ドバイで有名なアラブ首長国連邦(UAE)。高層ビルや巨大ショッピングモールが立ち並び、世界中のVIPが集まるこの国で、「え、アウトドア?できるの?」と思われるかもしれませんね。心配ありません!
アウトドアにぴったりの自然、実はUAEにもあります。なにせ国土の80%近くが砂漠なのです。
大小さまざまある砂漠で、テントを張ってのキャンプはもちろん、最近はブームに乗ってグランピング施設なども次々とできています。
日常の延長にあるのがUAEの砂漠のよさ。首都アブダビやドバイの中心地から1時間も車を走らせれば、目の前に広野が現れ、あっという間に非日常空間へ没入することができます。
今回はそんなUAEで、“いちばん身近な自然=砂漠”でのキャンプの楽しみ方を紹介します!
とある週末に砂漠キャンプへ行ってみた
さっそく、砂漠キャンプの様子を時系列でお届けしていきます。
前日までの準備編
予定のない週末があり、1泊で砂漠キャンプにでかけようと思い立ちました。
そのとき、すでに水曜日。チャットアプリで仲間に声をかけ、即OKの返事がきたアメリカ人家族は小学生のキッズたちも一緒に参加。
さらにはカナダ人の50代夫婦からも返事があり、今回はこの3家族で砂漠を目指すことになりました。その距離、アブダビから車で1時間半。
前々日
まずはキャンプギアの点検。
夜間は砂が冷たくなるだけでなく、砂地のうねりが案外気になるので、寝袋の下に敷くエアマットレスは必須です。
また、川や湖のような水場はないため、「飲料用」と「手や食器を洗う用」と分けて水を合計10リットル準備しました。
前日
前日は、キャンプ中の食事の仕込みをしました。調理にはあまり重きを置かず、その場で手早く食べられることを重視。
特に、遊牧民たちも食べていた中東のスーパーフード、デーツ(なつめやしの実)のドライフルーツは栄養価が高く保存もでき、暑い地での糖分補給にぴったり。なので、荷物に忍ばせます。
いざ砂漠へ出発!当日編
前日までに準備を終えたら、いよいよ砂漠へ出発です。
12時半
自宅を出発。UAEの金曜日は、基本的に企業や学校などはお昼まで、午後は休みになります。よって午前中はいつもどおり仕事をして、お昼過ぎには砂漠に向けて出発。このとき気温は27℃。
13時
目指す砂漠キャンプスポットの手前、ハイウェイ沿い最後のガソリンスタンドでメンバーと待ち合わせ。ここで大事なことは3つ。
1.トイレを済ませる(基本的に砂漠にはトイレがありません。穴を掘って埋めて、の原始スタイル。ここでトイレを済ませておくと安心です)。
2.キャンプファイヤー用の薪を買う(シーズンになると、砂漠近くのガソリンスタンドでは薪が積まれ、販売されます)。
3.ガソリンを満タンにする(これは死活問題にもなりかねません。広大な砂漠の真ん中で、万が一ガス欠になろうものなら……。 想像するだけでぞっとします。必ず最後のガソリンスタンドで満タンに給油してから砂漠に乗り入れます)。
4. タイヤの空気圧の調整(タイヤのエアを抜き、砂地での走行に備えて準備。空気圧を下げたタイヤは地面との設置面が増え、形状が砂地に合わせて変形するため砂に埋もれにくくなるのです。どれくらい下げるかは、行く先に応じて「感覚」と「経験値」で調整)。
14時半
目指していたキャンプスポットへ到着。目指すと言っても、砂漠に住所があるわけでも目印があるわけでもないのに「どこへ?」ですよね。
毎回砂漠を訪れるたび、自分の好きなお気に入りの場所を開拓します。そして仲間同士で「朝日がきれいに見えた」「舗装道路まで比較的近くて便利だった」など、おすすめポイントと共にGPS位置情報をシェアし合うのです。
今回のスポットは、以前別の友人に教えてもらった場所。交換したGPS情報をたよりに向かうと、見事な砂丘の絶景ポイントでした。写真を趣味にするカナダ人夫妻は大興奮!
