【我が人生の刃物回顧録】その① 原点は子供のころの肥後守

2020.03.24 (閲覧数) 779

 我が人生の上での刃物にまつわる最初の思い出は、半世紀はおろか60年程も前になるが10円玉をいくつか握りしめて近所の文具店で求めた肥後守である。
 思えば、鉛筆やノートよりも自分で先に買った商品がナイフであった。
 そうして手に入れた宝物の肥後守で、森や河原に行っては小枝や竹を切りまくった思い出があるが、それによってできた作品よりもむしろ生傷の方が多かった?のではなかろうか。

 ナイフ遊びは実に面白かったので、傷を作っては治し、また削って傷を作りの繰り返しの幼少時代であったような気がする。
 こいつの良いところは、一人でも面白く遊べるし、友人と競って遊ぶのもまた良しで、結構創造的な遊びでもあった。弓や矢も作ることが出来たし、隠れ家(基地と呼んだ)の建築?にも重宝したものである。初歩の砥ぎもこいつで覚えたものだ。

 しばらく時が経って、刃物への思いやあこがれに似た気持ちは年齢と共に段々と強くなることはあっても、衰える方向へは行くことが無かった。カネノコの鋼材を父親にグラインダーで削ってもらって小刀を拵えたが、これはスローイングナイフにもなったのである。
 夏休みになると母方の実家の祖父の家に入り浸った。この家は農業と林業の兼業であり、山仕事や切り出したクヌギや樫などでの炭焼きもしていた。だから身の回りの刃物には困らないどころか、元来の刃物好きな身にはパラダイスのような場所であった。
 中でも鉈は数十を数え、毎日変えて使っても、夏休み中には全部は使えなかった記憶がある。鋸も種類が豊富で子供には引けないような巨大なものもあった。斧も自由に使ったが、子供の体力には厳しいものが多い刃物であった。

 小学生のうちに木工にも興味を持って、大工道具の刃物にも馴染んでいく。鋸、かんな、のみ、錐などである。本棚、机、椅子、棚など主に箱モノを作ったが、箱物は縦・横・奥行きがきちんと決まると美しい姿に組みあがって気分が良いものであった。
 ところが、高学年になった夏のこと、台に板を置いて右足で踏みつけて鋸を引いていた時に誤って親指まで斬ってしまって、確か夏休み中は右足が6本指になった記憶がある。

 小学校の修学旅行で京都に行った際にも、新京極の刃物店で小さいナイフを求めて、暫くは宝物であったし、伊勢市の老舗打刃物の菊一文字のお店では日本刀の形の小刀(大小)も購入したが、これにはサービスでネームを入れて貰ったのも思い出である。これらは一体どこに行ってしまったのだろうか。
 菊一文字は後年、宇治山田駅前の商店街の支店に行き、各種物色したが購入できるものは電工ナイフしかなく求めて帰ったが、ネーム入れのサービスは流石になかった。これは電工ナイフの割には木製のグリップを持つ凝った意匠のナイフでとても気に入っている。

 小学生~中学生は釣りに目覚める。それとともに釣り用の刃物にも触れることとなる。
 ダイワのフィッシングナイフは切れ味もよく、バタフライ式にグリップに刃が収納されるギミックは重宝したものである(現在も販売中)。
 この頃、木柄のフィレナイフも入手したが、刃が甘くてとても使えなかった。同じ時期に手に入れたフィンランドのブッコナイフに似た(多分、現地製品)ナイフはグリップがコルクの集成材のような素材で濡れても滑らず、適度な切れ味が持続して優秀な物であった。

 他にもフィッシングとキャンプ用には、後年手に入れた関のガーバーサカイによるフィッシングデバがとても優れていたが、今ではカタログ落ちしたのか?見かけることもなくなったが片刃で小魚を捌くのがとてもやりやすかったし、錆にも強かった、シースも厚い革製の立派な物が付属しており、名工の香りが強く漂った製品であった。これはずっと後年のキャンプでも長く活躍した。
 しかし、魚捌きには圧倒的に片刃である出刃が便利かつ効率的で、魚専用を謳うフィレナイフと言えども太刀打ちできないと自分には感じられる。例えば三枚に下ろした魚の身の皮を引くには自分では出刃を用いないと上手くできない。

 キャンプには友人とチャリンコで行ったものだが、その時の刃物は簡素なフルーツナイフのようなものであった記憶がある。それでも十分実用になったし、楽しいキャンプであった。
 そんな時代だと思うが、たまたま小さいマルチツールのようなナイフを取得した(要するに拾った)。薄い本体には、それでもスイスアーミーナイフの一番小型程度のツールが揃って居て、これもよく使った覚えがある。DAIDOの彫り込み文字があったので、大同特殊鋼製の販促品かと。

 時が流れて、成人してからは仕事の忙しさ(時間外勤務がハンパなく長かった)から、刃物は実用からコレクション一方となった。外国のファクトリーナイフが魅力的でガーバーやバック等を集めた。ファクトリーにはファクトリーなりの良さがあり、細部までソツなく作りこまれたプロダクト感があった。
 またフィンランド製の「サーメナイフ」も手に入れたが、シラカバのグリップが一連のラップランド系のナイフと同じ形態で、美しい刃形とともにとても見事な出来で、シースの上品さと併せて気に入ったものである。代表的な北欧のファクトリーナイフであるモーラナイフと同系統だなあという印象であった。

現在バトニングに使用しているボウィーナイフと割った薪とそれ以前の候補達です。このナイフは刃長もあるし、刃厚も5mmほどありますが、生憎ホローグラインドの刃ですので、薪割りバトニングには比較的不利です。                              200320 gen

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