キョウチクトウの毒ってどれくらい!?あなたが「本当に怖がるべき有毒生物」はコレだ! | アウトドアの知識 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2026.08.24

キョウチクトウの毒ってどれくらい!?あなたが「本当に怖がるべき有毒生物」はコレだ!

キョウチクトウの毒ってどれくらい!?あなたが「本当に怖がるべき有毒生物」はコレだ!
「危なくないものが怖がられて、本当に危ないものが気にされていない!」混沌とするネット情報を整理するべく、毒マスターたちが集結。有毒生物の回避術を徹底解説!
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海・山・川・キャンプで要注意!夏の危険生物 完全防御マニュアル

東大教授、危険生物ライターが緊急対談

左:植物学者 塚谷裕一さん

東京大学大学院理学系研究科教授。専門は発生生物学だが、熱帯アジアの菌寄生植物の現地調査などにも取り組む。植物や昆虫毒にやられた経験も豊富。著書は『根も葉もある植物のはなし』(山と溪谷社)、『森を食べる植物』(岩波書店)など多数。

右:生物ライター 平坂 寛さん

「生き物の本当の姿は自分自身の目で見て、触れて、確かめてみないとわからない」をモットーに活動。特に「毒の生物」に造詣が深く、ときに刺されてその本質に迫るYouTubeが大人気。著書は『刺された! 噛まれた! 危険・有毒虫図鑑』(カンゼン)など。

そもそも毒ってなんですか?

平坂:とにかく「毒は怖い!」というイメージが一般的に浸透していますが、塚谷先生、そもそも毒ってなんなのでしょう?
塚谷:たとえばソバアレルギーをもつ人にとって、蕎麦は死の危険さえある「毒」ですよね。大多数の人にとって毒ではないものも、ある人には毒になり得る。昆虫と植物の関係もそうで、植物は、食べられないために多かれ少なかれ毒をもっています。昆虫が決まった草しか食べないのは、特定の草の毒には耐えられるからで、その虫にとってはそれ以外の草の成分は「毒」ということです。
平坂:絶対的な「毒」があるわけではなく、受け手に悪影響を及ぼす物質が「毒」であると。
塚谷:はい。キャベツなどアブラナ科の独特の辛味はグルコシノレートという成分です。身を守るためにもっているわけですが、人間はあの風味を好む。むしろ完全に抜き去ってしまうとキャベツらしさが失われて、まずいと感じるでしょう。
平坂:へー! 人間は、虫にとっての「毒」成分を、むしろ「風味」として楽しんでいるわけですね。
塚谷:はい。毒の量も重要です。アカネズミの好物はドングリですが、ドングリばかり食べるとタンニンで死んでしまう。
平坂:好物なのに!?
塚谷:ドングリ以外の果実も食べていればタンニンが致死量に達しないように調整できますが、ドングリしかないと致死量を超えてしまうんです。

ナガミヒナゲシが話題なのは「陰謀論」⁉

平坂:今はナガミヒナゲシが毒草として話題になっています。
塚谷:みな口々に「危険だ!」と騒ぎ立てていますが、声を上げているのは、実際にフィールドに出ていない人ばかりのような気がしています。普通の草でかぶれない人なら、ナガミヒナゲシでもまず、かぶれません。茎を切って乳液を出して塗って検証してみましょう。何も起きませんよ。
平坂:今までも触ってかぶれたことはなかったのですが、この盛り上がりを先生はどう感じていらっしゃいますか?
塚谷:私は……陰謀論に似ていると思っています。
平坂:え! 陰謀論???
塚谷:「みんなは知らないけど、自分はこの草が危険だと知っている」という気持ちです。この世で暗躍する悪の組織の危険性を私だけは知っている。このきれいな花に毒があるのを私だけは知っている。陰謀論とナガミヒナゲシの毒性の話は同じ構造ですよね。そして、一度信じると誤りを正す情報を聞いても改めない点も似ています。
平坂:急に目につき始めた花に毒があるとなれば、話題性がある。メディアの報道も過剰になったのかもしれませんね。

