コスモスやソバなど、秋の草花とコラボするノビタキの可憐な姿を撮影してみた! | 自然観察・昆虫 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.10.21

    コスモスやソバなど、秋の草花とコラボするノビタキの可憐な姿を撮影してみた!

    コスモスやソバなど、秋の草花とコラボするノビタキの可憐な姿を撮影してみた!
    鳥たちにとって秋は渡りの季節です。街や里山、田んぼや河原は人知れず渡っていく多くの渡り鳥の交差点。私はこの時期のノビタキほど興味を惹かれる鳥はいません。今回は、筆者が毎年その姿を追う小さくも逞しい渡りの時期のノビタキの可憐さについて、今年撮影できた写真も交えながらご紹介しましょう。

    先に夏の霧ヶ峰の投稿でご紹介しましたが、ノビタキはスズメ目ヒタキ科の小鳥で、日本に夏鳥として飛来し、おもに本州中部以北の高原などで繁殖、冬季は越冬地の東南アジア方面に渡って行きます。

    日本では夏鳥としてお馴染みのノビタキ。筆者が渡りの季節に最も楽しみにしている野鳥だ。

    初めての出会いは近所の畑

    秋の渡りの途中のノビタキに初めて会ったのは、ちょうど10年前。黄金色の稲穂が揺れる田んぼの脇の畑。「ミルクティー色」とも形容されるスズメくらいの大きさの鳥が、畑を仕切る柵から地面に下りてはコオロギか何かを咥えて柵に上がって飲み込み、再び地面におりて……という動きを繰り返していました。地味な雰囲気ながら凛とした表情とどことなく強い意志を感じるその瞳になぜか強く惹かれたのです。

    初めてノビタキにカメラを向けた時の実際の画像。当初から独特の存在感を感じていた。

    ちなみに、日本において夏鳥である彼らは、秋から翌春まで越冬地の南国にいて会えません。渡りの時期以外に彼らに会うには繁殖地の高原などを訪れる必要があります。ただ、たとえば首都圏で言えば霧ヶ峰や富士山麓などの高原は東京からは遠く、気軽に何度も出かける訳にもいきません。

    でも、その後ノビタキを撮るようになってからは、子育てを終えて移動を始めたノビタキたちは比較的私たちの身近な場所を巡りながら越冬地へ向かって移動していくことがわかったのです。

    初めて撮った「コスノビ」の写真。他にもカメラマンが複数いたせいか、ノビタキは緊張した面持ちだ。

    きっかけは数年前に野鳥好きの知人に教えてもらった埼玉県内のとあるコスモス畑。インスタグラムでノビタキがコスモスの花先に止まっている写真を見ました。ピンクや白いコスモスの花とノビタキ。こんな可憐な組み合わせがあるだろうか、とその写真に釘付けになりました。

    ノビタキは花とのコラボ撮影が楽しめる鳥

    ノビタキ好きのバーダーの間ではノビタキとコスモスをコラボした写真を「コスノビ」と呼んでいます。以前、セッカという野鳥が菜の花や麦の穂に止まった写真を紹介しましたが、ノビタキもその体重(10〜14g)の軽さゆえコスモスの細い花先などに止まることができます。

    というわけで、ノビタキは花とのコラボ撮影が楽しめる鳥なのです。

    毎年出かけている、山中にあるコスモス畑のノビタキ。場所柄、霧とのコラボも楽しめる。

    コスモスの花といえば、秋の風物詩。毎年各地で観光用のコスモス畑が設けられます。なので、車で道を走っていたりテレビに見知らぬコスモス畑が映ったりすると、ノビタキ が来ているのでは、とソワソワしてしまいます。

    ところで、ノビタキはなぜコスモス畑などにやってくるのでしょうか。ノビタキを観察しているとわかりますが、彼らはコスモスに付く蛾(ヨトウガなど)の幼虫や根本に潜むコオロギなどを採餌しているのです。渡りを控え、スタミナ&カロリー補給の真っ最中、といったところでしょうか。

