シェルパ斉藤、軽快なオープンカーで北海道ドライブ&ハイキング!
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    2023.10.05

    シェルパ斉藤、軽快なオープンカーで北海道ドライブ&ハイキング!

    還暦記念に購入した中古のコペンで北海道を旅した。コペンで北海道を巡るだけでなく、4日間連続で4座の山頂に立つことを目標とした北海道の旅である。

    北海道はキャンプ場が各地にあるので、宿泊はキャンプ場や登山口にある山小屋を利用。詳しくはBE-PAL11月号の『シェルパ斉藤の旅の自由型』に書いたが、山歩きの前にクルマの話をしておきたい。

    ミニマルな装備で北海道を駆けまわるなら断然コペン!

    愛車コペンは2008年のアルティメットエディション。ビルシュタイン製のダンパー、BBSのホイール、MOMOのステアリング、RECAROのシートが装備された特別仕様車だ。マフラーはエンジンの吹き上がりがよく、音質も排気音も心地いい社外品に交換した。もちろん車検対応品。

    駐車場所に困らない八ヶ岳山麓で暮らしているものだから、僕は複数のクルマを所有している。コペン以外にホンダ/N-VANと、スバル/レガシィ・ツーリングワゴンがある。今回のような旅をするなら、荷物がたくさん積めて、車中泊もできて、悪路走破性にも優れる4WDN-VANやレガシィが適任だろう。2シーターの軽オープンカーは、荷物があまり積めないし、最低地上高が低いから登山口までのダート走行もつらい。ましてや、車中泊なんて不可能だ。運転が楽という点でも、N-VANやレガシィに軍配が上がる。

     でもコペンは運転が楽しい。N-VANもレガシィも運転の楽しさにおいては、コペンにかなわない。登山口から登山口へ、あるいはキャンプ場からキャンプ場へ、気持ちいい道路が延々と続く広大な北海道を走るんだから、運転が断然楽しいMTのオープンカー、コペンが今回の旅にはベストチョイスだと僕は考えた。

     実際の話、助手席を使わなければオートバイより荷物を積めるし、僕はミニマルな装備でテント泊するバックパッカーだから、コペンのキャンプでも不自由は感じなかった。

    2シーターのオープンカーでも、ひとりで運転するならオートバイ・ツーリング以上のキャンプ用品を積んでいける。北海道は各地に良好なキャンプ場があるからうれしい。

    自転車で世界を旅する家族へ会いにSEA TO SUMMIT

     北海道で登った山は旭岳、雌阿寒岳、斜里岳、羅臼岳の4座。いずれの山も深田久弥の日本百名山に選ばれている。登山の難易度はどの山もそれほど高くない。旭岳は標高1610mの姿見駅までロープウェイがあって、そこから歩いて3時間かからずに山頂に立てるし、他の3つは「道東三山」として人気が高く、登山道の整備状況は良好だ。

    最初に北海道最高峰の旭岳(2291m)に出かけたのは、旭岳の麓の東川町でモンベルが主催するSEA TO SUMMIT(カヤック、自転車、歩きで山頂をめざす環境スポーツイベント。東川町は旭岳がゴール)が開催されたからだ。初日に環境シンポジウムがあり、ゲストとして参加する世界一周中のスイス人家族、パッシュ・ファミリーに会いたくて、その日程に合わせて僕は北海道の山旅のスケジュールを組んだ。

    自転車で世界一周している旅人は珍しくないけど、パッシュ・ファミリーは別格だ。パッシュ夫妻は旅の途中で女児を出産。旅を中断することなく、幼児を連れて自転車の世界一周を継続している。さらに長女に続いて次女も旅の途中で出産。幼い姉妹とともに家族4人で旅を続けているアドベンチャーファミリーである。

    夫のグザヴィエさんも妻のセリーヌさんも気さくな人柄で、自転車に積めるだけの荷物で家族4人がテント暮らしの生活を続けているのに、気負いをまったく感じない。世界のどこでも地元の人々に愛されるであろう、フレンドリーな家族である。

    そんなパッシュ・ファミリーがゲストだからだろう。カヤックがスタートした朝は雨が降ってガスに包まれて何も景色が見えなかったのに、パッシュ・ファミリーが旭岳にゴールする時分には雨も上がり、視界が開けて北海道最高峰からの絶景を拝むことができた。

    SEA TO SUMMITの環境シンポジウムに登壇したグザヴィエさん、セリーヌさん、ナイラちゃん、フィビーちゃんのパッシュ・ファミリー。モンベルの辰野会長も加わったトークは中身が濃かった。

    SEA TO SUMMITのゴール、旭岳にて。辰野会長が得意の笛で参加者たちを迎える。前夜の歓迎レセプションでは、辰野さんの笛の演奏でナイラちゃんとフィビーちゃんが日本語で『ふるさと』を合唱して拍手喝采となった。

    北海道最高峰に立つ。北海道の山は垂直的な雄大さではなく、水平的な広がりを感じる。日本離れした風景だ。

    雌阿寒岳の頂上で出会ったのは……

    SEA TO SUMMITを見届けてから、道東の雌阿寒岳方面に移動。阿寒湖畔キャンプ場にテントを張って泊まった翌朝、雌阿寒岳の登山口でもあるオンネトー国設野営場へコペンを走らせた。