キョウチクトウの枝のBBQ死亡例は都市伝説

塚谷:巷間での怖がられ方と実際の毒性に乖離がある点ではキョウチクトウも似ています。
平坂:ええ? でもキョウチクトウは毒がありますよね。
塚谷:はい。オレアンドリンという毒があり、生の葉を数枚食べたら命の危険があることは間違いありません。しかし、1975年にバーベキューの串に使って7人が死亡した、という情報は嘘でしょう。
平坂:有名な話なのに!
塚谷:調べましたが、信じるに足る一次情報はありませんでした。噂を辿ると1800年代に従軍中の兵士が串に使って死んだ事故が発端だとされますが、どこにも記録はありません。近年海外で行なわれた実証実験では、生の枝と乾いた枝のそれぞれをソーセージの串にして焼き、付着した毒の量を調べましたが、ごく微量で中毒を起こすにはまったく足りませんでした。研究チームは「串焼きによる中毒死の報告は、都市伝説の域を出ない」と結論づけています。

山菜の誤食は事故? それとも事件?

平坂:強い毒があると思い込んでいても、実際にはない場合は問題ないですが、その反対だと危ないですよね。
塚谷:私がずっと気になっているのが、山菜のギョウジャニンニクや野菜のニラと間違えて毒草を食べてしまう事故です。ギョウジャニンニクとニラには独特のニンニク臭があるから、普通においを嗅いだら識別できるはずなのですが……。
平坂:たしかに。でもご近所のいただきものだと「そういうものかな」と確かめずに食べてしまう人もいるかもしれません。
塚谷:よくあるのが、ギョウジャニンニクとしてもらったものが猛毒のイヌサフランだった死亡事故。もらった人は食べているのに、あげた人は食べていなかったという話を聞くと、事故というよりも事件なのでは……と考え込んでしまいます。

フィールドでは、うっかり触ってやられる毒に要注意

塚谷:食べて中毒を起こすものはそれほど怖くない。食べなければよいわけですから。困るのはそれと気づかずに触れる毒ですね。山で気になるのはイラクサ類。棘が毒を内蔵したアンプルのようになっていて、刺さると割れてヒスタミン系の毒が注入されます。
平坂:九州ではアンドンクラゲをイラと呼びます。そしてイラクサの英名はネトルで、クラゲはシーネトル。洋の東西に分かれてもイラクサとクラゲに同じ名が与えられている。ヒスタミン系の毒の症状が似ているからでしょうね。ネパールの村では村の周囲にイラクサを植えてあり、子供が悪さをするとイラクサの束で叩いていましたね。
塚谷:ネパールなら大きなテンナンショウがあったでしょう。向こうではあれを収穫して潰して食べる。もちろんシュウ酸カルシウムが入っているから、口内に触れたら結晶が刺さる。だから「ンアッ!」とひと息に飲み込むんです。すると大丈夫だという(笑)。
平坂:すごい! それは味を楽しむとかじゃなくて、ただエネルギー源として食べてるってことですね。先日、テレビのロケでクワズイモを齧ったんですが、口にしてから4日経った今でも、口内の炎症が続いています。シュウ酸カルシウムの症状は本当にひどいですね!

安全第一! 正しい毒の試し方

塚谷:平坂さんは積極的に毒を試していらっしゃいますが、どんな手順を踏んでいますか?
平坂:食べるものでも触れるものでも、最初からドカンとはいきませんね。食べるときはごく少量を舌に載せて様子を見る。強い刺激がなければごくごく少量を食べてみる、といった感じで増やしています。触るときも、生き物任せにはしないで、こちらで注入する毒の量を見極めています。
塚谷:その技術はどうやって?
平坂:実家が古本屋だったのですが、そこにあったサバイバル技術の教本や昭和の時代の図鑑を参考にしました。
塚谷:危ない目に遭ったことはありますか?
平坂:ネパールでヒマラヤオオミツバチに70か所以上刺されたときは危なかったですね。刺された30分後には嘔吐とめまいで動けなくなりました。5日後になんとか帰国したら、空港についた瞬間に気道がせばまって呼吸困難に。そのあとは気道の狭窄と蕁麻疹の発疹を交互にくり返しました。それ以降、エピペン(アドレナリン自己注射薬)を常時持ち歩いています。

この夏、最も怖がるべき有毒生物の頂点は?

