6年に一度しか巡ってこない!木星「ガリレオ衛星相互現象」シーズンって何だ? | 自然観察・昆虫 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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  • 6年に一度しか巡ってこない!木星「ガリレオ衛星相互現象」シーズンって何だ?

    2021.06.07 廣瀬匠

    (©NASA,ESA and The Hubble HeritageTeam)

    4つのガリレオ衛星が暗くなったり隠し合ったり

    今回はちょっとマニアックですが、木星の4つの衛星「ガリレオ衛星」の相互現象についてご案内します。

     木星には79個の衛星が発見されていますが、その代表的な衛星がイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの4つ。17世紀にガリレオ・ガリレイが望遠鏡を向けて発見した衛星なので、「ガリレオ衛星」と呼ばれます。

    ガリレオが発見した4つの衛星は「ガリレオ衛星」と呼ばれる。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

    ガリレオ衛星が木星の前を通過したり、後ろに隠れたり、明るくなったり暗くなったりする様子を見るのが木星観測の楽しさですが、この6月、4つの衛星が重なったり、隠し合ったりする「相互現象」が見られます。

    地球の影が月を隠すと月食、月の影が太陽を隠せば日食ですが、同じようなこと木星では衛星同士で起きます。ある衛星の影が別の衛星を隠せば「食」、地球から見て衛星そのものが別の衛星を隠せば「掩蔽」(えんぺい)と呼ばれ、この2つの現象をまとめて「衛星の相互現象」といいます

    ガリレオ衛星の相互現象が起こるのは、木星の内側にいる太陽や地球から見て、衛星の軌道が真横を向いているときに限られます。ガリレオ衛星たちはほぼ同じ面に沿って回転しているので、それを斜め上や下から見れば衛星同士が重なることはありません。衛星の軌道が横向きになるのは、木星が約12年かけて太陽の周りを回る間に2回だけ。つまり、今年は6年に1しか巡ってこない「ガリレオ衛星相互食のシーズン」というわけです。

    6月中旬、午前0時を過ぎるころに東の空に木星が昇ってきます。

    たとえば6月12日の3時には、ガニメデの影にイオが入り込んできて、イオが暗くなる状態が40分くらい続きます。今年は何度も相互現象が起きますが、これはその中でも特に見やすいほうです。

    6月12日3時のガリレオ衛星の様子。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

    ギリシャ神話のゼウスの愛人だった4人の名前

    ガリレオが4衛星を発見したのは1610年のことです。当時は地球が中心の天動説が常識。ガリレオは木星の回りに見える小さな天体が、日によって位置が違うだけでなく、3つだったり4つだったり2つだったりと、数が違うことに気づきます。それらは木星の周りを回っており、木星の背後に回ると見えなくなることをガリレオは発見したのです。これがガリレオ地動説強い根拠を与えました。

    天体望遠鏡を買った人が、まず望遠鏡を向けたくなるのが月、そして木星でしょう。17世紀にガリレオがごく初期の望遠鏡で発見、観測したぐらいですから、現代の望遠鏡であれば小さくても観測できるはずです。

    ガリレオ衛星の光度は56等です。双眼鏡でも三脚にしっかり据え付ければ見える明るさです

    このうちガニメデは太陽系最大の衛星で、惑星である水星よりも直径が大きいです。ガリレオ衛星の中で一番外側を回るカリストも水星に匹敵する大きさがあります。

    エウロパはガリレオ衛星の中では最小で月よりも小さく、氷に覆われた衛星です。ただ、ところどころひび割れた地形が観察されており、氷の層の地では地熱活動によって水が存在しているのではないかと推測されています。生命が存在する可能性もある衛星です。

    いちばん内側の軌道を回っているイオは、黄色っぽく見えます。火山から吹き出した硫黄に覆われているためです。木星からの重力の影響をまともに受け、ぐわんぐわんと常にものすごい力で引っ張られているため火山噴火が絶えません。太陽系の中でもっと火山活動が活発な天体です。

    ところで木星はジュピターと呼ばれますが、これはローマ神話の主神であるJupiter(ユピテル、ジュピター)のことで、ギリシャ神話の主神ゼウスとも同一視されています。面白いことに、ガリレオ衛星の名前はすべてゼウスの愛人の名前がつけられています。

    エウロパはゼウスが白い雄牛に化けてさらってきたフェニキア王の娘です。雄牛の背に乗せてさらった土地をエウロパと名づけたというのがヨーロッパの語源です。神話によれば、このときにゼウスが化けた雄牛が、冬の星座で知られるおうし座になりました。イオはゼウスの神殿に仕えていた女性の名前。ゼウスが愛人にしたことでゼウスの妻ヘラの嫉妬を買い、白い雌牛に姿を変えさせられてしまいます。

    カリストは、北斗七星で有名なおおぐま座の由来になった伝説の女性です。カリストもゼウスの愛人にされ、ヘラの嫉妬を買って熊にさせられました

    ガニメデはみずがめ座のモデルになっている少年です。ゼウスがお酌をさせるためにさらってきたということで、みずがめ座の水瓶の中身は水ではなく酒と言われることもあります

    とんでもない神様ぶりが4つのガリレオ衛星に表されているようです。日によって位置を変え、お互いに隠し合ったり、暗くしたりする相互現象は、4人の愛人のかくれんぼのように見えなくもありません。

    このようにギリシャ神話のストーリーも合わせてガリレオ衛星を観察すると、さらに楽しいからもしれません。ぜひ梅雨の晴れ間をねらって望遠鏡を向けてみてください。惑星観察はしても衛星までは……という方も、ぜひ相互現象をきっかけに衛星観察にトライしていただければと思います。

     

    私がガイドしました!
    星空案内人
    廣瀬匠
    星空案内人 天文系ライター。株式会社アストロアーツで天文ニュースの編集などに携わる。天文学の歴史も研究していて、パリ第7大学で古代インドの天文学を 扱った論文で博士号を取得。星のソムリエ®の資格を持つ案内人でもある。アストロアーツより、宇宙の不思議に出会うモバイルアプリ「星空ナビ」iPhoneAndroid版無料公開中。

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