
SNSでもよく見かけるこのスタイルは、実際に体験すると想像以上に奥深く、私たち夫婦がキャンピングカーでヨーロッパを旅する中で最もハマった楽しみ方でもあります。
今回は、そんな私たちのリアルな体験をもとに、ワイルドキャンピングの魅力や注意点、そしてヨーロッパで「できる国」「できない国」を実例とともにご紹介します。自由な旅に憧れる人や、自然の中で特別な時間を過ごしてみたい方にとって、一味違った楽しみ方になるかもしれません。
多くの人が虜になるワイルドキャンプとは?

Wild Camping(ワイルドキャンピング)もしくは野営キャンプとは、キャンプ場やRVパークといったトイレや水場などの設備が整った場所ではなく、自然の中や公共のスペースで(山、川辺、湖畔、海岸、森の中、道路脇など)自由に車中泊をするスタイルです。
何と言っても自然との一体感と、どこでも泊まれる自由さが最大の魅力。まるで”自分だけの絶景ホテル”に泊まっているかのような、特別な体験が味わえます。海外でも大人気のスタイルで、私たちが旅をしているヨーロッパでは、特に春先から秋にかけて多くの人々がこのアウトドアライフを楽しんでいます。

もちろんテントを使う人もいますが、キャンピングカーや車中泊仕様の車であれば、トイレや電気、水といった設備を車内に備えているため、何もない自然の中でも自給自足のような旅が可能です。
誰にも邪魔されず、絶景のロケーションでゆったり過ごす。外での食事や焚き火を楽しみ、夜は満天の星空を見上げながら眠りにつき、朝は静かな日の出で目覚める——そんな、都会では得られない心のリセット時間が流れます。
今までの最高すぎるワイルドキャンプ体験

私たち夫婦はこれまで約2年間、キャンピングカーでヨーロッパを旅しながら、さまざまな場所でワイルドキャンプをしてきました。料金もかからず、好きな時間に好きな場所で泊まれるのが最大の魅力。騒々しい都会を離れ、ひとけも人工物もない自然の奥地に入り込み、静寂の中で過ごす時間は、何よりも贅沢に感じます。
特にお気に入りなのが、山のてっぺんでの絶景パノラマビューを眺めたり、海辺で波の音を聞きながら目覚めるひとときです。地図を見ながら泊まれそうな場所を探したり、思いがけない出会いや発見があったりと、冒険心が常にくすぐられます。

たとえば、のどかな山奥でくつろいでいたときのこと。どこからともなくカランカランという鈴の音が聞こえ、外を覗くと、羊の群れが車のすぐ横をのんびりと通り過ぎていました。中には可愛い子羊もいて、その鳴き声や足音を聞きながら、ゆっくりと時間が流れていくのを感じ、「ああ、これが旅の醍醐味だな」としみじみ実感しました。
こうした、普通の観光やホテル宿泊では味わえない、一味違う特別な体験こそが、ワイルドキャンピングの心惹かれるポイントでもあります。
ワイルドキャンピングができる国・できない国(ヨーロッパ編)

