教えてくれる人・博士(農学) 阿部拓也さん
雑草計画代表。宮城県出身。宇都宮大学大学院、東京農工大学大学院連合農学研究科を経て研究員になる。8年前から現職。
雑草を知ることで、生活の知恵が身につく
雑草──どこにでも自生する草花を指すが、具体的に“雑草”という種類はない。人が作った定義で、どうにも厄介者のように扱われている。一方で“野草”と聞くと響きが良い。でも、雑草も野草も広い意味では同じだ。
「雑草は適応能力が高く、人が作った環境の変化に耐えられる植物です。人と雑草の関わりは長く、かつては肥料や家畜の餌だったり、繊維や染料としても使われてきました。でも、現在では利活用されることなく処分されることがほとんどです」
そう語るのは雑草を研究して23年。雑草についての発信や地域との取り組みを行なう「雑草計画」の代表、阿部拓也さんだ。そんな阿部さんが大切にしているのが日々のフィールドワーク。四季折々の表情を見せてくれる雑草たちを求め、家の近所で、野山で、河川敷で、ジーっと下を見ながら散策している。
「足元ばかり見て歩いているので、怪しまれているのでは……ととても心配になることもありますが(苦笑)、開花や希少種などを見つけたときは、うれしさのほうが勝ります。ヨモギやドクダミなどは和製ハーブ。においを楽しめるのもポイントです」
実際に阿部さんと“雑草さんぽ”をしてみると、今までに気付かなかった草花がすぐに見つかる、どんどん見つかる。これまでただ雑草に目がいかなかったのが、よーくわかるほどだ。
「今はスマホですぐに撮れますし、その場で調べることもできるので、知識ゼロでも簡単に楽しむことができます。しかもキャンプ場などのアウトドアフィールドは、雑草の宝庫です」
ただ知識欲を満たすだけではない。押し花にしたり、雑草染めだって手軽に楽しめるのが、雑草さんぽのいいところ。もちろん、種類を知っていれば雑草を食べることも可能だ。なお、正月7日に食べる春の七草は、5種類が雑草だ。
まさに知って楽しい、集めてうれしい。食べられる品種を知ることで生きる力も養われるなど、雑草は魅力の塊でしかない。
雑草さんぽ基本のキ 3つ
下を見て歩く
目線は足元。小さな雑草も見逃さないようにゆっくり歩くのがポイントだ。
しゃがんで目視
気になるものがあれば、すぐにしゃがんでチェック。触れる、においも嗅いでみる。
すぐにメモ!
どの時季にどのような雑草があったかをメモ。雑草は亜種が多いので、家で確かめる。
10分のさんぽでこんなに見つけちゃいました!
オオイヌノフグリ
スズメノヤリ
ノビル
ヒメオドリコソウ
ホトケノザ
おすすめのフィールドワーク
Challenge 1・雑草を調べてみよう
雑草を調べることで、四季の移ろいを感じたり、食べられるものを知ることができる。山菜採りならぬ、雑草採りだって可能だ。しかも、わざわざ遠出しなくても、近所で十分楽しめる。
図鑑で調べる
図鑑が一冊あると楽しい。ポケットサイズなら持ち運びが楽で、一度調べたものも見直しやすい。いつでも読めるのも魅力だ。
「カントウタンポポ(在来種)とセイヨウタンポポ(外来種)の見分け方は、ほとんどの図鑑に載ってます」
スマホで調べる
サクッと調べるならばスマホが便利。スマホで撮影したものを「Googleレンズ」を使って検索。写真をそのまま保存すれば、画像メモ代わりにもなる。
Google開発の無料画像認証アプリ。iPhone/Androidの両方に対応している。
気になる草花にスマホカメラを向けて検索。PC版の画像検索と同じで、候補がいくつか表示される。
Challenge 2・雑草をコレクションしよう
雑草を摘んでも、私有地以外ならそうそう怒られることがないのも良いところ。紙に押し花してもいいが、100均でも売られているラミネートフィルムを使えばきれいに保管できる。長く保存したい場合は十分に乾かそう。
用意するもの
ラミネートフィルム
(100均でOK)
作りかた
❶雑草を摘む
❷なるべく平たくする
❸ラミネートで挟むだけ
↓
↓
↓
スベリヒユ
シロザ
イノコヅチ
Challenge 3・雑草染めをしよう
日本は古くから草木染めが盛ん。天然の染料は肌にも環境にも優しい。雑草染めも同じこと。メリケンカルカヤは見つけやすく、染材としても扱いやすい。クッカーを使って煮出し、漬け込むだけででき上がり!
用意するもの
・綿100%のタオル
・メリケンカルカヤ
・コンロと鍋
ハンカチサイズなら、両手で持てるひと束ぐらいの量でOKだ。
クッカーに水を入れ、刈り取ったメリケンカルカヤを折っていれる。
↓
水が十分に色づくまでコトコト煮る。メスティン大ならば10分ぐらい。
↓
水が黄色くなったら生地を入れて、色づくまでじっくりと煮るだけ。
BEFORE
↓
AFTER
ほんのりイエロー!
雑草QUIZに挑戦!(答えは記事の一番下にあります)
1
ヒント
シロツメクサのピンク版。レッドクローバー。
2
ヒント
キク科でどこにでも生えている。食用にもなる。
3
ヒント
アサガオに似た花を咲かせ昼もしぼまない。
4
ヒント
代萩とも呼ばれる。茎はすだれの材料にも。
5
ヒント
河原に生える●●●ナデシコ。秋の七草の一種。
6
ヒント
漢字で書くと、現の証拠。薬草としても。
7
ヒント
朝に花が咲き、昼にはしぼむ。つき草とも。
8
ヒント
ルコウソウの仲間で葉が丸なのが特徴。つる性。
【答え】
①アカツメクサ ②アキノノゲシ ③コヒルガオ
④セイタカアワダチソウ ⑤カワラナデシコ
⑥ゲンノショウコ ⑦ツユクサ ⑧マルバルコウ
※構成・撮影/早坂英之(編集部) 写真提供(QUIZ)/阿部拓也
(BE-PAL 2024年6月号より)