旅の終点の首都バンコクで出会ったビールと合う料理「オースアン」とは?
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    2023.06.18

    旅の終点の首都バンコクで出会ったビールと合う料理「オースアン」とは?

    今は観光地にもなっているクウェー川鉄橋。
    ©Takaki Yamamoto

    著述家、編集者、写真家・山本高樹のタイ辛旨縦断紀行⑥(最終回)

    「戦場にかける橋」の街、カンチャナブリー

    古都アユタヤーからロットゥー(ミニバス)に乗って、西へ2時間ほどの場所にある、カンチャナブリー。映画「戦場にかける橋」の舞台になったことで知られている街です。現在は観光地にもなっているクウェー川鉄橋は、第二次世界大戦中に日本軍によって建設され、爆撃によって破壊されましたが、戦後に日本からの補償によって再建されました。列車が通行していない時は、徒歩で鉄橋の上を歩くことができます。

    連合国軍共同墓地に並ぶ墓標の列。
    ©Takaki Yamamoto

    第二次世界大戦中、日本軍は、タイとビルマ(現ミャンマー)との間に全長400キロ以上に及ぶ鉄道路線、泰緬鉄道を建設しました。当時の泰緬鉄道の工事では、大勢の連合国軍の捕虜や現地の人々が徴用され、劣悪な環境と過酷な労働による栄養失調や疫病、事故などにより、膨大な数の死者を出す惨禍を招いてしまいました。カンチャナブリーの街の中心部には、泰緬鉄道の工事の際に亡くなった連合国軍の兵士たちを埋葬した共同墓地があり、今も多くの人々が献花に訪れています。

    食堂の片隅でいただく、コームーヤーンとソムタム。
    ©Takaki Yamamoto

    カンチャナブリーの安宿街の東外れにある、セープセープ(Zab Zab)という食堂で晩ごはんをいただくことにしました。この店はタイ料理のメニューが豊富で値段も手頃なので、地元の人々の間でも人気です。この日いただいたのは、コームーヤーン(豚ののど肉の炙り焼き)とソムタム・カイケム(青いパパイヤと塩卵のサラダ)。数あるタイ料理の中でも、個人的に特に好きなのがこの2つで、日本でタイ料理店に行く時も、メニューにあれば必ず注文しています。写真にはありませんが、この後、カオパット・サパロット(パイナップル入りチャーハン)もいただきました。

    バンコクの中心地にある、マーブンクローン(MBK)センター。
    ©Takaki Yamamoto

    旅の終点、巨大都市バンコクへ

    カンチャナブリーでの取材を終えた僕は、今回の旅の最終滞在地、タイの首都バンコクに向かいました。人口約550万人、周辺の都市圏人口を含めると1600万人を超えるとも言われる、東南アジア随一の巨大都市です。タイ全体の総人口が7160万人程度という数字と比べると、いかに巨大な街であるかがわかります。

    カンチャナブリーからロットゥー(ミニバス)で移動してきた僕は、BTS(スカイトレイン)を使って、街の中心地にある国立競技場駅まで行き、その近くにある安ホテルに宿を取りました。宿からすぐ南にある観光客に人気のショッピングセンター、マーブンクローン(MBK)センターは、コロナ禍の時期には館内のショップの大半が退去して、がらんどうの状態になっていたそうですが、最近は再びショップやレストランが入居して、かつてのにぎわいを取り戻しつつあるようでした。

    バンコクのチャイナタウン、ヤオラワート通り。
    ©Takaki Yamamoto

    バンコクでの取材中に訪れた、チャイナタウンのヤオラワート通り。左右のビルからわちゃわちゃと突き出た派手な看板が、チャイナタウンの雰囲気を存分に演出しています。この付近には手頃な宿や食堂、茶店も多く、旅好きな人々の間では昔から人気のエリアです。

    チャオプラヤー川を定期運行のボートに乗って移動。
    ©Takaki Yamamoto

    巨大都市バンコクは交通量も多く、渋滞もすごいので、取材で街を移動する際には、BTS(スカイトレイン)やMRT(高速都市鉄道)、そして船を使います。チャオプラヤー・エクスプレスボートは、街の中心部からカオサン通りのある方面に取材に行く時に、よく利用しました。船べりに座って風に吹かれながら、ゆっくりと川を遡上していく船旅の体験は、この街ならではのものかもしれません。

    バックパッカーの聖地とも言われた、カオサン通り。
    ©Takaki Yamamoto

    3年ぶりに訪れた、バンコクのカオサン通り。かつては、海外からバンコクを訪れる大勢のバックパッカーがこの近辺の安宿に集まっていたことから、バックパッカーの聖地の一つとして知られていました。最近では、コロナ禍の影響もあってか、カオサン界隈の安宿や安食堂の数は減少傾向にあるようで、見かける旅行者の数も以前には遠く及ばない印象でした。むしろ最近は、この界隈で営業しているクラブやバーに地元の若者たちが大勢集まっているという話も耳にしました。

    帰国前日の夜にありつけた、空芯菜炒めとオースアン、そしてビール。
    ©Takaki Yamamoto

    旅の終わりに、シーフードを満喫

    タイで予定していた取材をすべて終えた日の夜、プロムポン駅から少し南に歩いたところにある庶民的なシーフードレストラン、ソーントーンへ足を運びました。最後の夜なので、何か、絶対確実においしいシーフードが食べたくて……(笑)。

    注文したのは、オースアン。熱々の鉄板の上で、小ぶりな牡蠣をとろみのある生地と卵でとじた、牡蠣のお好み焼きのような料理です。まろやかな中に牡蠣の旨みが凝縮されていて、めちゃめちゃおいしいんですよ、これ……ビールを飲まずにはいられない……。さすがに取材経費で払うのは申し訳なかったので、全部自腹でいただきました(笑)。

    空港に向かう前の最後の腹ごしらえは、トムヤンクン・ヌードル。
    ©Takaki Yamamoto

    バンコクでの最終日、空港に向かう前の腹ごしらえに向かったのは、ラーチャテーウィー駅の近くにある名店、ピー・オー。恐ろしい量のエビを煮込んだスープで作るトムヤンクン・ヌードルが大人気の店です。自慢のスープは、一般的なトムヤンクンの味のイメージとは違って、それほど辛くはなく、ただただ芳醇なエビの旨みと香りが口の中に押し寄せてきます。タイでの食べ納めにはぴったりの一品でした。

    コロナ禍の影響で3年ぶりとなった、3週間半にわたるタイでの旅。変わってしまっていたものもあれば、昔のままだったものもあり、行く先々で懐かしい顔に出会うたびにほっとしたりして、いろいろな思いがないまぜになった旅でした。そして本場で食べるタイ料理は、その場の雰囲気も含めて、やはり別格のおいしさだった……。

    2014年から毎年担当してきた『地球の歩き方タイ』の取材の仕事も、いろいろな事情で、おそらく今回が最後になると思います。ただ、アジアを中心とした国々を旅していれば、ちょくちょく訪れる機会が出てくるのがタイという国なので、そのうちまた、何かの折に旅することになるかもしれません。その時は……さて、何を食べようかな(笑)。

    ———

    取材協力:
    『地球の歩き方タイ 2024〜2025』
    (地球の歩き方 2023年6月8日発売)

    私が書きました!
    著述家・編集者・写真家
    山本高樹
    1969年岡山県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとザンスカールに長期滞在して取材を敢行。以来、この地方での取材をライフワークとしながら、世界各地を取材で飛び回る日々を送っている。著書『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)で第6回「斎藤茂太賞」を受賞。

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