悩んだら温泉へ行け!豊臣秀吉の有馬湯治 | 日本の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

日本の旅

2019.02.08

悩んだら温泉へ行け!豊臣秀吉の有馬湯治

有馬温泉にある豊臣秀吉の銅像。秀吉は療養と歓楽をかねて有馬に通った。今に続く日本の温泉観光の先駆者といえるだろう。(写真:いっちゃん / PIXTA)

天下をとると長生きしたくなる

「関西の奥座敷」として名高い有馬温泉(兵庫県神戸市北区)は、白浜(和歌山)、道後(愛媛)と並んで日本三古湯のひとつに数えられる歴史ある温泉地だ。

この有馬温泉をこよなく愛した人物が、戦国の世を統一した豊臣秀吉(153798)である。秀吉が天下取りの主導権を握ったときは、すでに50歳近くになっていた。それまでは織田信長の家臣として骨身を削って働いていたが、自分が天下人となると養生して長生きをしたくなる。そこで目をつけたのが温泉療法だった。

秀吉は有馬一帯を直轄領にして、戦乱で荒廃していた湯治場を整備。居城のある大坂から有馬に通った。

有馬温泉の湯は食塩泉で保温効果があり、神経痛などによいとされる。神経痛持ちの秀吉は、その湯治効果を実感したことだろう。秀吉は主治医を同行させており、温泉に入ったあとは灸を肩や腕などにすえていたようだ。

人生の苦楽を湯に浸す

記録に残る秀吉の有馬湯治は計9回で、いずれも一週間から20日ほどの日程で滞在している。まず最初に有馬を訪れたのが天正11年(15828月。同年4月に信長亡き後のライバルである柴田勝家を賤ヶ岳の戦いで破り、6月に主君信長の一周忌法要を終えたあとのことだ。信長の天下を継承する決意と野望を胸に湯に浸ったことだろう。

その後も、家康との戦い(小牧・長久手の戦い)が膠着状態に陥ったときや、家康の臣従が決まって天下人の地位を確立したとき、関白に就任して位人臣を極めたとき、そして天正18年(1589)に小田原の北条氏を滅ぼして天下統一を成し遂げたときなど、大きな決断を迫られている状況や、大事業を成し遂げたあとに有馬を訪れている。また、愛妾の淀殿が生んだ最初の子の鶴松が病死した直後も、傷心を癒すためか有馬で湯治をしている。

露天風呂で美女とたわむれ極楽気分

秀吉の湯治は千利休などの茶人を連れて行くこともあったし、派手好きらしく、総勢52名のお供を同行させたこともあった。天下人秀吉の行なったさまざまな政策は、有馬の湯のなかで練られたのかもしれない。

また、秀吉が自分だけの豪華リゾート施設として建設した「湯山御殿(ゆやまごてん)」には、蒸し風呂のほかに、露天の岩風呂も設けられていた。周囲を幕で囲って、愛妾と秘かな入浴タイムを楽しんだのではないだろうか。

『五畿内名所図絵』に描かれた江戸時代の有馬温泉の賑わい。図中の「幕湯」とは貸切風呂のこと。有馬温泉は秀吉の再興によって、近畿の名湯の地位を確たるものにした。(国文学研究資料館蔵)

湯けむりに消えにし栄華の夢

秀吉が60歳となった慶長元年(1596)、関西を襲った慶長伏見大地震によって有馬温泉は大きな被害を受け、湯山御殿も大破した。御殿は1年半後にはおおむね復興され、秀吉の10回目の有馬湯治が計画されたが、秀吉の病気のために取り止めとなった。そのまま秀吉は快方に向かわず、62年の生涯を閉じる。

思いのままに権勢を振るった秀吉も、60歳を過ぎると老いと病で急速に衰えた。

幻と終わった10回目の有馬湯治は、長年連れ添った正室の北政所(きたのまんどころ)とともに過ごし、湯けむりのなかで60年の人生を静かに振り返りたかったのかもしれない。

構成/内田和浩

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