ランボルギーニ・ウラカンEVOでロフォーテン諸島の絶景を走る

2019.10.05

ランボルギーニから、ノルウェーのロフォーテン諸島を一緒に走って、“冒険しないか?”と誘われた。冒険というから、てっきりSUVの「ウルス」でオフロードでも走るのかと思ったら、スポーツカーの「ウラカンEVO」だった。

ロフォーテン諸島の玄関口は、イブネスという空港。首都オスロから北方に3時間近く飛行機に乗っていく。空港からさらに北上し、ハーシュタットという北極海に面した小さな町へ。ホテルにチェックインしたのが22時を回っていたのに、窓の外には青空が広がっている。北極圏から250km北に位置しているので、ちょうど白夜の季節なのだ。部屋のカーテンを閉め切っても、隙間から漏れ出る光が強烈だ。

翌朝、ウラカンEVOで走り出した。ウラカンEVOは、「ウラカンLP610-4」の発展版で、最高出力640馬力/8000回転、最大トルク600Nm/6500回転を発生する排気量5.2リッターの自然吸気のV10エンジンを搭載している。ツインクラッチタイプの7段AT。4輪を駆動し、4輪が操舵される。

このエンジンは今年5月に、世界中の高性能車が目標としているドイツ・ニュルブルクリンクサーキットのラップレコードを更新した、あの「ウラカン・ペルフォルマンテ」用のものだ。加えて、最新の車両制御デバイス「LDVI」も装備している。

ボディのフロント部分はよりアグレッシブな形状になり、空力性能が向上している。リア部分も、上方排気となったことで外見が一新された。ブレーキもオプションのカーボンセラミックディスクが標準で装備されている。そのV10エンジンは重低音でアイドリングを続け、アクセルペダルを少し踏んだだけで鋭く吹き上がる。音とレスポンス。ランボルギーニの魅力は、個性的なスタイリングによる強烈な存在感と、まるで野獣を一匹飼っているかのようなこのエンジンの官能性、そして抜群の超高性能にある。

ハーシュタットの街からロフォーテン諸島を海岸線沿いに走って南西に進んでいく。入り組んだ海岸線を走っていくから、ウラカンEVOの外に見える海が右側になったり左側になったり変わっていく。海と反対側は切り立った巨大な岩山がどこまでも連なり、その麓に沿って走っていく。地形と道路は複雑で、一度として同じ光景に直面することがない。

アメリカのネバダやアリゾナの荒涼とした地域や中国の天山山脈なども何度かクルマで走ったことがあるけれども、どちらも長距離を走り続けてもゆっくりとしか景色が変わっていかなかった。その点、こちらは大袈裟に言えば、コーナーをひとつ回っただけでダイナミックにフロントウインドウの向こうの景色が変わっていく。絶景に次ぐ絶景だ。こんな道は走ったことがない。確かに、これは“冒険”だ。ヘニングスバーという小さな港町に着いて、ランチ。新鮮なシーフードが、とても美味しい。

ロフォーテン諸島は静かで穏やかな町や村ばかりが続くが、このエンジン音を聞くと住民たちも拍手喝采。スマートフォンの撮影が止まらない。ランボルギーニというクルマは存在じたいが非日常性を体現している。自分のためというよりは、オーディエンスのために乗っているような気にさせられる。

イタリアのランボルギーニ本社からこのイベントのために駆け付けた、ステファノ・ドメニカリCEOと話をすることができた。

近年のランボルギーニは世界中で頻繁にイベントを開催している。それも、超高性能をアピールするためのサーキット走行イベントだけでなく、多様なものを開催し、“ランボルギーニに乗って楽しむ機会”を提供している。その理由と動機は、どこにあるのだろうか?

「造って売るだけでなく、“運転する喜び”を体験できる機会を提供することも我々の大切な仕事です」
“モノ”の購入ではなく、“コト”の体験が求められる時代だ、という話はこの頃良く聞く。世界的な傾向だ。ランボルギーニのような特別なクルマを製造するメーカーでも変わらないのだろうか。
「同じですけれども、少し違います。ランボルギーニが提供するわけですから、日常生活ではなかなか体験できない、やはり特別な、非日常的なものでなければなりません。ランボルギーニが特別であるのと同じくらいに、特別で非日常的な体験を提供しなければならないでしょう」

ウラカンEVOには、「ストラーダ」、「スポルト」、「コルサ」という3つの走行モードが備わっていて、ステアリングホイール上のスイッチで切り替えることができる。エンジンレスポンス、シフトタイミング、ステアリング特性、サスペンションのダンピング特性などが各モードごとに変化していく。コルサは主にサーキット走行用なので、主にストラーダとスポルトを多用した。ストラーダはベーシックな設定なのでバランスが取れている。驚かされるのが、快適性の高さだ。どんな路面からのショックも巧みに吸収し、乗り心地が良い。スポーツカーの乗り心地が粗野だったのは、これで完全に過去の話になった。

