
片側2車線、時には3車線以上になる部分もある広い車道を自由に通行できるようにする試みです。参加は無料かつ自由。午前11時から午後4時までの間、約3㎞の区間中のどこでも好きなところを、自転車、徒歩、ローラースケートなど思い思いの方法で行き来することができます。
自動車やオートバイなど動力エンジンのある乗り物が立ち入り禁止になる以外にはルールはありません。電動アシスト自転車はぎりぎりOKだったようです。
イベントの模様

広い車道の真ん中を走ることができる、という点はマラソンや自転車レースに似ています。しかし、このイベントでは急ぐ必要はありませんし、完走する必要もありません。大抵の人はゆっくりと会話しながら走っていました。
むろん、スタートからゴールまで全速力で駆け抜けるぞ、というタイプの人が排除されていたわけでもありません。アメリカ人って、周りから浮くかもって気に病む人が少ないのです。
何カ所かに設けられたステージではダンスやバンドのパフォーマンスがあり、フードトラックや屋台が連なる場所もありました。日本で似たものを探すとすれば、歩行者天国のようであり、あるいは縁日に近いかもしれません。
残念ながら、この日のアーバインは曇り空で時折小雨がぱらつく生憎の天気でした。昨年の1回目もそうでした。ひょっとしたら、イベント主催側が期待したほどの人出はなかったのかもしれません。この辺りは1年のうち300日ほどは晴天になる地域ですので、またもや運に恵まれなかったようです。
それでも私の目には、ずいぶん大勢の人たちが集まってきていたように見えました。小さな子どもを連れた家族やグループも多く、3輪車や乳母車もたくさん走っていました。たぶん、地元の人が大半だったと思います。

全米に広がるオープン・ストリート系イベント
ここ10年ほどの話ですが、全米各地でこれに似たイベントを見聞きするようになりました。
元々、アーバインの”CicloIrvine”は2010年からロサンゼルスで始まっていた”CicLAvia”を真似たものです。こちらは現在では月に1回ほどのペースで行われています。イベントごとに市内の異なる道路で開催されることが特徴で、過去にはハリウッドやリトル・トーキョーといった人気観光スポットがルートに入っていたこともありました。
どちらもイベント名が”Cicl”で始まるのは、1970年代に南米コロンビアのボゴタで始まった”Ciclovia”に由来します。スペイン語で”Ciclo”は自転車、”via” は道を意味する単語です。
つまり自転車道路というわけですが、この取り組みは市民が自転車や徒歩で自由に街を楽しむことを目的として誕生しました。都市の大気汚染や交通渋滞の問題に対する解決策として注目され、環境保護意識と健康志向の高まりとともにアメリカの都市にも広がっていったということです。

通行できるものは自転車に限るわけではありませんので、より実際のイベント内容に近い”Open Street Festival”という風に説明される方がむしろ多いでしょう。たとえば、ニューヨーク市の”Summer Streets”、サンフランシスコの”Sunday Streets”、シカゴの”Open Streets Chicago”など、多くの都市が同様のイベントを導入しています。
呼び名こそ様々ですが、これらのイベントは、都市の中心部での自動車の使用を減らし、環境に優しい交通手段の利用を促進することで、大気汚染の軽減や健康促進を目指すことが共通しています。
それだけではなく、参加者たちは地域の飲食店やショップ、アートパフォーマンスなども楽しめますし、自動車で通り過ぎると見逃してしまう都市の姿をじっくりと目にするチャンスでもあります。新しいタイプの観光を求める人にもアピールするのではないでしょうか。
ローカルな文化と世界的な環境意識が融合したイベントをぜひ多くの人に体験してもらいたいと思います。アメリカのどの都市でもいいので、”Open streets events near XXX(都市名)” と検索すれば、きっとイベントが見つかるはずです。もしタイミングがあえば、足を運んでみてはいかがでしょうか。

*1. アーバイン市公式ウェブサイトのイベント案内ページ:
https://cityofirvine.org/cicloirvine