カンボジアのクラタペッパー農園で摘んだ緑胡椒で料理する

2019.07.23

スラエアンベルの『KURATA PEPPER』農園からプノンペン本店へ届いたばかりの緑胡椒。

これまで、カンボジアで栽培から加工、販売、輸出まで、一貫して胡椒をプロダクツし続ける『KURATA PEPPER』の話をしてきた。

今回はいよいよ、そのカンボジア南部コッコン州スラエアンベルにある『KURATA PEPPER』農園で摘んできた生の胡椒(緑胡椒)を使った料理を提案したい。

代表の倉田浩伸さんのこだわりのひとつに、その地に続く伝統的な自然農法で育て続けることがある。自然こそが最大の恵みであり脅威でもある。今春は何やら例年にないほどの日照りが続き、思うように収穫できないと倉田浩伸さんのフェイスブックにも書かれてあった。

日本では愛知、東京を主とし、最近ようやく関西でも積極的に活動しようとしている時にこの試練である。いやはや生産者の思い、そして安定した自然環境あってこそのスパイスだということをつくづく思い知らされる。

極めて稀ながらも、もしどこかで緑胡椒を見かけたら迷わず即ゲットされたし。そのプリッとした食感と鮮烈な香り、爽やかな辛みは、ドライの胡椒とはまた違う世界である。あまりに希少な『KURATA PEPPER』緑胡椒を使った料理。みなさまのご参考になれば幸いだ。

エビと緑胡椒のスープ

以前、僕が主宰していたスパイスマガジン「スパイスジャーナルvol.14-15」にて、タイに生の胡椒を食べる文化があるとのことでバンコク中の市場を渡り歩いて調査したことがあった。

その際に出会った青澤直子さんという健幸料理研究家の方から、緑胡椒は魚介類や肉類と一緒に炒める伝統料理が存在するという話を伺ったことがある。(その際は青澤さん創作のラムと緑胡椒の炒め物を食べた)

一方でお隣のカンボジアにきてみれば、もっとも有名な郷土料理の一つに、イカの緑胡椒炒め「ムック チャー マレッチ クチャイ」という料理が存在している。市場へ行くと、緑胡椒は八百屋やハーブ屋でも見かけるが魚介屋でもしばしば見かけた。

天日にあたると1日で黒ずんでしまう緑胡椒が外に平然と置かれていたプノンペンのオルセー・マーケットの八百屋。

カンボジアの郷土料理はクメール料理と呼ばれる。古くからこの地に住み続けるクメール人の文化で、現代でもカンボジアの9割がクメール民族という。そしてタイやラオスなど周辺諸国にも大勢住んでいると聞く。タイに残る緑胡椒料理の原点はもしかしたらクメール料理なのかもしれない。

魚介屋に置かれているのを見ると、まるで日本のワサビのようでもある。カンボジア北部の町シェムリアップの市場にて。

『KURATA PEPPER』プノンペン本店近くのクメール料理レストランにて。左が牛肉と、右がイカの緑胡椒炒め。味は総じて甘みとうま味が強く、緑胡椒を口に含んだ時だけ鮮烈に辛い。食べてる途中の写真で失礼!

さて僕としてはどうかというと、『KURATA PEPPER』農園が海の近くにあることから、どうしても潮の香りとイメージが重なってしまうのだ。というわけでエビとのコラボレーションを考えた。

エビは背ワタを処理してから冷凍。野菜は切り分けて小袋に。500mlペットボトルにスープと調味料を入れておけば、あとは鍋一つでできるのでアウトドアでも簡単だし。

ちなみに緑胡椒は冷蔵庫に保管しても、23日もすると黒くなってしまう。すぐに使わない場合は冷凍をおすすめしたい。袋に入れて冷凍しておけば、鮮度のいいものなら1か月ほどは色落ちが少なくてすむ。

『エビと緑胡椒のスープ』レシピ

必要な道具

  • お玉

材料と下ごしらえ

  • ブラックタイガー 中型4尾(無頭殻ごとで約100g) 殻ごと使うので、殻の隙間から竹串などで背ワタを取り流水で洗う *ほかのエビでも可
  • トマト 1個 粗切り
  • セロリ 20g3センチ程度) 繊維に対し縦に薄切り
  • サラダ油 大さじ1
  • 塩 適量(基本的に使わないが、もし味が足らないときのために一応)

スパイス

  • 緑胡椒 45g 流水で洗う(小さめの房ならふたつ、大きめならひと房を半分に切る)
  • ショウガ スライス34枚 細切り
  • バイマックルー 1枚(コブミカンの葉。ドライでも可)
  • レモングラス 35本(ドライでも可)