    河川敷のコスモス畑には観光客の姿も。この時期にコスモス畑を訪れる機会があったら、この小さな野鳥の姿を探してみてほしい。

    コスモス、ソバ、そして田んぼ。秋はノビタキ劇場

    ノビタキは移動の途中、コスモスだけでなく、ソバの花やヒマワリ、イネ(コメ)、セイタカアワダチソウ、バラなど、日本の秋を彩るさまざまな植物と「コラボ」しながら(実際は栄養補給をしながら)旅を続けていることが判りました。

    「美しい野鳥の写真」ではなく、「生き生きとした野鳥が写っている風景」を撮ることを信条とする自分にとって、まさに新しいテーマを見つけたヨロコビを噛み締めた瞬間でした。まあ、野鳥好きにとってはとうの昔からお馴染みの場面だったのでしょうが。

    ノビタキはソバ畑でもお馴染み。こうして周囲よりちょこんと飛び出したソバの花に止まることが多い。群馬県のソバ畑にて。

    ノビタキが訪れるそうした「花畑」の花の開花期間は限られてはいるものの、わずか一日ということはありません。それでも咲き加減のピークはあり、せっかくなら花のきれいなタイミングでノビタキたちを撮影したいものです。

    加えて、彼らの移動のタイミングもあります。渡り鳥は夜間に移動することが多いと言われ、前日までいたノビタキ たちが翌日は姿を消していた、なんてこともあります。

    夕方になるとじっと周囲を見回している時間が増える。当然、シャッターチャンスも多くなる。

    このように、花のピークとノビタキの移動のタイミングが一致して初めて、美しい「コスノビ」や「ソバノビ」が撮れるのです。この時期は毎日の様にどこかで撮影チャンスが展開している訳で、仕事中も気が気ではありません。

    こちらは長野県内の赤ソバ畑のノビタキ。どんな色の花でもノビタキの存在感が薄れることはない。
    赤ソバは高嶺ルビーというソバの品種で、今では栽培する農家も少ないという。

    高原で子育てを終えたノビタキは例年9月半ばには移動を始めるようです。その後は私の想像ですが、彼らは太平洋へ向かって大きな河川の河原に沿って南下しているように思います。途中、スタミナ補給のために山里のソバ畑やコスモス畑に立ち寄り、私たち「ノビタキウォッチャー」との奇跡の出合い、となるのです。

    ノビタキたちが筆者の地元近くの田んぼにやってくるのは9月の終わりから10月の初め。ちょうど稲刈りの時期にあたり、黄金色をあしらった「コメノビ」の撮影が楽しめる。
    今年はノビタキの到着が早かったのでヒガンバナとの嬉しいコラボも実現した。
    田んぼの脇の帰化植物、セイタカアワダチソウの黄色い花先に止まった換羽中のオス。

    謎めいた渡り鳥としての姿がノビタキの魅力

    田んぼの杭に止まりアキアカネを見つめるノビタキ。

    夏の霧ヶ峰のノビタキの写真をご覧になって気付かれた方も多いと思いますが、オスのノビタキは夏と冬で見た目が大きく異なります。オスの夏羽は真っ黒な頭や背中が特徴的で、冬羽と比べると違う種のように見えます。他の種と同様に、繁殖期以外のオスは目立たない外見となって外敵に襲われるリスクを抑えているとされているのです。

    冬羽に換羽中のノビタキのオス。顔の黒さが夏羽の名残を物語る。

    北海道大学、森林研究・整備機構などの研究機関が共同で行った調査では、北海道のノビタキが越冬地のインドシナ半島に渡る際、本州を南下せずにいったん日本海を越えロシア経由で移動していたことがわかりました。

    あの小さな身体で、どんな意志をもって旅を続けているのか。毎年同じルートを渡るのか、旅は独りで? 家族で? 数日間滞在したコスモス畑を発つときのきっかけは? 

    ノビタキに聞いてみたいことは山ほどありますが、そんなことを想像する楽しみを味わいつつ、今シーズンも撮影結果を振り返る至福のひとときを過ごしています。

    中村雅和さん

    野鳥好き編集者

    幼少期から生き物や鉄道に親しむ。プロラボ、住宅地図会社の営業マン、編集プロダクション、バス運転士、自然保護団体職員などを経てフリーの編集者に。現在はライターの仕事をしながら、バードウォッチング専門店 店長として勤務。


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