じつは、キャベツは宇土さんがトマトと同じくらいに愛する野菜。初夏から冬まで、なるべく切らさずに収穫できるように、こまめに種を播いて苗を育てている。今回はキャベツが野菜界でいかにして今の地位を確立していったのか、なぜ、球形なのか、愛にあふれる考察も披露。あわせて宇土さん流のおいしいキャベツの食べ方も紹介します!
写真は今年 2 回目のキャベツの収穫のようす。
キャベツは球形になることを選んだ

以前トマトの項で私の体の半分はトマトでできていると言ったけど残りの半分は間違いなくキャベツだろう。
植物は根、茎、葉からできている。葉っぱばかりに見えるキャベツだって例外ではなく根はもちろん茎もある。私たちが芯と呼んでいる堅い部分がキャベツの茎、キャベツはあの短い茎に何と50枚以上の葉っぱをつけるのである。できるだけたくさんの葉っぱをつけるためにキャベツは宙に向かって自由に葉っぱを伸ばすことをあきらめて葉っぱを巻いて球形になる道を選んだのである。
このようにキャベツは茎を極限まで短くして結球することによって野菜界にゆるぎない地位を獲得したといっても過言ではない。もし50枚もの葉をもつキャベツが球形でなかったら輸送用の段ボール箱には詰め込みにくい。家庭にあっては冷蔵庫の野菜室をひとりで占拠してほかの野菜の顰蹙を買い、冷蔵庫の厄介ものになってしまうだろう。キャベツの祖先に当たるケールは結球しない。それ故、ケールは未だに青汁の原料かせいぜい若い葉をサラダのアクセントに利用するくらいのマイナーな野菜にとどまっているのだろう。
コンパクト化のほかにも結球は味の面でも大いに貢献している。光が直接当たらない中心部の葉はキャベツ特有の苦みや硫黄臭が消えて食べやすい。そこへ行くと祖先のケールは・・・
収穫したばかりのキャベツのおいしい食べ方

みずみずしいという言葉はまさしくキャベツのためにある。大きく結球したキャベツは地面すれすれに収穫用ナイフの刃を差し入れて茎を切り取る。すると茎の切断面から透明な水がパーッとほとばしり出るのである。その様子は文字通りみずみずしい。
収穫したばかりのみずみずしいキャベツは外側の傷んだ葉を2~3枚はいでその下の柔らかそうな葉をこれまた2~3枚そっと掻き取る。水のしたたる葉っぱをせん切りにする。お気に入りのディナー皿にせん切りキャベツをこんもりと盛る。そして冷蔵庫あるいは調味料の棚からウスターソースかとんかつソースを探し出し、キャベツにたっぷりとかける。
ひたすら食べる。
2~3枚の葉ではひとり分でも足りないに違いないから再び葉をかきとってせん切りにする。黒色または濃茶色のソースをかけて食べる。みずみずしいキャベツはシンプルが一番。凝ったソースや手のこんだ煮込み料理はその後でいい。
キャベツは切らしてはならない

キャベツは初夏から冬までなるべく切らさずに収穫したいからこまめに種を播いて苗を育てている。菜園に苗を定植したらすぐに種を播いて次世代の苗を育てる。4月から種を播き始めて8月末まで苗をダラダラ定植すると1年に3回くらい収穫できる。今年も6月初めに行き場のないキャベツの苗を菜園の隅に投げやりに定植しておいたら先日、立派なキャベツが5玉ほどとれた。冷蔵庫には7月下旬に収穫したキャベツが6玉眠っている。菜園には8月中旬から9月にかけて30玉分の苗を定植した。多分、雪前には収穫できるだろう。

キャベツは新聞紙に包んで冷蔵庫で保管すると割合長期間保存できる。キャベツは毎日欠かさず食べている野菜のごった煮スープの中心素材だし、刻んだキャベツを少量の小麦粉と卵でまとめてお好み焼き風に焼いてもおいしい。でもキャベツと聞いて誰の頭にも真っ先に浮かぶのはロールキャベツにちがいない。ロールキャベツは世界各国で愛されているらしくドイツ風、ロシア風、トルコ風、ギリシャ風と魅力的なバージョンが多々存在する。葉っぱを巻くことで繁栄したキャベツがその葉っぱを今度は中身を巻く素材として私たちに提供してくれるとはえらい。
ロールキャベツ・トルコ風の作り方

材料
茹でたキャベツの葉っぱ6枚、牛かラムの挽肉200g、 玉葱みじん切り1/4個分、松の実大さじ1、米大さじ2、クミン大さじ1、カレー粉大さじ1、刻んだミントの葉ひとにぎり、塩と黒胡椒、調理用トマトたくさん(トマトの水煮缶詰で代用可)、オリーブ油、スープの素、ローズマリーひと枝、ベイリーフの葉3枚
作り方
1. キャベツの葉っぱは茹でて冷ましておく。
2. 挽肉にみじん切りの玉葱、松の実、吸水させて水気を切った米、クミン、カレー粉、刻んだミントの
葉を加えて混ぜる。塩・胡椒でしっかり味をととのえる。
3. キャベツの葉で肉を棒状に包む。
4. 煮込み鍋の底にキャベツの外葉を敷いて3を移し、隙間に皮を湯むきしたトマトを詰め込む。
5. 水+スープの素をひたひたに注いでローズマリーとベイリーフを加えて中火で20分程度煮る。
オリーブ油を回しかけて食卓へ。水切りしたヨーグルト(記載外)を添えるといっそう美味しい。
なぜわざわざトルコ風とうたったかというとトルコは国民ひとり当たりのトマトの消費量が世界でもトップクラスの国だからきっとロールキャベツもトマトで煮込むのではないかと推測したからである。
こうして煮たり焼いたり包んだりして消費するうちに大量のキャベツもいつの間にかちゃんと胃袋に納まってしまう。雪を払いのけながらかじかんだ手でキャベツを収穫するたびにこんなに頑張ってキャベツを栽培することもないのにと反省するのだが、春が来て種を播くころにはすっかり忘れてしまうのである。


*撮影/藤門弘