また舗装路から近く、テントを張ろうと決めた場所のすぐ近く(20〜30m手前)まで、比較的硬く締まった砂が広がっていました。タイヤのエアも、通常値より気持ち抜いた程度で乗り込める、初心者向きの便利なスポットです。
それでも、サラサラとした砂地をいつもよりゆるっとしたタイヤで走るのは、アメンボのように水面をすいすーいと泳いでいるようでおもしろい感覚!我が家の5歳児もテンションが上がっていました。
ちなみに今回3台の車ででかけましたが、四輪駆動のフルサイズSUVに乗ってきたのは我が家だけ。あとの2台はコンパクトSUVでした。こんな具合で、UAEには「オフロード」に強い車なしでも行ける、砂漠キャンプスポットがある!ということなんです。
15時
各自テントなどセッティング。砂地なので、ペグは長いものを使用します。
さらには焚き火も準備。調理用というより、夜の暖を取るために使います。夜は気温が15度ぐらいまで下がり、薄手のフリースでは寒いぐらいです。
16時
束の間の砂アクティビティを楽しみます。砂丘の高低差をサンドボード(砂ソリ)で滑りました。
特別な道具がなくてもOK。平らにしたダンボール箱に座ってただ滑り落ちる、それだけでも爽快。4Gは入らないし、TVゲームもないけれど、子どもたちは飽きることなく巨大な砂場で遊び倒していました。
次は砂丘の稜線を歩いて、あたりで一番高い場所を目指します。
砂に足をとられながら腰を低くして進むも、きっちり紐を結んだ登山ブーツの中や靴下の中は砂だらけ。最後はええいと裸足になり、稜線のアップダウンをひたすら歩き続けて一休み。
18時半
18時半になると、サンセットタイムに。
360度どこから見ても果てしなく広がる砂の先に沈む夕陽を、ただただ眺める。なんというダイナミックな景色でしょう。
かつての遊牧民族が、ラクダを伴って道なき道を進んできたその開拓魂にしばし思いを馳せていると、まもなく太陽が砂の下にもぐりはじめ、あっという間にその光線は地球の向こう側へ行ってしまいました。
そのあとの黄昏雲の美しいこと。赤・オレンジ・黄色……。強く眩しい光の色がみるみる変容し、砂のオレンジ色と同化していく様子にすべてを忘れ、立ち尽くしてしまいます。
完全に陽が落ちたら、さあ、そろそろディナータイム!
19時
ディナーは、あらかじめ下ごしらえをしたパテを焼き、ハンバーガーに。
ところが、この頃になると風が吹いてきて、お湯を沸かすもその中に砂。フライパンにはオイルにまみれた砂。いざ食べようにも、口の中に砂が入ってきて……。
キャンプの楽しみのひとつは一般的にはキャンプ飯だったりしますが、砂漠キャンプでは砂との戦い。この日私が食べた半分は砂だった気がします。まだまだ課題が残ります。
21時
みんなで火を囲み、満天の星を見上げます。砂上に降り注ぐ月光の美しいこと。
ふと足元を見ると、小さなお客さまのトビネズミ(体長約1cmのトビネズミ科の小動物。主に砂漠に生息し、長い尻尾と発達した後ろ足が特徴。カンガルーのようにぴょんぴょん跳ねる)。
さっと飛び跳ねて砂の向こうへ消えてしまいました。木も泉もない、過酷な自然のなかに生きる、小さな地球の仲間との出会いに心打たれます。静けさの中で、夜は更けていきました。
翌朝は、再び力強く昇るサンライズを楽しんで、ラクダの親子と並走しながら砂漠を後に。ハイウェイ手前のガソリンスタンドでタイヤの空気を補充し直して、アブダビ中心地に戻りました。
非日常へワープできる砂漠キャンプ
ちょっと近所の公園に、というような感覚ででかけられる身近な非日常、それがUAEの砂漠。
そこでのキャンプの楽しみ方はシンプル。どこまでも続く砂の上にテントを張り、夜は満天の星を眺める。野生動物との遭遇や、風がつくる砂紋、サンセットなど、砂漠ならではの絶景を味わうのが醍醐味です。
ただし、キャンプシーズン選びにはご注意を。中東の気候は、夏になると50℃を超えるので、UAEでキャンプに適した季節はあくまで冬(11〜2月頃)がメインとなります。
短期間ながら最高28℃、最低15℃ぐらいの快適な“アウトドア・ベストシーズン”には、毎週末あの手この手で外のアクティビティを楽しむことができるのです。