この秋、小さな望遠鏡で土星のリングデビューのすすめ
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    2021.10.17

    この秋、小さな望遠鏡で土星のリングデビューのすすめ

    10月20日18時半ごろの南の空。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

    1万円くらいの望遠鏡でもOK

    私たちはなぜ土星の環にこれほど惹かれるのでしょうか。天体望遠鏡を手に入れたら、まず向けてみるのが月、そして土星ではないでしょうか。

    土星の環を見つけるだけなら、立派な望遠鏡である必要はありません。口径5cmくらい、1万円くらいの望遠鏡でも、バードウォッチング用の望遠鏡でも見ることができます。私は2000円くらいの組み立て式望遠鏡で見たこともあります。

    土星は29年周期で太陽を回っています。今は比較的、リングが見やすい時期です。とはいっても、よく写真で見る何重にもなったリングや、リングとリングの間の隙間まで見えるわけではありません。おそらく、期待するよりはるかに小さいでしょう。それでも環の存在感がある。そこが土星のいいところです。

    いくら性能が高い望遠鏡でのぞいても、使い方のコツをおさえなければ土星の環は見えません。望遠鏡を使った天体観測で初心者がつまずくのは、そもそもお目当ての天体が視野に入らないことです。まず、望遠鏡の中心とファインダーの中心をしっかり合わせておくこと。これは昼間にしておく作業です。なるべく遠くにある鉄塔の尖端とか、山の頂などを使って合わせておきましょう。

    次に、倍率の低いアイピース(接眼レンズ)から試してみること。もし20倍、30倍、50倍というアイピースがあるなら20倍のアイピースを使います。倍率が高くなるほど、望遠鏡の視野は狭くなり、お目当ての天体が探しにくくなります。

    低倍率の望遠鏡で見る土星はこんな感じ?(ステラナビゲータ/アストロアーツ)

    口径5cm、低倍率のレンズで見えるであろう土星が上の図です。思ったより小さいでしょう?リングに見えないかもしれません。ただ、他の惑星と比べると明らかに、「耳」がついているのがわかると思います。これが環です。

    17世紀、最初に望遠鏡で土星を見たのはガリレオ・ガリレイです。彼は口径4cmほどの望遠鏡で土星を観察していました。環があることまではわからなかったのですが、「耳」みたいなものがついていることはわかりました。17世紀の口径4cmの望遠鏡でも耳がわかったのですから、現代の望遠鏡でも見えるはずです。

    ガリレオ・ガリレイが描いた土星のスケッチ。

     なお、気流などの大気の状態も望遠鏡での見え味を大きく左右します。低いところでは惑星像が大きくゆらいでしまうので、なるべく土星が高く昇っているときを狙って観測しましょう。

     土星が見えたら木星のガリレオ衛星も見てみよう

    昨年から土星と木星が仲良く並んで見えてみます。土星の環を見たら、次は木星にトライしてみましょう。

    木星には4つの大きな衛星があります。ガリレオ・ガリレイが発見したのでガリレオ衛星と呼ばれます。イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストというギリシャ神話由来の名前がついています。実は、土星の環を見るより、ガリレオ衛星を見つけるほうがたやすいです。

    低倍率で見える木星とガリレオ衛星。これだけ見えれば上等?(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

    直径5cmの望遠鏡で見える木星は、だいたい上の図のような感じです。土星より見やすいでしょう。10月後半の日没後は木星と土星が南の空に並んでいます。キャンプ場など町明かりから離れた場所なら、土星の環も、木星のガリレオ衛星も見られることでしょう。この秋、小さな望遠鏡デビューをしてみませんか?

    構成/佐藤恵菜 

    私が書きました!
    星空案内人
    廣瀬匠
    天文系ライター。株式会社アストロアーツで天文ニュースの編集などに携わる。天文学の歴史も研究していて、パリ第7大学で古代インドの天文学を 扱った論文で博士号を取得。星のソムリエ®の資格を持つ案内人でもある。アストロアーツより、宇宙の不思議に出会えるモバイルアプリ「星空ナビ」iPhone・Android版無料公開中。

     

     

     

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