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ようやく秋の訪れを感じ、ハイキングを楽しめる時期がやってきましたね。福島県・栃木県・群馬県・新潟県にまたがる「尾瀬」も紅葉が見頃を迎えています。
今回は秋の尾瀬を楽しみに、「鳩待峠から出発し、山ノ鼻地区経由で牛首分岐へ向かうぞ!」と意気込んだものの、あいにくの雨予報。登山初心者が雨の尾瀬ハイクで気をつけなければいけないことを、尾瀬登山ガイドの館山美和さんにうかがいました。ハイキングの拠点として快適な新しいホテルもご紹介します。
ハイキング予定日が雨だったら?尾瀬ハイクの雨対策

鳩待峠へのアクセスは、車で関越自動車道「沼田IC」より戸倉の駐車場まで約1時間。交通対策でマイカーは直接鳩待峠に行くことができないため、戸倉からは乗合バスもしくは乗合タクシーに乗って鳩待峠に向かいます。公共交通機関で行く場合、「上毛高原駅」もしくは「沼田駅」からバスで行くことができます。東京から上越新幹線で行ける「上毛高原駅」から戸倉までは、バスで約1時間40分です。

筆者のように、もしハイキング当日が雨予報だったら悩むのが、「行くかどうか」。判断基準としては、まず大雨警報や雷注意報などが発令されたら、中止しましょう。小雨であれば、尾瀬はコースを選べば雨でも歩けます。鳩待峠⇔牛首分岐はほとんど木道が整備されているので、滑らないトレッキングシューズなど雨対策をすれば、山初心者でも歩けるコースです。

館山さんによると、雨の準備として何より大切なのが「レインウェア」。尾瀬では傘を差している人も見かけましたが、やはり片手が塞がってしまうためリスクが高くなり、かつ周囲の人にあたってしまうこともあります。もし急遽必要になった時はワークマンなどでリーズナブルに手に入れるか、鳩待峠の「はとまちベース Cafe & Shop by 星野リゾート」では簡易的なレインコート&レインパンツも販売しています。

今回は鳩待峠にオープンした「LUCY尾瀬鳩待 by 星野リゾート」に前日入りし、早朝6:20頃に出発!実は序盤が1番大変で、300mほど石段を下っていきます。写真の通り、石はツルツルで滑りやすくなっていたので、慎重に歩きました。この石段だけ、ハイキングというよりトレッキングに近いイメージです。ちなみに尾瀬はすり鉢状になっていて、行きが下り、帰りが上りになります。

館山さんに「雨の中で歩くコツ」を聞くと、「前屈みになり、頭を下に向ける」のが大切だそう!どうしても下りは足から着地して後ろに重心がいきがちですが、この歩き方では後ろにツルんと滑って転ぶリスクが高まります。頭を下にして歩くと安定し、ツルツルの石段や木も問題ありませんでした。

鳩待峠から山ノ鼻地区へは約3.3kmで、行きの目安は約1時間、帰りの目安は約1時間半。石段を過ぎると木道が続き、景色を見渡す余裕もでてきます。10月初旬には、秋を告げるように「漆」などが一足早く紅葉していました。館山さんによると、尾瀬の紅葉の見頃は10月10日前後。この森の緑が赤や黄色に染まる姿は、とても美しいでしょうね……! ちなみにこの区間内はクマの生息地なので、必ず熊鈴を付けて歩きましょう。

紅葉とともに、秋の尾瀬の魅力が「キノコ」! 秋になるとあちらこちらにヒョコッとキノコが生えていて、この日は「タマゴタケ」や「ホコリタケ」など5種類以上見つけることができました。木道すぐ近くに立派なキノコが生えているのは、採集が禁止されている国立公園ならではかもしれませんね。

そして3.3km歩き、山ノ鼻地区に到着!ここには「尾瀬 山の鼻ビジターセンター」があり、秋に見られる花や紅葉についての情報を詳しく展示しています。近くにトイレがあり、1回100円(現金もしくはPayPay)です。

山ノ鼻地区で休憩した後は、約2.2km歩いて牛首分岐へ。山ノ鼻地区⇔牛首分岐は行き・帰りともに約40分が目安です。
ここはまさに、みなさんのイメージする尾瀬の湿原! 黄金色に輝く草紅葉は、秋ならではの絶景です。ちなみに館山さんによると、湿原がグラデーションのように見えるのは、尾瀬の地形の高低差に合わせて違う植物が生息しているのが理由だそうですよ。美しい……!

そして尾瀬ハイク中、ずっと雨が降っていたのに、湿原に着いた瞬間に青空が……! 池塘に浮かぶ紅葉したヒツジグサ、そしてリフレクションする空がとても美しく、感動的な風景でした。山の天気は変わりやすいとは良く言いますが、館山さんも「天候の変化を楽しめるのが、雨の日の魅力です」と話してくれました。

さらに、諦めていた尾瀬の名所「逆さ燧」もこの通り。まさか、雨の日にこんな景色が見られるとは! 池塘に映る燧ケ岳は5分も経たないうちに消えてしまいましたが、一瞬の絶景を見られて本当にうれしかったです。行く前は「雨予報か……」と正直気分が下がっていましたが、ちゃんと雨対策をして、行ってよかった!
その後無事、牛首分岐に到着。牛首分岐から鳩待峠までの帰りは雨がより強くなり、写真を撮るのも難しいほどでしたが、休憩を挟みながら12:00前には戻ってこれました。この日はゆっくり撮影も行ない、鳩待峠⇔牛首分岐のハイキングでかかった時間は往復約5.5時間。その人の歩く速度によって変化しますが、もしほとんど休憩なしの場合は往復約4時間弱が目安で、お昼前に出発しても可能なコースですよ。