ワイルドキャンプは最高の車中泊スタイルですが、どこでも自由にできるわけではありません。各国のルールをしっかり守った上で行う必要があります。
できる(比較的寛容)な国
- ノルウェー
- スウェーデン
- フィンランド
北欧では「Allemannsretten(アレマンスレッテン)」という文化が根付いており、「誰もが自由に自然を探索し楽しむ権利がある」という意味の自然享受権が存在します。いくつかのルールを守ればどこでも自由に自然の中を散策し、野外キャンプ(ワイルドキャンプ)をしても可能なのです。そのため、これらの国では多くの人々がテントやキャンピングカーなどでアウトドアを満喫しています。
特にノルウェーは、息をのむような絶景の自然スポットが豊富にあり、私たちがこれまで訪れてきた国の中でも最高レベルのアウトドアライフを堪能できました。
グレーゾーン・制限がある国
- イタリア
- スペイン
- フランス
- ドイツ
地域によって規制差があり、自然公園や海岸沿いエリアで禁止されていることが多いです。実際には、「車中泊禁止」などの看板や標識がない場所であれば、一晩だけの休憩目的での駐車・宿泊は黙認されているケースも多く、いわゆる“グレーゾーン”が存在します。
実際、私たちもスペインやイタリアを旅する中で、多くの場所でワイルドキャンプをしてきましたが、特に問題になることはありませんでした。時には、現地の警察官から「ここは問題ない」と言われた経験もあります。ただし、これはあくまで私たちの体験であり、必ずしもすべての場所で許されているわけではないということは、頭に入れておいてください。
禁止されている国/厳しい国
- オランダ
- スイス
- オーストリア
- スロベニア
- クロアチア
- ポルトガル など
これらの国ではキャンプ場やRVパーク、指定エリア以外での車中泊が原則として禁止されています。地域によっては厳しい取り締まりもあり、見つかれば高額の罰金が科される可能性もあるため、十分な注意が必要です。
ポルトガルは2021年以降に法律が改正され、自然保護区や海沿いエリアでは取り締まりが強化されました。現在でも一部の地域では、ルールに反して車中泊をしている車を見かけることがありますが、違反と判断された場合は最高で600ユーロの罰金が科される可能性があります。
やるなら知っておきたい注意点&マナー

- ゴミ・排水・トイレの管理:ゴミは必ず持ち帰る。「来たときより美しく」を意識し、マナーをしっかり守って自然を綺麗に保ちましょう!
- 自然災害・地形・天候リスク:自然に囲まれた場所に泊まる際には、地形や天候によるリスクも頭に入れておきましょう。例えば、山では急な土砂崩れや落石、川沿いでは大雨による増水や浸水、海辺では潮位の変化や高波などがあるため、車中泊スポットは慎重に選ぶ必要があります。天気予報をこまめにチェックし、危険を感じたらすぐに避難するようにしましょう。
- バーベキューや焚き火:焚き火やバーベキューはキャンプの醍醐味ですが、禁止されている地域も多いです。焚き火OKかしっかり確認してから火の取り扱いをし、後始末もしっかり行いましょう。
- 野生動物に注意 :自然の中は彼らの生息地で、クマやイノシシ、シカ、サル、ヘビなど様々な野生動物に遭遇する可能性があり、危険でもあるので要注意!生ゴミや調理器具は外に放置せず、使い終わったらすぐに片付けましょう。調理時の匂いが動物を寄せ付けてしまう可能性もあるので、できれば車内で調理するのも効果的。
- 治安も忘れずに:人気のない場所は雰囲気が魅力でも、不審者や動物など何が出没するかわかりません。トラブル時の連絡が遅れる可能性があるので、特に初心者はソロを避け、他の車中泊者がいるスポットを選ぶのがおすすめ。また、山奥では電波が届かないこともあるため、事前に通信環境を確認しておきましょう。
- 車中泊可能か事前に確認:地域によっては、私有地だったり、国立公園、自然保護区域での車中泊が禁止されていることがあります。ヨーロッパでは「Park4Night」、北米や南米では「iOverlander」などのアプリを使うと、合法的で快適なスポット探しに便利です。場所によっては、近隣の住民や施設に声をかけておくと、トラブル防止になるうえ歓迎されることもあります。
ワイルドキャンピングは、自然の中で「不便な環境」さえも楽しみに変えられる、自由で開放感あふれる旅のスタイルです。誰にも縛られず、自分だけの景色に出会える一方で、その自由の裏には責任もあることを忘れてはいけません。自然を守り、周囲への配慮を忘れず、ルールとマナーをしっかり守ることが、本当の意味での“自由な旅”につながります。安全で気持ちのいい車中泊ライフを楽しんでください。