    阿寒湖畔キャンプ場にテント泊する。これまで何度か利用しているが、歩いていける距離に飲食店も食堂も温泉もあって、利便性のいいキャンプ場だ。

    かつて北海道3大秘湖と呼ばれたオンネトー。湖畔から雌阿寒岳を眺められる。

    オンネトーのキャンプ場はモーラナイフなどのアウトドア用品を販売するUPIが運営している。1年前に完成した休憩舎にはアウトドア用品の販売やレンタル、軽食コーナーもある。

    登山道には現在地を把握できる「合目」の標識が設置されている。樹林帯を抜けて、見通しがよくなった7合目を過ぎたあたりで登山道を下ってくる若い男性と会った。

     「頂上がすごいことになってます。テントウムシくらいの小さな虫がわんさかいて、全身に群がるんですよ。『インディ・ジョーンズ』みたいな感じ。気色悪くて1分もいられなかった」

     どんな虫なんだろう? と覚悟して登山道を進んだ。すると9合目から小さな虫が出現して、山頂に近づくにつれ、その数は爆増していった。

     岩の上も、ロープの上も、標識の上も虫がウジャウジャいる。飛んでいる虫もたくさんいる。その数は万単位だと思う。彼がいったように映画の『インディ・ジョーンズ』にこんなシーンがあったように思う。

     山頂でおやつを食べるつもりでいたが、口に入ってしまうし、気色悪いので、写真だけを撮って山頂をあとにした。

    虫の正体を地元のガイドに聞いたら、ハンノキハムシではないか、とのこと。でもハムシは葉を食べるはず。植物が生えてない頂上になぜこの虫はいるのだろう? どうやって生きているんだ?

    雌阿寒岳の頂上の看板もハンノキハムシがびっしりいた。1~2分いると全身にハンノキハムシがこびりつく。

    雌阿寒岳の頂上からは噴煙が上がるポンパネシリ火口が望める。ハンノキハムシの異常発生のため、この写真だけ撮って下山した。

    渓流沿いのトレイルを歩いて斜里岳へ

    4つの山はどれも簡単に登れると先に記したが、斜里岳は難易度がちょっと高くなる。斜里岳は渓流に沿った登山道になっていて、渓流の右岸へ左岸へと渡り歩く必要がある。その渡渉の数は30か所を超える。途中に滝もいくつかあり、滑りやすくて急な一枚岩を超える場所もあり、沢登りのスキルが少し要求される。

     でも危険なレベルではない。滑りやすい場所は一歩ずつ慎重に歩けばいいだけだし、万が一滑ったとしても、何メートルも滑落することはない。渓流のトレイルなんだから濡れたってかまわない、と開き直ればむしろ渓流歩きが楽しく感じる。

    斜里岳の登山口にある清岳荘。宿泊する場合は「きよさと観光協会」(TEL:0152-25-4111)へ電話で予約する。

    素泊まりのみだけど、電気が通っているため、冷蔵庫も電子レンジもあって快適。このつくりと設備で1泊2120円は安い。

    清岳荘から斜里岳へのトレイルは渓流沿いのルート。右岸へ、左岸へと渡渉の連続がおもしろい。

    滑りやすい箇所もあるけど、ロープが施されている。ちなみにこのルートを下るのは危険。稜線と樹林帯を歩く下り用のルートが別にある。

    斜里町周辺をドライブすると斜里岳が目立って見えるように、斜里岳からはオホーツクの広大な風景が望める。

    羅臼岳の山頂にも立ち4座を制覇!

    最後の山となった羅臼岳も、登山口に素敵な山小屋があった。趣ある手作りログハウスの木下小屋だ。

     同い年のご主人、四井さんも個性的な人物だったし、僕が宿泊した夜はレアな登山者が泊まっていた。それに関しては、本誌の『シェルパ斉藤の旅の自由型』を読んでもらいたい。羅臼岳も天候に恵まれ、雄大な北海道ならではの絶景を拝める山歩きとなった。

     4日間連続で4座の山の頂に立った、北海道の山のホッピング旅。山から下りたあとのコペンのドライブが快適だったこともあり、疲れはほとんど感じなかった。北アルプスや南アルプスなどで、稜線を156時間歩く縦走の山旅をした感覚に近い。

     また僕と同じように道東三山を続けて歩いている本土からの登山者も多く、彼らとのふれあいにも心が温まったドライブ&ハイキングの旅だった。

    羅臼岳のウトロ側登山口にある木下小屋。現管理人の四井さんも建築に携わったログハウスは、30年経ってもビクともしない。

    木下小屋は岩尾別温泉にあり、うれしいことに露天風呂がある。風を心地よく感じる気持ちいい露天風呂だ。

    羅臼岳の山頂に立つ。知床半島の山々が望める。ここには縦走ルートもあるので、そちらも歩きたくなった。

     

    シェルパ斉藤
    私が書きました!
    紀行作家・バックパッカー
    シェルパ斉藤
    1961年生まれ。揚子江の川旅を掲載してもらおうと編集長へ送った手紙がきっかけで『BE-PAL』誌上でデビュー。その後、1990年に東海自然歩道を踏破する紀行文を連載して人気作家に。1995年に八ヶ岳の麓に移住 し、自らの手で家を作り、火を中心とした自己完結型の田舎暮らしを楽しむ。『BE-PAL』で「シェルパ斉藤の旅の自由型」を連載中。『シェルパ斉藤の行きあたりばっ旅』ほか著書多数。歩く旅を1冊にまとめた『シェルパ斉藤の遊歩見聞録』(小学館)には、山、島、村、東海自然歩道などの旅や、犬と歩いたロングトレイルの旅を収録。

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