スポルトは、ストラーダをスポーティにした設定となる。エンジンのレスポンスが鋭くなり、高回転域まで回さないとシフトアップしなくなる。足回りも引き締まり、多少はゴツゴツしてくるが、よりダイレクトな反応を楽しむことができる。アップダウンとコーナーが延々と続く道は空いていて、フィヨルドの絶景を独り占めしているようだ。


それにしても、この5.2リッターV10エンジンのレスポンスの鋭さと排気音の響きの甘美なことといったら、他に類がない。重低音から高音まで、さまざまな音色が混じり合った管楽多重奏団が頭の真後ろ至近距離で演奏しているかのようだ。

CO2削減のために、世界中の自動車メーカーが自然吸気エンジンの製造を停止し、ほとんどを過給エンジンにスイッチしてしまった。スポーツカーメーカーとて例外ではなく、ポルシェやフェラーリ、マクラーレンなども例外ではない。もはや、大排気量の自然吸気エンジンは絶滅危惧種並みに稀少なのである。その中にあっても、このランボV10は絶品だ。

ロフォーテン諸島の道は高速道路ではないので、ウラカンEVO の持つ超高性能の半分も引き出せない。しかし、スポーツカーは速く走れば楽しいというものではないことも、またウラカンEVOは教えてくれる。機械を操り、機械と一体化したかのような快感を覚えさせてくれる。このクルマは強くて大きな魂を持っている。

ウラカンEVOで400km近く走った日の晩は、ヌスフィヨルドという海沿いの村に泊まった。ホテルは、漁師の番屋を外観はそのままに、中をキレイかつオシャレに改めたもので、部屋もレストランもバーも、とても快適だった。そのアイデアはそのホテルだけのものではなく、他でも多く見たから、ロフォーテン諸島の名物なのだろう。名物といえば、ここの何よりもの名物はフィヨルドだろう。陸地の奥まで深く切り込んだ入江が無数にある。その両岸は切り立った絶壁の岩山が無数に連なっている。

翌日は、ランチ後にモーターボートで“イーグルウォッチング”に出掛けた。フィヨルドの奥の奥まで船を進め、鷹の巣の前でエンジンを切り、帰ってくる鷹を待った。一つ目が空振りで、二つ目では数羽の鷹たちが飛び交うのを下から拝むことができた。

陸に上がり、再びウラカンEVOで走り始めた。先代モデルに相当する「ウラカンLP610-4」よりも性能が向上し、それだけでなく快適性や使い勝手までも増している。なんと、カーナビ画面でスマートフォンを操作できるApple CarPlayまで装備されているのだ。これがあれば日本で使っている時の使い慣れた設定のまま日本語でGoogle Mapsなどを操作できるから、便利この上ない。僕も、いつも日本で自分のクルマやPC、スマートフォンで使っているSpotifyアプリで音楽を楽しむことができた。

ハーシュタットの街に戻ってきて、ウラカンEVOをガレージに仕舞い、ナイトトレッキングに出掛けた。バスで山の中腹まで出掛け、そこから岩山を登っていくこと2時間弱。用心して晩御飯のワインには手を付けないで良かった。ハイペースの岩山トレッキングに、最後は息が切れた。

トレッキングのリーダーは、この旅をオーガナイズしたフランコ・ジョンコノさん。さまざまなアウトドアコーディネーションを仕事にしている。ジョンコノさんが先方で手を振っている。どうやら、あそこがゴール地点らしい。周囲には雲が漂い始めてきているが、どのくらいの標高なのだろうか。ジョンコノさんに追い付いたところで、その先を見たら腰が引けてしまった。はるか下の海岸線が見えたからである。足を滑らせたら、真っ逆さまだ。

岩山の頂点まで連れて来てくれたのだ。周囲を眺めると、360度すべて岩山の頂上部分しか見えない。昨日から夕方まで走りながら下から見上げて来た岩山の、頂上まで登って来た。下からのフィヨルドも絶景だったけれども、上からはもっと絶景だ。こんな体験は初めてだ。ドメニカリCEOも一緒に登って来ていた。「気に入りましたか?」ーーこの場所のことですか? それともウラカンEVOのことですか?「両方のことですよ」ーーもちろんです。ウラカンEVOはエキサイティングだったし、ここからの景色は素晴らしい。忘れられない絶景です。

この時、すでに午前1時。陽はまったく翳っていない。ドメニカリCEOは、崖に突き出した岩の先に立って、カメラマンからのポーズの注文に応えている。サービス精神旺盛な人なのだ。ホテルの部屋に戻ったら、午前3時30分。この時期は太陽が一度も沈まないそうだ。ウラカンEVOの仕上がり具合は予想以上だったし、イーグルウォッチングも白夜トレッキングも非日常体験そのものだった。

「美しいクルマで美しい道を走る。これ以上の非日常体験があるでしょうか!?」ドメニカリCEOの確信に満ちた言葉が、いつまでも響いている。

構成/金子浩久

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