
素敵な町は 移住者が多い。 働きながら 外遊び!
週末だけの田舎暮らし、自分だけの遊び場……住んでいる場所とは別に、拠点をもうひとつ設ける2拠点生活が楽しい!
どこから何から始めたらいいのかわからないという人も、大丈夫。おためし体験などができる、施設や自治体が心強い味方となってくれる。
地域と外部をつなぐ長野県飯綱町の取り組み
「フェザースティックを削るときはナイフの根元を当てて押し出すように……。そうそう!」
「こっちはコーヒー豆、そろそろいい色になってきたよ〜」
校庭で焚き火を囲むのは、長野県飯綱町にあるコワーキングスペースの利用者たち。ホストは薪を割り、火をおこし、コーヒーの焙煎まで忙しく指導している。コワーキングスペースの利用者にしてはずいぶんアウトドアに長けている……と思ったら、彼らはなんと利用者ではなく、職員と常連の町民。利用者と一緒に、遊んでいたのだ。
ここは「いいづなコネクトEAST」。廃校になった小学校をリノベーションして、コワーキングスペースや図書室、工作室を備える地域のコミュニティセンターとして2020年に生まれ変わらせた施設だ。
「人と人の縁をつくり、未来のコミュニティをつくる。そんな場を目指して運営しています」
そう話すのはいいづなコネクトに置かれたよろず相談窓口「ツクリバ」を運営する佐久間崇さん。自身も飯綱町への移住者である佐久間さんは、地域の内外をつなぐべく忙しく飛び回る。
「イベントの企画から移住の相談まで、ツクリバにはあらゆる相談が持ち込まれます。その全てをスタッフが解決できるわけではありませんが、ここには人のつながりが蓄積されているので、人づてに相談を広げるうちにたいていの問い合わせはクリアされますね」
都市と飯綱町をつなぐ
いいづなコネクトEAST
コミュニティマネージャー
佐久間 崇さん㊨ 吉川剛史さん㊧

いいづなコネクトの運営を預かるのは株式会社カンマッセいいづな。カンマッセは「かき混ぜる」を意味するこの地域の方言「かんます」に由来。おふたりは地域の内外をかき混ぜるべく、奔走中。

旧三水第二小学校を再生。コワーキングスペース、工作室、喫茶室、購買部などを備え、地域のサードスペースとしての役割も担う。

開放的なコワーキングスペース。
掲示板にはさまざまな職能をもつ会員の自己紹介が貼られ、会員間の交流が図られる。
地域と外部をつなぐ取り組みのおかげか、人口減少が続く長野県にありながら飯綱町は昨年転入が転出を上回った。世代別では10代と30代の移住者が多い。子育て世代がこの町を選んで移り住んでいるのだ。
「新幹線が停まる長野駅に近いことやコロナの影響でリモートワークが進んだこともあるでしょう。しかし飯綱町に似た条件の町はほかにもあります。飯綱町への移住が増えているのは、移住しやすい環境づくりを進めてきたからだと思われます」
そのひとつがツクリバを核とする地域の連絡網だ。町外からの移住や物件の問い合わせはツクリバが窓口になり、必要に応じて町役場や地域の工務店、宿泊施設やサービスへとつなげていく。相談者が受け皿に入ったあとも、相談者が孤立しないよう気の合いそうな町民をそれとなく紹介する。
ツクリバは、飯綱町の移住コンシェルジュにして地域との仲介者でもあるのだ。
「いいづなコネクトはその名のとおり、人と地域のコネクターです。長野県でアウトドアと仕事を両立したい方はひとまずご相談ください。リモートワークから本格的な移住まで、2拠点生活をサポートします!」
アウトドアのプレーヤーが集結!
ブッシュクラフト&コーヒー焙煎

ブッシュクラフトインストラクターの田中洋満さん(右から2人目)が指導。町には野外活動のエキスパートが大勢在住。

メタルマッチで着火! 田中さんは休耕地を活用したプライベート野営場をオープン予定。

1杯分のコーヒー豆を個包装にした「キャンプタイムコーヒー」をプロデュースした藤川頌太さんはEAST勤務。この日は焙煎を実演。
人をつなぐ「ツクリバ」ワークショップ

コワーキングスペースでは町内の問題を解決するための住民参加型のワークショップや、遠隔地の講師と回線をつないだ勉強会を定期的に実施。
宿泊も特訓も!
いいづなコネクトWEST
コミュニティマネージャー
加藤貴彰さん㊧ 諌山未来雄さん㊨

グラウンドをはじめ本格的なトレーニング施設を備えるWEST。「校長」の愛称で呼ばれる加藤さんは千葉県から、スタッフの諌山さんは福岡県から移住。諌山さんはバックパッカー時代にゾウ使いの資格を取得。狩猟免許ももつ。

閉校した旧牟礼西小学校を再活用した複合施設。牛骨ラーメンが人気の「とちのき食堂」や購買部を備え、地域からも愛される。

スポーツ施設目当ての利用者と地域のニーズに応えて大型コインランドリーを設備。

団体5名以上か家族が利用できる宿泊室。高校生以上素泊まり3000円〜。

本格的な機器を備えたジム「Sent.」。ビジター会員の料金は1010円/回。
農業をしながらロングステイ

農業を基幹産業とする飯綱町では農家に泊まりながら援農する「農泊」や就農希望者を対象とする体験説明会も行なわれている。

本格的な舞台芸術を志す団体「PAM」。飯綱町の受け入れ先で農業をしながら稽古に励む。
※問い合わせ先:いいづなコネクトEAST 026(262)1995 いいづなコネクトWEST 026(217)0016 カンマッセいいづな026(219)1210
※構成/藤原祥弘 撮影/柳沢牧嘉
(BE-PAL 2022年11月号より)