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    2020.06.16

    アオサンゴ群集がある石垣島。サンゴの海で今起こっているコト

    私が書きました!
    イラストエッセイスト
    松鳥むう
    離島とゲストハウスと滋賀県内の民俗行事をめぐる旅がライフワーク。訪れた日本の島は107島。今までに訪れたゲストハウスは100軒以上。その土地の日常のくらしに、ちょこっとお邪魔させてもらうコトが好き。著書に『島旅ひとりっぷ』(小学館)、『ちょこ旅沖縄+離島かいてーばん』『ちょこ旅小笠原&伊豆諸島かいてーばん』(スタンダーズ)、『ちょこ旅瀬戸内』(アスペクト)、『日本てくてくゲストハウスめぐり』(ダイヤモンド社)、『あちこち島ごはん』(芳文社)、『おばあちゃんとわたし』(方丈社)、『島好き最後の聖地 トカラ列島 秘境さんぽ』(西日本出版社)等。最新刊は初監修本『初めてのひとり旅』(エイ出版社)。http://muu-m.com/

    サンゴは不思議な生き物

    「サンゴは石でもあり、動物でもあって、とても不思議な存在なんです」
    そう話すのは"喜界島サンゴ礁科学研究所"の駒越太郎さん。研究所では、喜界島を拠点として、サンゴ礁に関わる海洋、地質、生物の調査研究を行っている。研究所がある喜界島は、鹿児島県の奄美群島に浮かぶ周囲約50kmの島だ。サンゴ礁が10万年かけて隆起してできた島であり、人と島の歴史に必然とサンゴが共にある。研究員である駒越さんは、大学時代から、サンゴとシャコ貝をテーマに活動をしている。「シャコ貝は、食べるよりも眺めて愛でます♡」と、目を細めて語る姿は、まるで愛しい恋人を想うかのようだ。私の場合、シャコ貝は愛でるより食べたい。なんせ、高級貝だもの。

    さて、もうひとつのテーマ、サンゴの方はどうだろうか? 砂浜に打ち上げられた"白く細い石"つまり"サンゴの骨"。それが私の中でのサンゴだ。以前、西表島の沖にあるサンゴだけで出来た小さな無人島に行ったコトがある。よせてはかえす波に揺られながら、シャララ……シャララ……と、心地よい天然の音色を奏でるサンゴ。その山に寝転がって瞳を閉じると、まるで自分が海の中にいるような感覚だった。いっとき、サンゴは島のごはん屋さん等で箸置きによく使われていたような記憶もある。だからか、"生き物"として意識したコトがなかった。いや、"海水温が上がってサンゴが死んでしまう"というコトは常々耳にしている。だから"生き物"だと知らないわけではない。ただ、そこに注力して改めて考えるというコトをしてこなかったのだ。

    石垣島・白保と喜界島はサンゴ大国

    駒越さんに出会ったのは、喜界島ではなく、沖縄県は八重山諸島の石垣島。その東南に広がる白保海岸だった。西表石垣国立公園の海域公園地区にも指定されている。ここの海には、サンゴが多く生息する。サンゴ礁観察のためのシュノーケルで一緒だった。

    白保海岸は新石垣島空港から市街地へ向かう途中の白保集落にある。空港から路線バスで17分ほどの距離にあり、かつ、年々観光客が増え新しい建物が立ち並ぶ石垣島にありながら、昔懐かしい沖縄の風景を残している貴重な集落だ。サンゴで作られた石垣と青々と生い茂る暴風除けの福木に囲まれた中に赤瓦の古民家がたたずむ。すべての家がそうではないけれど、それでもかなりの数が残っている。集落内の道を歩くと、ゆったりとした島時間が流れているのを感じる。

    (写真提供:©WWF Japan)

    ユビエダハマサンゴ、ノウサンゴ、ミドリイシ、エダコモンサンゴ……etc.海の中は竜宮城のごとくサンゴがニョキニョキとそびえ立つ。一概にサンゴと言っても、枝状のもあれば、板状だったり、まんまるだったりと、姿形は様々だ。パッカリと割れた大きな岩のようなモノもある。「割れ目の断面から、そのサンゴの年齢もわかるんですよ」と、駒越さんが教えてくれた。樹の年輪と同じだ。歳を重ねて"生きて来た"証が刻まれている。

    (写真提供:©WWF Japan)

    ところで、サンゴは何種類あるかご存知だろうか? 地球上に存在するのは、ざっと800種類。そのうち約360種を石垣島が属する八重山諸島で見るコトができる。さらに、白保海岸に至っては130種ほどもある。サンゴの宝庫だ。しかも、白保特有なのは、アオサンゴ群集があるというコト。なんと、北半球最大級の大きさだと言うではないか! 宝庫どころかサンゴ大国と言っても過言ではないのでは?

