
これがベストの姿勢! ただ、こうして半日観察し、 救急車を呼ばれたことも(笑)
「相模湾には約2300種の貝がおり、ビーチコーミングで集められるのは600種ほどです」
そう話すのは、この道50年以上のベテラン・池田等さん。貝や魚類、海洋生物の骨や歯、ビーチグラスなど、さまざまな漂着物を拾うことができるが、その魅力は、集めることだけにとどまらないという。
「たとえばとうに絶滅した貝類、はたまたかつての暮らしを知る道具などが打ち上がるんです」
室町時代に作られた漁網の重りが、昨日までなかったはずの浜に、ある朝、突然打ち上がる。
「その一方、ここにはいない遥か南洋の貝類や森の生き物が川を経て漂着する。それらは時空を越えてやってくるんです」
浜が埋め立てられることで消える種があり、黒潮の流れが変わることで新たにやってくる命がある。「地元の海」という定点から歴史を掘り、国境を越えて来歴を探ってゆく――。
「ビーチコーミングには、学問や環境意識へとつながる種が秘められているんです」
ビーチコーミングのポイント
POINT1
岩場に挟まれた、遠浅の浜
POINT2
小潮の干潮時
POINT3
早朝
POINT4
台風など、季節風の直後
波打ち際でじっくり宝探し
所要時間 約30分~3時間

毎日、同じ浜を歩いても発見に満ちているのがビーチコーミングのおもしろさ。お宝を見逃さないよう、浜は往復して歩くことが重要。

小潮の干潮時は漂着物が帯状にまとまり、探しやすい。比重の同じものが1か所に集まる。

外国では通貨だったタカラガイ。湘南では45種が拾え、10種弱は幼生が南洋から黒潮で運ばれ定着。
拾ったお宝に思いを馳せる
所要時間 約60分
この日の収穫物!!

貝や流木、器の破片、食べかけのかぼちゃ、ハングル文字の容器。

石に張り付いているのはカツオノカンムリ(クラゲ)。

海は毎日 表情を カエルよ
ときに、ドキッとするお宝も……
入れ歯
メッセージボトル
馬の歯
ハマフグ
素焼きの漁網用重り
ダイバーズウォッチ
こんなものに出合えるかも!?
アサガオ
タカラガイ類

魚介類はもとより、古今の暮らしの縁を伝える漂着物。かつて、鎌倉の由比ヶ浜には牛や馬を手厚く葬る墓地があったという。
貝殻などを工作してみる
所要時間 約30分

地元で拾ったクルマガイを使ったネクタイピン。「ビーチコーミングによる漂着物を使うアーティストも多いですよ」
池田 等さん

まずは近所の浜を歩いてください。
湘南に生まれ育ち、自前のコレクションは10万点を超える、ビーチコーミング界の生き字引。『ビーチコーミング学』(東京書籍)ほか著書多数。
※構成/麻生弘毅 撮影/田渕睦深
(BE-PAL 2020年8月号より)