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    2025.10.29

    台湾・台北でハイキングにも最高。のどかな大草原「擎天崗(けいてんこう)」って、ご存じですか?

    台湾・台北でハイキングにも最高。のどかな大草原「擎天崗(けいてんこう)」って、ご存じですか?
    どこまでも広がる草原の中、ゆっくりと歩みを進めている水牛の親子。おだやかな風が吹く中、一心不乱に草を食んでいる水牛もいます。絵画のような美しい光景が広がるここは、そう、阿蘇…ではありません。

    なんとこちら、タピオカミルクティーや小籠包や夜市などで有名な…台湾の政治と経済の中心地、台北です。

    台湾のイメージとはかけ離れた、のどかな風景。実は台北の交通の要衝である台北駅から、バスでわずか1時間程度の近距離にあります。
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    もともとは大規模牧場だった

    ここは台北の北部にある「擎天崗(けいてんこう/チンティエンガン)」。擎天崗は、火山活動によって形成された溶岩台地で、台北市街地から最も近い国定公園である「陽明山国家公園」の一部です。溶岩流が山と山との間の谷を埋めたため、このような平坦な地形となったそう。

    まっすぐに続く道。

    日本統治時代の1934年、日本はここに大嶺峙(だいれいじ/ダーリンズィー)牧場を開き、農耕用の水牛を預かっていました。その範囲は擎天崗だけでなく、周辺地域にも広がっていたそうです。当時の総敷地面積はなんと2000ヘクタール。最盛期の牛の数は1600頭で、第三牧場まであったのだとか。

    戦後、中国大陸から国民党がやってきて、国民党政権が牧場を管理することになり、1952年には規模を368ヘクタールに縮小した「陽明山牧場」が設けられました。この牧場は当初、地元の農業協同組合などの6つの団体が共同で管理していましたが、1967年からは台北市農業協同組合が一括で管理することとなります。

    牧場の役割は、近隣で暮らす人々が農耕用として養っている水牛を農閑期に世話すること。しかし時代の流れとともに水牛が機械に取って代わられるようになり、農業面積が縮小していったことで、働き手としての役目を終える水牛が増えていきました。農繁期になっても引き取られない水牛が増えた結果、台北市農業協同組合は2003年に水牛の預かりを取りやめることになります。その後、帰る場所を失った水牛たちは野生化し、ここ擎天崗で新たな生活を送るようになったそうです。

    「人牛一体」の境地へようこそ

    台北駅からバスで1時間程度。どこまでも緑が広がる擎天崗に到着です。バス停の名前もそのまま「擎天崗」。バス停からハイキングコースの入り口までは徒歩5分程度。標高約800メートルの高原にさわやかな風が吹く中、さっそくハイキングコースへ。コース序盤は、歩道と牧草地の間に牛よけの柵があり、牛たちが思い思いに暮らしている様子を眺めることができます。

    かなり近くで見ることができます。

    コース入り口から10分ほど歩いたところに、かつては牛舎として使われていた小屋を発見。「教育センター」という名称だそうですが、これまでの擎天崗の歴史を簡単に紹介した写真が数枚あるだけ…。教育センター…?

    かつての牛舎、教育センター。
    中には写真が何枚か。

    とはいえ、日差しや雨風を防げるのは助かります。ここで水分補給をしたら、さらにその先の「本格的」なハイキングコースに向かいます。何が「本格的」かというと、ここから先は、人と牛の境界線がなくなるのです。「人馬一体」ならぬ「人牛一体」の境地。これまで身を守ってくれていた柵が消え、柵の代替品として、「牛が襲ってきたらこれに隠れてね!」と注意書きのある杭がところどころに配置されています。

    これで…防げるのだろうか…?

    柵も杭も、使う機会がないに越したことはない。突進されませんように!と、祈りながら牧草地の中に足を踏み入れます。

    ここから先、自分の身は自分で守りましょう。

    ハイキングコースは、草原を一周する全長2.4kmの「擎天崗環形歩道」として整備されています。本格的なハイキングコースに突入してから約10分。標高796mの高台に到着しました。

    来し方と行く末が見渡せます。

    見渡す限り、緑、緑、緑、たまに牛。標高約800mなので台北市街地よりも4~5℃ほど気温が低く、吹き抜ける風も心地よい。青々とした草原の向こうに連なる山々の眺めを楽しみながら、坂を下りたり登ったりを繰り返していたら、距離以上の達成感が味わえました。

    小学生の息子とともにゆっくりと歩道を歩くこと、約1時間。歩道の入り口に戻ってきてからは、傍にある売店で水分と糖分を補給。売店で売られているのは、台湾のフルーツをふんだんに使ったアイスバー。ハイキング後の心地よい疲労感を優しく包み込み、燦燦と降り注ぐ太陽に照らされた体をクールダウンしてくれます。このように、歩道の入口には売店があったり、整備されたトイレがあったりと、観光地としても抜かりがありません。

    入り口付近の売店。小規模ですが、わりといろいろ手に入ります。
    さわやかに体に染みわたるフルーツアイス。

    こちらはハイキングコースの途中の風景。環状歩道は一周2.4kmですが、それでは物足りない!という場合は、環状歩道の途中から山の奥に向かうコースに挑むことも可能です。なんといってもここは、敷地面積11455ヘクタールを誇る陽明山国家公園の一角なのですから。もっと歩きたいと思えば、いくらでも道はあります。

    手前に進めば環状歩道、奥に進めば冒険のはじまり。

    実は無限大!陽明山国家公園の楽しみ方

    今回はハイキングを目的として陽明山国家公園にある「擎天崗」を訪ねましたが、実は、陽明山国家公園の楽しみ方は無限大。3月~4月はカラー(結婚式のブーケとして人気の白い花)が咲き誇り、5月~6月はあじさいが見頃を迎え、10月には擎天崗の草原一面にすすきの海が広がります。

    農園によってはカラー摘み取り可能なところも。(出典:臺北旅遊網)

    陽明山国家公園のすすきは、穂が赤みを帯びているのが特徴。硫黄ガスなどの火山性ガスと強酸性の土壌の影響で、本来白いすすきの穂が赤く染まるんだとか。そして亜熱帯気候なのに、冬には山肌が一面の雪で覆われることもあります。

    四季折々の魅力が楽しめる擎天崗、そして陽明山国家公園。台北の新たな一面を探しに、ぜひ訪れてみては。

    <交通アクセス>
    MRT台北駅からMRTで8分、MRT剣潭(けんたん/ジエンタン)駅でバスに乗り換え。MRT剣潭駅からバス「小15」に乗り約45分、「擎天崗」または「冷水坑」で下車。

    市川美奈子さん

    台湾在住ライター

    静岡県出身。一児の母。民間企業を経て2013年から行政機関で勤務、2023年4月から台湾に駐在。夫を日本に残し、「ワーママ駐在員」として小学生の息子と共に台湾で暮らしている。旅行好き。離島を含む台湾各地を旅して、その土地の歴史と文化とアウトドアを楽しんでいる。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員

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