する)…1尾
あさり(砂抜きをする)…10個
チェリートマト(横半分に切る)…5個
ブロッコリー(ひと口大に切る)…1/4個
塩…適量
オリーブオイル…40~50㎖
Point

丸一尾で作れば絵になるし、頭から出汁も出て旨み倍増。鯛でもアジでも、キャンプ場近くでゲットした鮎でもOK。
●作り⽅

❶下処理済みのイサキは、キッチンバサミで尾ビレ、背ビレ、胸ビレを切り取る。

❷フライパンに丸ごと入らなければ魚を斜め半分に切る。魚の重さの1%の塩を両面、腹の中にもふり、10分ほど置く。

❸フライパンを強火で熱し、底全面に広がる量のオリーブオイル(分量外)をひき、魚を置く。

❹両面の皮を香ばしく、身に2割程度火が通るまで焼いて、魚の旨みを閉じ込める。

❺魚の厚みの半分まで水を加える。沸いたら、お玉で煮汁をかけながら煮る。途中で、身の厚い頭のほうは上下を返す。

❻8割方火が通ったら、ブロッコリー、あさりを加えて、さらに煮汁をかけながら煮る。

❼あさりの口が開いてきたら、トマトを加えて軽く煮る。

❽仕上げにオリーブオイルを加え、ぐつぐつと煮る。煮汁が乳化してきたら完成。

定番レシピで使う野菜はトマトのみだが、出かけ先の道の駅で見つけた旬の野菜をプラスするのも楽しい。ブロッコリーもよく合う。
すり立ての爽快な香りが炸裂!ジェノベーゼのスパゲッティ
リグーリア州の郷土料理、ジャガイモとインゲン入りのジェノベーゼだ。すり鉢でバジルをすり潰してすり鉢ごとテーブルへ。清々しい香りが風に舞う。

●材料(3〜4人分)
〈ジェノベーゼソースの材料〉
バジル(葉)…50g
松の実…大さじ1
ニンニク…1/2片
塩…適量
オリーブオイル…適量
〈スパゲッティの材料〉
スパゲッティ…160g
ジャガイモ(皮をむきひと口大)…1個
インゲン(長さ3㎝に切る)…6本
パルミジャーノチーズ(すりおろし)…適量
塩…適量
オリーブオイル…適量
Point

野外でバジルや胡麻などをたっぷりするなら、すり鉢が活躍。鉢の中で素材を和えればボウル代わりになるし、器にもなる。
●作り⽅①ジェノベーゼソース

❶すり鉢ににんにく、松の実を入れ、すり潰す。

❷適当な大きさに切ったバジルを少しずつ加え、根気よくすり潰す。

❸細かくなってきたらオリーブオイル大さじ1強を少しつずつ加えながらする。塩2つまみを加える。

ソースの完成!
すりたての香りは最高だ。全量使ってソースまみれの麺にするもよし、少なめでもOK。
●作り⽅②スパゲッティ

❶鍋にたっぷりの湯を沸かし、湯量の1%の塩を加える。ジャガイモを加え、3分間ゆでる

❷①の鍋にインゲン、スパゲッティを投入し、袋の表示時間どおりにゆでる。野菜と麺を一緒にゆでる戦法。

❸ゆであげた麺と野菜の湯を切り、全部をジェノベーゼソースの入ったすり鉢に投入。

❹たっぷりのパルミジャーノチーズ、オリーブオイル適量を加え、ジャガイモを少し潰しながら和える。

夏が旬のバジルは道の駅で大人買いしたいハーブのひとつ。ジェノベーゼをたっぷり作って、トーストに塗るなどしても。
※構成/安井洋子 撮影/森本真哉
(BE-PAL 2025年8月号より)