
日本一笑える水族館の、おもしろくて頭にスッと入ってくる「解説パネル」に魅せられた!
BE-PAL本誌、2026年9月号の大特集内で僕は、愛知県蒲郡(がまごおり)市の竹島水族館、略して「タケスイ」をレポートしています。
竹島水族館
〒443-0031 愛知県蒲郡市竹島町1-6
題して「日本一笑える水族館」。これ、雑誌にありがちな誇張表現じゃないですよ。ほんとに笑えます。何がって、解説パネルが。学名や分布といった学術的な情報はばっさり省き、その生き物をもっと好きになってもらえるよう、担当飼育員が愛情たっぷりに、おもしろおかしく紹介しています。
実際、解説を読みながら観察していたら、僕自身たまらなく愛おしくなった魚がいます。それが、これ。
ジョーフィッシュ


ジョーフィッシュという魚。本当に一生懸命「工事」しているんです。口で石をくわえて。かわいすぎる~!
BE-PAL本誌、2026年9月号の誌面には、これらオモシロ解説の写真を複数載せていますが、字が小さくてちょっと読みにくいかも(あれでもかなりがんばってページを作ったんですが……)。
なので、誌面に載せきれなかった写真も含めて、「BE-PAL net」でたっぷりお伝えします!
シンプルに笑える解説
クランウェルツノガエル


本当に動きません(笑)。喉だけがピク、ピクと動いていました。
そういえば、僕が住んでいる東京・阿佐ヶ谷の居酒屋に、これに似た(もしくは同一の)カエルをカウンターの植木鉢で放し飼い(!)にしている店がありました。置物だと思って見ていたら、喉がピク、ピクと動いていてびっくり。あれは食品衛生的にOKだったのでしょうか?
ナヌカザメ

最後のオチにぷっと笑ってしまいました。
でも名前の由来だけが書かれた普通の解説だったら、「本当に7日生きるんじゃ?」って思ってしまいそう。……えっと、あの、無理ですよね?(まだかすかに「ワンチャンあるかも」と思ってしまう自分がいる……)
ヤマトホシヒトデ


がんばればいけそうな気もする…。
深海ナマコの1種

ポークフィッシュ


ヘダイ


ハナヒゲウツボ(子ども)


こう見ていると、名前をいじりまくっている解説が多いですね(笑)。でもたしかにキノコセトモノってなんだ?
味推し解説
お客さんからいちばん多い質問は、その魚がおいしいかどうかなんですって(日本ならではじゃないですかね 笑)。
でも小林館長が若手時代に「この魚はうまい」なんて手書き解説を貼ったら、上司から怒られたそうです。水族館は魚の生態を学ぶ場所だぞ、と。それに、こんな手書き解説はやめろ、貧しいローカル水族館がますますみすぼらしくなる、とも。
それでも小林さんは「お客さんに楽しんでもらわなければ意味がない」という信念を曲げず、上司を無視して手書き解説を貼り続けました。
入館者減少で廃館の危機にあったタケスイは、こうしたお客さん目線のおもしろ解説や、地元でとれる深海魚に特化した展示など、「お金をかけない大改革」を進めていきます。
さらに2015年には、34歳の若さで小林さんが館長に就任。改革路線はますます加速し、12万人まで落ち込んでいた年間入場者数が、近年ではなんと50万人超と、とてつもないV字回復を遂げたのです。
そのストーリーを頭に入れて見ると、下のツボダイの「味推し解説」は実に趣があります。
ツボダイ

「見る魚ではありません」と、水族館での展示を自ら否定している!
「美味」への熱量もちょっと尋常ではありません。そして注目したいのが、右下の文責者。「主任のコバヤシ」と。そう、小林館長が10年以上前の主任時代に書いた、改革初期の解説のようなのです。
そのあと「現館長」と書き足し、さらにその上に「スーパー」と……。ほんと、おもろい館長です。
ちなみに、展示する生き物は次々に入れ替わり、常連客も多いことから、解説パネルも頻繁に更新しているそうです。
オキトラギス


「おいしい、ただそれを伝えたくて」という言葉に、担当飼育員さんの前のめりっぷりがにじみ出ていますね。
ウツボ

たしかにウツボのたたきはうまいです!
僕はウツボをよく食べる紀南の出身で、さばくのが大変なことは知っていたけど、骨がこんなふうについているとは知りませんでした。やはり手書き解説は目に留まるし、心に残ります。
タカアシガニ