    そんな白保集落と同じく駒越さんが勤める"喜界島サンゴ礁科学研究所"がある喜界島も、また、サンゴ大国なのだと言う。白保集落と同じように、昔から集落の中にサンゴの石垣がある。白保と喜界島は、サンゴ礁文化を大切にするエリア同士として交流を深めているのだそう。

    サンゴの危機!

    (写真提供:©WWF Japan)

    「サンゴは動物でありながら、石の骨を作ります。そして、それが島自体をも作りあげ、人間の暮らしに関わってくる。ロマンティックですよね」と、これまた瞳を細めて語る駒越さん。白保集落や喜界島のように、サンゴ礁が豊かな地域は、昔から日々の暮らしの中にサンゴが共にあった。サンゴの石垣はもちろんのコト、サンゴを使った漁、はたまた、赤瓦屋根の漆喰をはじめとするサンゴを使った建造物等々、集落のそこかしこでサンゴを使ったモノが目に入って来る。熱帯の魚たちがサンゴを住処とするように、人もまた、サンゴと共に暮らしを営んでいる。自然界はもちつもたれつ。けれど、そのお互い様の関係が少しずつ壊れはじめている。

    一番よく知られているのは、温暖化によるサンゴの"白化現象"だ。サンゴには"褐虫藻(かっちゅうそう)"という植物プランクトンが共生している。サンゴが出した二酸化炭素で光合成し、それで生じた栄養分をサンゴに与える役目をしている。ここも、やはり、もちつもたれつの関係だ。けれども、海水温が上昇するコトで褐虫藻がサンゴと共生できず、その結果、サンゴの白化現象が進んでしまうのだ。

    それだけではない。サンゴが危機的状況に陥っている原因は他にもある。シュノーケルなどに慣れていない観光客達がサンゴを踏んで傷付けてしまう。シュノーケル経験者なら思い当たる節があるのでは? 泳ぎが苦手な私も例に漏れず。意に反してサンゴの危機に加担してしまっている。サンゴに申し訳なくて仕方がない……(汗)。白保集落では、サンゴ礁のエリアまでビーチから泳いで入るコトを禁止し、そうするコトでサンゴ礁を守っている。また、パクパクとサンゴを食べてしまう"オニヒトデの増殖"や"台風による激しい波"でサンゴが折れてしまったりするコトも原因となっている。

    さらに、もうひとつ大きな問題は"赤土の流出"だ。石垣島のサトウキビ畑やパイナップル畑を見たコトがあるだろうか? それらの足元に広がる畑の土は、内地のそれとは異なり、とても赤い。土地が森林のままであれば赤土の上に落葉などの層があり、雨が降っても、その部分に水分が染み込むだけで、赤土が流れ出るコトはない。けれども、畑にしてしまった場合、赤土は表面に剥き出しになる。そうすると、台風等で大雨が降った場合、赤土は海の中へドドドッと流れ込むのだ。そして、赤土はサンゴの上を覆ってしまい、サンゴは埋もれて死に向かってしまう。人が生きていくために必要な食物を作る畑が、サンゴには迷惑極まりなく命まで脅かしてしまう。なんとも、もどかしい負の連鎖。

    (写真提供:©WWF Japan)

    本州からは遠く離れている石垣島は白保集落のサンゴの話。ともすれば、自分たちの日常とはなんら関わりないコトに思えるかもしれない。けれど、海の流れには境界線などなく、どこまでもぐるぐると世界中に繋がっている。サンゴ礁は地球上の海洋生物種の約1/4の生活に関わっているそうだ。サンゴの問題を考えるコトは、巡り巡って、自分自身の生活にも関わってくる。陸にも海にも、そして人間にも、三方よしな環境作りとはないものだろうか?

    サンゴの隙間で、ひらひらふわふわとヒレを動かすクマノミたちとゴーグル越しに目が合う。眩しいほどのブルーのルリスズメダイが群をなして目の前を素早く通り過ぎて行く。そんな白保の海中を漂いながら、ふつふつと思うのだった。

    ・WWFサンゴ礁保護研究センター しらほサンゴ村
    https://www.wwf.or.jp/activities/activity/1635.html
    ・「喜界島」サンゴの島の暮らし発見プロジェクト
    https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/4341.html
    ・喜界島サンゴ礁科学研究所
    https://kikaireefs.org/

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