「作る技術は刀匠、形は山師から学んだのが俺の剣鉈(けんなた)さ」
とは、日本の民俗を取材してきた作家の遠藤ケイさん。
遠藤ケイさん。1944年、新潟県生まれ。日本の民俗や生活技術の取材をライフワークとする。著書に『男の民俗学』(小学館)、『熊を殺すと雨が降る』(筑摩書房)、『道具術』(岩波書店)ほか。
「子供のころの憧れの職業は“鍛冶屋”。成人しても鍛冶への情熱は冷めず、刀匠の加藤清志さんに教えを乞うて日本刀の打ち方を教わった。そして、鍛冶の技術を身につけたあとに知り合ったのが、秩父の山師の棟梁。彼に『父の形見の鉈と同じ形の鉈を打ってほしい』といわれて作ったうちの一本が、この剣鉈なんだ」刃は八寸、鋼は安来鋼の青紙。「硬すぎず、柔らかすぎない」硬度に焼き入れをしている。
鞘の引き出しに入っているのは山で刃が鈍ったときのための砥石。実用性と遊び心が光る。