今回は東京都千代田区、東京駅の西側をめぐる「大手町の森GREEN WAY」です。
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23th ルート:大手町の森GREEN WAY
この連載のFILE.12「千鳥ヶ淵GREEN-WAY」で、皇居の外濠の北側をめぐりました。ただ、一般的に皇居と聞いてイメージするであろう、東京駅の西側エリアは未踏です。そこで、東京のど真ん中を攻略しようと思い立ったものの、東京駅はベタ過ぎるし…と考えて目に止まったのが大手町駅でした。なぜベタな東京駅を避けるのかと聞かれても、そういう性格だからとしか答えようがないのですが…。
ともかく、FILE.23は「大手町の森GREEN-WAY」を歩きます。
今回のターミナス(=トレイルの起点や終点となるアクセスポイント)は、大手町駅A5出入口。何度も来ている大手町駅ですが、5路線も乗り入れていて駅の構造が複雑なので、いつも乗り換えや出口探しに苦労します。

大手町
城郭(江戸城)の正門である大手門の前に位置していたことから付いた名称。全国の城下町に、大手町という地名が存在します。そういえば、僕が暮らす山形県の県庁所在地、山形市にも大手町があります。
東京の大手町は平川(神田川の旧称)の河口部分、かつてあった神田山の尾根の先に位置し、もともと芝崎村と呼ばれていたそうです。徳川家康の入府後、日比谷入江が埋め立てられてからは大手前と呼ばれ、大名屋敷が建ち並ぶようになります。その後、明治時代には官庁街に、第二次世界大戦後はオフィス街になりましました。

街の様相の変遷はありながら、大手町は江戸の昔から東京の中心地であり続けています。そんなビルの谷間を進んでいくと、大手町駅A5出入口から徒歩3分ほどの場所に「森」がありました。一瞬「え?」となりましたが、本当に大手町に森があります。

大手町の森
2023年8月に開業した大手町タワー。「森(しん)・呼吸できるまちづくり」を運営コンセプトに掲げ、敷地面積の3分の1を占める約3,600m²に「日本一の都市の森」をめざす人工林を整備しています。希少種を含む約300種もの植物が育っていて、野鳥や昆虫たちが訪れる場所になっているのだそうです。

大手町の森の整備後の主だった効果としては、以下のものがあるそうです。
- 都心において豊かな生態系を育む「皇居」からほど近い距離に「自然の森」をつくることで、多様な生き物が行き交う移動拠点となり、都市の生態系の充実を図ることができる。
- 木々が織りなす緑のシェードが直射日光を遮ることはもちろん、自然の森が持つ木々の蒸散作用や土壌の保水力によりクールスポットを形成。開発後は敷地内で1.7度、周辺敷地でも0.3度の平均気温の低下を観測。
- 屋根や人工地盤への降雨を植栽の灌水に使用し、水の循環利用を行っているほか、人工地盤上の土は雨水の一次貯留施設として、ゲリラ豪雨時の敷地外流出防止に寄与。
興味のある方は 「大手町の森」のサイトをご覧ください。
https://the-otemachi-tower.com/otemachi-forest
大手町の森へいざ一歩足を踏み入れると、いわゆるビルの中庭の植栽というより、裏山の雑木林の一部を切り取ったような雰囲気です。ただ、壁がガラス張りだったり、通路にはお洒落なベンチが置いてあったりと、意匠などは洗練されています。
森には水が流れ、他のエリアより空気が少し冷たい気さえしました。ベタな例えですが、まさに都会のオアシス。出発したてにも関わらず、ベンチに腰を落ち着け、深呼吸してしまいました。一瞬ここで終わろうかという考えも過ぎりましたが、気合を入れ直し、再び立ち上がって歩き始めます。

大手町の森(大手町タワー)から、丸の内仲通りを歩いていきます。丸の内仲通りには、ハイブランドのショップやレストラン、カフェなどが軒を連ねています。石畳の道で、街路樹などの整備も行き届いていて、とても気持ちよく歩くことができます。冬にはイルミネーションも施されるようです。

丸の内ストリートギャラリー
また、丸の内仲通りを歩いていると、いくつもの彫刻を目にしました。調べると、1972年より三菱地所株式会社と公益財団法人彫刻の森芸術文化財団が芸術性豊かな街づくりを目指して、1972年から取り組んでいるプロジェクト「丸の内ストリートギャラリー」だそうです。丸の内仲通りを中心に近代彫刻や世界で活躍する現代アーティストの作品を、 数年に一度入れ替えながら展示しているのだとか。
来た道を少し戻ってチェックし直したりしましたが、現在でも丸の内仲通りだけで15作品、周辺も含めると17作品がストリートに展示されています。大手町〜丸の内エリアを散策スポットとして捉えたことがなかったですが、こんなふうに街歩きを楽しめる場所だとは知りませんでした。


丸の内仲通りから馬場先門通りを右に曲がり、皇居の方に歩を進めます。日比谷通りまで進んだら、今度は左に曲がり、日比谷公園へ向かいます。右手に皇居のお掘が見えますが、このあたりは「日比谷濠」と呼ばれているそうです。
先に大手町の成り立ちを説明する中で、江戸時代に埋め立てられるまで周辺に日比谷入江が存在していたと記しました。この日比谷濠は、日比谷入江の名残だそうです。江戸湾(東京湾)の入江があったなんて、現在の日比谷からは想像もつきません。

日比谷濠のそばの歩道にも、柳などの並木が続いています。丸の内仲通りとはまた違った趣があり、とても気持ちよく歩くことができます。以前、FILE.3「半蔵門GREEN WAY」にも書きましたが、とにかく皇居周辺は空が広いです。特に今回は大手町〜丸の内エリアのビル街を歩いた後だけに、より一層、空が大きく開けていることの心地よさを実感しました。
実は、今回はビル街を耐え忍んで(?)通り抜けた先、皇居の近くや日比谷公園で緑を感じよう、GREEN WAYを楽しもうと目論んでいました。でも、意外にも緑豊かな大手町の森や散策に最適な丸の内仲通りを歩くことができました。ということで、「大手町の森GREEN-WAY」は、ここでいったん終了。日比谷公園については、次回に持ち越しとします。
■今回歩いたルートのデータ
|距離約1.8km
|累積標高差約3m
今回のコースを歩いた様子は動画でもご覧いただけます。
●大手町の森GREEN-WAY