以前、グルメ誌の取材でタカアシガニを食べることになり、写真映えを狙って巨大サイズを選んだのですが、食べてみると、たしかに「あれ? おいしくない……」と。そっか。手ごろなサイズだったら違ったのね。
見入る解説
オモシロ解説は、流して見がちなお客さんの足を止め、生き物への興味を誘い、新たな視点を与えてくれます。
シテンヤッコ


言われてみれば……。
でもどれくらいこの魚と向き合えば、石原さ◯みに見えてくるんでしょうか。担当飼育員さんの深い愛を感じずにはいられません。
ヤギ(サンゴの仲間)


ひと目で「わあ、きれい!」と声が漏れる水槽ですが、。解説を読むと、ますます食い入るように見てしまいます。
「花畑」という比喩が興趣を添えますね。
カラッパ


こちらも「バレリーナ」というひと言が効いています。
カラッパはただでさえかわいいのに、その比喩ひとつで魅力倍増。飼育員さんの愛のあるまなざしが、見る側にもうつります。
ああ、だからこの水族館はおもしろいんだよな。
アマノガワテンジクダイ


ホシザメ


変態愛解説
タケスイのおもしろさは、展示物だけじゃありません。スタッフたちの生き物への愛や変態っぷり(マニアっぷり)が、館内に充満しているところがなんともおかしくて、いいんですよね。
解説でもしっかり自らの変態っぷりを伝えています。
ノソブランキウス・カプリビエンシス


ゼヌロレビアス・パタクソ


上の2匹、体長は1センチほどで、ぱっと見はメダカです。ひと言でいえば、地味……。海外のオークションで購入し、海外から取り寄せるほどの情熱が、なぜこの魚たちに向かうのか不思議で……あ、館長すみません!
サメ

エビスダイ


見つめてくる魚の瞳に愛嬌を感じ、癒されるって……。犬や猫と変わらないんですね。いやはや。
アカエソ


この魚も「瞳はキレイ」と。そ、そうですかね? どの魚も似たり寄ったりに見えますが……。毎日向き合っていると、見えてくるものが違うんですかね。
値段の解説
これも従来の水族館では考えられない内側暴露。でも味と同じか、それ以上に値段も気になるところではあります。
タケスイは貧乏な水族館だと、館長自身も隠しません。ただ、奇跡のV字回復以降はかなり余裕が出ているはずですけどね。それでも廃館危機を経験した過去のトラウマからか、お金の話がやけに多いんです。
ツルグエ

◯十万円!?
よく見ると「採集」というシールが。そう、タケスイのスタッフが釣ったか、地元の漁師さんから分けてもらったかのどちらかのようです(水族館は普通、業者から生き物を仕入れるんだそうですが、かつて経営危機に陥ったタケスイでは自前確保が基本。経営に余裕が出た今でも、オモシロ解説のネタになるからと、自分たちで採ったり、漁師さんたちに協力してもらったりしているそうです)。
次に見にいったとき、もしこのツルグエが水槽からいなくなっていたら、売りさばいて現金収入にした疑惑が残りますね(笑)。
ロイヤルデムワーゼル

ヨツバカワリギンチャク

やたらと「宝くじ」というワードが出てくるので、どれだけ好きなんだ! と突っ込みながらも、ほんのちょっと想像してしまいました。以前はやっぱり宝くじに頼りたくなるような経営状況だったのかな、と。
魚歴書
魚を擬人化し、その魚の立場になって書いた履歴書が、この魚歴書。話題を呼び、書籍化までされました。
2018年に出たその本『へんなおさかな 竹島水族館の魚歴書』を読んで、付箋までたくさん貼ったうえで現地に行ったんですが、本と同じ魚歴書は1枚もありませんでした。
飽きさせないように同じ魚でもどんどん内容を入れ替えているそうです。頻繁に通う常連さんが多い理由がよくわかりますね。
ミドリフサアンコウ


モヨウフグ

ゴンズイ

ヒイラギ

カサゴ


ウツボ

このとおり、おもしろさ優先で、学術的内容とは程遠いのですが(でもそれぞれの魚のキャラはしっかり頭に残りますよね)、勉強になる解説も中にはあります。
たとえば、これ。
↓
チンアナゴ


へえ、「正の走性」っていうのか。勉強になりました。
と思った次の瞬間、ちゃんと笑わせにきます。オチをつけなければ気が済まないようで(笑)。
最後に、館の外にはこんな案内が。



ほんと好きです、タケスイ。
取材、構成、文/石田ゆうすけ 撮影/安田健示(フォトレイド)
『BE-PAL』2026年9月号 小学館 『この夏、イチバン涼しい冒険へ! 水族館&博物館 漫遊術』大特集!