塚谷:山菜との誤食が危険な植物は、食べようとしなければよいだけですから、ランキングから除外しましょう。
平坂:南西諸島の限られた地域でしか遭わないハブのようなものも省きましょうか。
塚谷:毒の強さ、遭遇の頻度を考えるとフィールドでいちばん気をつけるべき生物は……。
平坂:横綱はマムシですかね。保護色で気付きにくく、一瞬で咬まれて、症状も重たい。郊外から山奥まで生息しているし。大関は、奄美以南の海辺にいるのを踏んで死亡事故も起きているオニダルマオコゼは捨て難いけど、南方にしかいないから遭遇率が低い。その点でヒョウモンダコは関東周辺まで北上しています。オニヒトデもかなり痛いけど、アカエイほどじゃないから関脇ですね。ブユはほかよりだいぶ軽いですが、遭遇頻度が段違いに高いので関脇で!
塚谷:死なないが相当痛いのが関脇なら植物で食いこめるものはないかな……。症状が長引くハゼノキ、ヤマウルシ、イラクサは小結でしょうか。
平坂:同じくアンドンクラゲ、チャドクガ、ヌカカも痛痒さが長引いて嫌ですね。
塚谷:お、そろそろ2時間がすぎました。ナガミヒナゲシの乳液を付けた場所はどうなっているでしょうか……。
平坂:拭いてみたら……なんともないですね!
塚谷:ナガミヒナゲシには、いわれているような毒性はないんです。みなさんもAIの情報だけに惑わされないように!

ナガミヒナゲシ

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2000年代から分布を広げる地中海地方原産のケシ科の外来種。数年前から「茎から出る乳液でかぶれる」との情報があるが、ふたりとも乳液を塗って2時間後も変化はなかった。

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2時間後

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ナガミヒナゲシはかぶれません!

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キョウチクトウ

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乳液でかぶれるか輪切りにして半日貼ってみても、まるでなんともなし!

BBQ串には不向きのキョウチクトウの枝

「よく曲がり、乳液も出る枝を肉に刺すのは、普通は考えられない」と塚谷先生。

食】ギョウジャニンニク 

毒】イヌサフラン

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ギョウジャニンニクは、ニンニク風味のおいしい山菜。猛毒のイヌサフランも園芸で人気があるため、庭先で混ざると危険な状況になる。混植は避けたいが、揉んで嗅げば、ニンニク臭の有り無しで判別できる。

イラクサ

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知らずに短パンでイラクサの茂みに入ってしまうとひとたまりもない。アンドンクラゲもイラと呼ばれ、近い毒成分なのは興味深い。

アンドンクラゲ

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クワズイモ

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テンナンショウ属

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サトイモ科のクワズイモや、テンナンショウ属(写真はマムシグサ)の葉や茎にはシュウ酸カルシウムが含まれる。人間には毒。

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「強い毒の生物を選ぶのは簡単。しかし遭遇率の高さなどを加味するとなかなか難しい」。悩む毒マスター。

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思ったよりも難しい〜!

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ヒマラヤオオミツバチに襲われる平坂さん

ヒマラヤオオミツバチ

スズメバチ

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刺された症状を自ら検証!

YouTube「平坂寛」チャンネルを運営する平坂さん。数々の有毒生物に刺されてはその症状を解説する。向かって右がスズメバチに刺されて、腫れ上がった手!

アカエイ

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内湾の浅瀬での刺傷事故が多い。「刺すタイプの魚毒はヂガーッ! て感じの痛みが多いけど、アカエイはギィン! って感じ」

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オニヒトデ

オニダルマオコゼ

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「オニヒトデはちょっと刺すぶんにはオニダルマオコゼの10分の1くらいの痛み。全体重をかけて踏み抜かなければ、大丈夫……!」

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毒を知るって大切ですね

※構成/藤原祥弘 撮影/南阿沙美(人物)

(BE-PAL 2026年8月号より)

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