
WIND from ONTARIO~森の海、水の島~
#15 ソロ・カヌーキャンプのススメ――
by Tomoki Onishi
撮影・文/尾西知樹
トロント在住のフォトグラファー、マルチメディア・クリエイター、カヌーイストでサウナー。オンタリオ・ハイランド観光局、Ontario Outdoor Adventuresのクリエイティブ・ディレクターを務める。カナダの大自然の中での体験とクリエイティブを融合させたユニット magichours.caを主宰。

右に3漕ぎ、左に3漕ぎとリズミカルにパドルを交互に持ち替えて、細長〜い湖をカヌーでゆく。湖の北端で、泥濘んだ湿地帯の水路をポルタージュ・トレイル(陸をカヌーを担いで移動する)の入り口を目指す。
泥で重いパドル、体を弾ませ進んでいく。カヌーから陸に上がる際、泥にズボッとひざ上まで足がはまった。文字どおりのドロドロになり、抜け出すのに一苦労、やれやれ……。
ソロ・カヌーキャンプの2日目。THE TWO MILERと呼ばれる、3㎞超の長距離ポルタージュへ。岩場や泥濘、林間のトレイルをカヌーや重い荷物を担いで2往復する。疲労困憊の極限状態で、辿り着いた湖水が聖水のように思える瞬間。全身汗みずくで、湖にバシャバシャと入っていって、そのままダイブ。最高の水風呂でととのって、深呼吸。泥もきれいに落ちた……。
ゆるやかな流れのある水路に入り、上流を目指す。やがて行く手を滝に阻まれ、迂回するためのポルタージュへ。崖のルートを荷物を担いで登る。登りきった場所で力尽き、キャンプへ。
テントを張り、肉を焼いて、樹液の香り残る濾過水でウイスキーを割って、乾杯。見上げれば、ご褒美のような満天の星。滝の音が耳に心地よい。お腹が満たされ、スイッチ切れ。泥のような深い眠りがやってきた……。
ソロ・キャンパーのみなさん、カヌー・ソロキャンいかがでしょうか?

進路の先に滝が! 下流から滝を迂回するためのポルタージュへ。崖の上に、荷物やカヌーを担いで登る。

3㎞を超えるポルタージュの途中、倒木が救世主のように見える。崩れるようにカヌーを立てかけ、息を整える。

カヌーを漕いで漕いで辿り着いたキャンプサイトは、人影がまったくない。ここはソロ・キャンパーの聖地だ!
動画でも観られます!

(BE-PAL 2025年9月号より)