弘仁6年、弘法大師がこの地で修行をしていたところ、紀州の熊野権現が現れたという。「世の衆生を永く済度せよ」と告げられた弘法大師は、金の観世音菩薩像を授かった。そして、この像を自ら一刀三礼した先手観音像に納めて本尊としたのが熊谷寺である。この寺は、四国霊場の中で最も大きい仁王門を持ち、1687年に建立されたもので、徳島県の指定文化財に登録されている。
寺の近くにある田園風景。7番から8番に向かう途中にある風景は、どこをみても長閑で歩いているだけで癒される。お遍路は寺は通過点に過ぎず、歩くのが一番のお楽しみ。
お接待所の看板。この看板は、へんろ道を進むにつれて何枚も出てくるので、「もうすぐだ…!」と胸を高鳴らせて進んだのだが、着いた先は古くて荒れ果てた小屋。中を覗くと人影はなく、物が散乱しているだけだった…あぁ、欲を出してはいけないのね。
寺の門。広域農道と呼ばれる山道を登ると、左手に見えてくる。この道に入る前のT字路には、苔むした墓や朽ちた小屋などがあり、そこに重いリュックを置いてきたので手ぶらで参拝。
きれいに整備された門の中を進むと右手にある弁財天。安産の祈願所ともいわれる。大きな池に浮いた小島に太鼓橋がかけられ、情緒がある。
四国霊場最大級の仁王門。和洋と唐洋の折衷様式。間口は9メートル、高さは12.3メートルとダイナミックで迫力がある。
境内にある弘法大師像。この像の後ろにある小屋には、じつは遍路小屋になっており寺の人に頼めば泊めてくれる。ただし、温かい時期でないと凍えるつらい夜に。
煩悩⑧ 温かい場所で寝たい
以前、「雨風しのげるところで眠りたい https://www.bepal.net/trip/tripinjapan/43264」と書いたが、さらに欲を言うなら温かい場所で寝たい。雨風をしのげるだけでは、快適な眠りにつけない。心を穏やかに保てる、温かい場所が必要だ。もっと欲を言えば、体を支えるちょうどよい堅さのマットレスや首の形に合った最高の枕、手触りのいい毛布、ふかふかの掛け布団。これらがすべて整った環境があれば、これだけで最高に幸せだということを覚えておきたい。睡眠は基本的で絶対的に必要な人間生活の礎。これが乱れるだけで、人は簡単に死んでしまうと思う。
☆プロフィール☆
重野友紀 (しげの ゆき)