戻ってきたら、「はとまちベース Cafe & Shop」でランチ休憩。ここはLUCY尾瀬鳩待宿泊者だけではなく誰でも利用できる場所で、「湯葉きのこあんかけ蕎麦」や「花豆ソフトクリーム」などを提供しています。ほっこり温まる「湯葉きのこあんかけ蕎麦」は十割蕎麦で、きのこや出汁の旨みを感じる味わい。尾瀬ハイクのご褒美にぴったりのメニューです。

「はとまちベース Cafe & Shop」には尾瀬ハイクの記念に買いたいお土産や登山用品も充実。特にマグネットやTシャツなど、LUCY尾瀬鳩待のオリジナルグッズは完売品も出るほど人気です。そのほか売上金の一部が尾瀬の木道整備に充てられる「手ぬぐい 尾瀬歩荷の世界(3,080円)」もぜひチェックしてみてくださいね。
・はとまちベース Cafe & Shop by 星野リゾート
住所:群馬県利根郡片品村大字戸倉字中原山898番18
休館:2025年11月4日~2026年4月中旬(予定)
HP:https://hoshinoresorts.com/ja/brands/daytrip/sp/hatomachibase/
きれいで、快適に過ごせる山ホテル! 新しい「LUCY尾瀬鳩待 by 星野リゾート」

尾瀬ハイクの拠点として今回宿泊した「LUCY尾瀬鳩待」は、2025年9月1日(月)に開業した、星野リゾートの新ブランドの施設。「心揺さぶる山ホテル」をコンセプトに、山に慣れてる人も、慣れてない人も、みんなが快適に過ごせるような空間となっています。
尾瀬は古き良き山小屋文化があり、昭和の空気が流れるレトロなエリアでしたが、「LUCY尾瀬鳩待」が誕生したことで変化が。尾瀬を愛しているみなさんも、笑顔で「尾瀬じゃないみたい。おしゃれだね」と声をかけてくれるそうです。尾瀬は有名ながら入山者数が10年ほど前と比べると減少傾向にあり、新たな山ホテルがオープンしたことで地域活性化にも繋がっています。
福井さん「この場所はお手軽なコースから、至仏山や燧ヶ岳といった標高の高い山に登るコースまでさまざまで、自然というものを色々な形で楽しめます。LUCY尾瀬鳩待はその入り口にあるので、自分の好きなスタイルでぜひお過ごしください」

その言葉通り、LUCY尾瀬鳩待での過ごし方は十人十色。客室は「ドミトリー」、「ツインルーム」、「フォースルーム」の3タイプで、「ツインルーム」、「フォースルーム」は完全にドアを閉じてプライベート感のある滞在ができます。これならちょっと山小屋に苦手意識のある家族や子どもと行く時も安心! そして床に布団……ではなくマットレスで寝心地が良いのもポイント。アメニティはバスタオルと歯ブラシのみ置いてあります。

男女別の洗面所・シャワー・トイレは共同で、シャワーは各3つ。シャンプー・トリートメント・ボディソープは用意されています。シャワーは混むかなと思っていたものの、夕食直後など混む時間帯を避けるなど工夫すると、スムーズに使用できました。

夕食付きの場合、17:00〜から「はとまちベース Cafe & Shop」で提供開始されます。メニューは、疲れた身体に染みわたる「LUCY豚汁ご膳」。群馬の食文化である豚肉・こんにゃく・味噌を使った「豚汁」をメインに、鯖の焼き浸しや半熟卵の揚げ出しなどがセットになっています。濃いめの味噌で味つけられた豚汁は、片品ブリューイングの爽やかなSession IPA「空高く青く(900円)」を合わせるのがおすすめ!群馬県の七味唐辛子をかけて食べるのもおいしかったです。

「小腹が減ったなぁ」という時も、24時間営業のショップがあるから安心です。ホテル内にある「Food & Drink Station」ではお菓子・行動食・カップ麺・コーヒー・お酒などが販売していて、いつでも購入可能。トレッキングポールや双眼鏡は、1日500円でレンタルしています。「彩りいなり寿司(800円)」や「ドーナツ(250円)」は朝食にも一押し!

尾瀬ハイクに行く前に宿泊するなら、ぜひ体験して欲しいのが「オリジナル熊鈴作り(1,200円)」。カラビナと熊鈴をパラコードで繋げ、パラコードを平編みしていくアクティビティです。尾瀬はツキノワグマの生息地で、鳩待峠から尾瀬の湿地へと向かう道でもクマが出没するエリアを通るので、熊鈴は必須! カラビナとパラコードのカラーを選べるので、自分の服装に合わせるのもいいですね。

雨の日の尾瀬ハイク後にうれしかったのが「乾燥室」。濡れたレインウェアやリュックを置いて乾燥できます。また、無料のロッカーもあるので、ハイキング中に荷物を置けるのがとても便利。宿泊者限定のサービスです。
雨でも美しい秋の景色を見ることができた、今回の尾瀬ハイク。雨に濡れた植物たちはキラキラしていて、雨ならではのハイキングの魅力を知れました。おさらいですが、館山さんによると今年は10月10日前後が、紅葉の見ごろとなる予定です。ちなみにLUCY尾瀬鳩待 by 星野リゾートの今期営業は2025年10月25日までで、2026年は4月上旬~中旬から営業開始予定。2026年度分の予約開始は10月末ごろの予定です。黄金色に輝く秋の尾瀬で、ハイキングを楽しんでくださいね。
・LUCY尾瀬鳩待 by 星野リゾート
住所:群馬県利根郡片品村大字戸倉字中原山898番14
HP:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/lucyozehatomachi/