
(出典)photoAC
アゲハ蝶の成虫の代表的な種類

日本に生息するアゲハ蝶には、いくつか種類があります。春から秋にかけて見られる代表的なアゲハ蝶として、ナミアゲハとキアゲハの特徴を解説します。
ナミアゲハ

ナミアゲハは、日本で最もよく見られるアゲハ蝶の一種です。黒と黄色の美しい翅(はね)が特徴で、庭先や公園でも目にできます。
成虫は、主に花の蜜を吸って生活しており、前翅のつけ根にあるはっきりとしたしま模様が特徴です。
幼虫はミカンや柚子(ゆず)などのかんきつ類を好み、小さい頃は白黒模様ですが、大きくなると緑に目玉模様のある姿になります。この目玉模様は、ヘビに似せているという説もあり、天敵から身を守るためのダミーです。
キアゲハ

キアゲハの成虫は、ナミアゲハとよく似ていますが、模様に少し違いがあります。ナミアゲハと違い、前翅のつけ根にしま模様は薄く、薄い黒模様で全体的に黄色が濃いのが見分け方です。
幼虫の姿は、ナミアゲハとは大きく異なります。大きくなったキアゲハの幼虫は、緑地に黒のしまとオレンジの模様が入っているため見分けやすいでしょう。
また、幼虫はニンジンやセリ科の植物を好み、家庭菜園で見かけることもあります。好む食べ物が異なるため、生息環境でも判別できます。
アゲハ蝶の飼育方法
撮影/安田健示
アゲハ蝶を自宅で育てるには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。飼育環境や餌の与え方を中心に、詳しく見ていきましょう。
飼育環境の作り方
成虫の飼育環境は、網でできた飼育ネットに入れておくのがおすすめです。小さい飼育ケースに入れると、飛んだときに翅がぶつかってしまうので、蝶が飛び回れる程度の大きさが望ましいといえます。
また、部屋が明るいと光のある方向に向かって活発に飛ぶため、翅が傷ついたり疲れたりする恐れがあります。飼育ネットにはタオルをかけるなどして、薄暗い環境をつくってあげましょう。
室温は高すぎると弱ってしまうので、15~20℃くらいになるよう調節するのが長生きさせるコツです。
餌の与え方
アゲハ蝶の成虫の餌は、花の蜜やそれを模したものです。作り方は簡単で、砂糖やはちみつ、シロップなどを水で溶かし、ビンや小皿に入れて与えます。
ただし、あまり濃度が高く粘り気があると、蝶の体の中で詰まってしまうので注意が必要です。スポーツドリンクを、そのまま与える方法もあります。
脱脂綿に染み込ませて与えると、蝶が吸いやすくなるでしょう。なかなか餌を吸わないときは、翅を持ってピンセット・つまようじで優しく蝶の口を伸ばし、砂糖水などにつけます。飲み始めたら、手を放しましょう。
食事の時間は1~2分と短く、餌を与える頻度は1日1回で問題ありません。
成虫の寿命は約2週間~1カ月
アゲハ蝶の成虫の寿命は、種類や個体差によりますが、だいたい2週間〜1カ月程度です。卵から孵化して寿命を迎えるまでの期間は約2カ月なので、小さな幼虫から育てれば2カ月弱は一緒に生活できます。
アゲハ蝶は、夏から秋にかけて成虫になる『夏型』と、蛹の状態で冬を越し春に成虫になる『春型』の2タイプがいます。春型のアゲハ蝶は、夏型に比べてやや体が小さい傾向にあり、夏に捕まえた幼虫は夏型です。
アゲハ蝶のライフサイクルは比較的短いため、1日ごとの変化を見逃さず、快適に生活させてあげましょう。
幼虫から育てるのもおすすめ
撮影/安田健示
成虫の寿命は短いため、より長く一緒に過ごすなら幼虫から育てるのもおすすめです。幼虫の探し方や、幼虫から育てる際のコツを解説します。
幼虫の探し方
アゲハ蝶の幼虫を見つけるときは、餌となる葉の裏や枝先を探すのがコツです。ナミアゲハならミカンや柚子、キアゲハならニンジンやセリ科の葉で見つかります。
幼虫が葉を食べた後の丸い跡が残っていれば、近くにいる可能性があります。孵化したばかりの幼虫は約2mmの大きさで、茶色で目立たないため注意深く観察してみましょう。
幼虫を捕まえるときは、体をつかむと弱る可能性があります。その植物の持ち主に許可を取って、幼虫を葉ごと持ち帰りましょう。
幼虫から育てる方法
幼虫のときは、種類に応じた餌の葉を虫かごに入れ、捕まるための棒として割り箸も入れておきます。このとき、虫かご内の葉が傷んだら新しいものに取り換え、新鮮に保つのがポイントです。
また、衛生的な環境を保つことも大切です。筆などを使って、毎日ふんを掃除しましょう。幼虫が緑色になる頃には食べる量も増えるので、口の小さい瓶に餌となる植物を一枝くらい入れておくのがおすすめです。
幼虫がケースのプラスチック部分でさなぎになった場合は、紙でポケットを作り、枝にテープで留めて入れてあげると、安全に羽化しやすくなります。成虫になったら、前述の方法で飼育するか、幼虫を見つけた場所に放つかするとよいでしょう。
まとめ

アゲハ蝶は、見た目がきれいなだけでなく、子どもにとって成長過程を観察しやすい点でも魅力です。成虫の飼育も十分可能ですが、幼虫から育てればより長く成長を見守れます。
飼育環境づくりや餌のやり方は、コツをつかめばさほど難しくありません。アゲハ蝶にはいくつも種類があるので、異なる種類の飼育に挑戦するのもおすすめです。ぜひこの機会に、アゲハ蝶の飼育に挑戦してみましょう。