スープ

下記の材料をすべてよく混ぜ合わせておく

  • ナムプラ― 小さじ11.5 (なければ薄口醤油か塩少々で可)
  • 好みのスープ 2カップ (撮影時はユウキの鳥ガラスープの素を使用)
  • レモンまたはライム 1/2個(バイマックルーやレモングラスがない場合は生レモン果汁を多めに)

作り方

  1. 鍋に油とショウガ、バイマックルー、レモングラス、緑胡椒を入れてから火にかける。焦がさないように注意しながら、じっくりと加熱していくことでスパイスのエキスが染み出てくる。
  2. 火を強くして、エビ、セロリ、トマトを加えて炒める
  3. 全体がなじんだらス―プを加えてよく混ぜる
  4. 味見をして、もし塩気が足らないと感じたら塩を加え、火からおろす。

スープを飲んでは緑胡椒を12粒つまむ、エビを食べては緑胡椒を12粒つまむ、という具合に食べ進めるのがおすすめだ。今回の主役はエビと緑胡椒の風味なので、フレッシュコリアンダーなど香りの強い材料は入れなかった。

緑胡椒の冷凍を使う場合は、凍ったままのそれを炒めるとそれほど色落ちしない。解凍していくにつれどんどん黒くなるので注意したい。

KURATA PEPPER』緑胡椒が日本に届くまで

栽培から加工、販売まで何もかもを自社一貫。またオーガニック自然農法に徹しているからこそ『KURATA PEPPER』の緑胡椒は魅力的なのである。

コッコン州スラエアンベルの農園で胡椒が育ち、出荷されるまでの流れを見てみよう。

胡椒は多年生のつる性の植物で、発芽は至難ゆえに、挿し木をして支柱に巻き付けて育てる。そして通常は2、3年経過したら収穫を始め、5メートル以上の高さにして十数年栽培し続けるものだが、倉田さんは約5年の月日をかけ、じっくりと育て上げてから収穫する。

畑の周囲に掘られた大きな溝は害虫予防のためである。一般に胡椒の寿命は20年ほどと言われるが、うまくいけば25年ほど生かすことができるという。

胡椒の実はブドウの房のような形で成長する。短いもので56センチ、長いもので123センチほどになる。

看板商品の赤完熟胡椒(ライプペッパー)の場合は、1粒2粒とオレンジ色に染まりだしたら、一気に完熟の実だけを収穫し、厳選した後一度天日に干したものを片道34時間をかけてプノンペン本店へ運ぶ。

一方、緑胡椒の場合は色鮮やかなうちに収穫し、プノンペン本店まで運ぶ。本店では待ち受けていた若い女性スタッフたちが届いた緑胡椒を速やかに洗浄し、ひと房ずつ丁寧に選別。その後乾燥を経て真空パック詰めにする。

1パック約50g入り。房で言うと810房程度だ。受注は10パック500g1セットとしている。これらを車に詰め込み今度は植物防疫のチェックを受けに検査所まで走り、クリアしたらようやく空港という流れである。

日本に到着するのは翌日の午前7時頃。その後、検疫検査を受けて翌日に出荷。我々の手元に届くのはその翌日だから、収穫したその日から34日を要することになる。

ちなみに先述の赤完熟胡椒(ライプペッパー)の場合は、プノンペン本店に到着後、洗浄してから脱水作業を経て、丁寧に選別する。大きさ、色、実、皮が破裂していないか、視力のいい若い女性スタッフたちが一粒ずつ細かくチェック。それが終われば除菌洗浄し、もう一度天日に干してやっとパック詰めとなる。

緑胡椒は今まで月1回のペースで日本へ向けて輸出してきた。輸出をはじめたのは201711月。当初は1キロ単位であったが、日本ではあまりにも未知のもので使いこなせる人が不在。その後、500g単位に変えた。

世界的に見ても緑胡椒の料理は実に希少である。手先が器用で頭が柔軟な日本人ならきっとおいしい料理を生み出すに違いない。緑胡椒には未知の可能性がてんこもりに秘められているのだ!

KURATA PEPPER』プノンペン本店における緑胡椒の作業

農園から緑胡椒が届いたらすぐに流水で洗浄していく。

何人もの若い女性たちがひとつひとつ丁寧にチェック。

乾燥させてさらに厳選作業を繰り返す。

プノンペン本店の加工場にて。余計なものが入っていないか、ちゃんと洗浄はできているか、質は良好か、本当に一粒一粒丁寧に作業している。

洗浄、乾燥、厳選を経た緑胡椒を50g単位でパックに詰めてその日のうちに出荷する。

構成・写真/カワムラケンジ

基本データ

KURATA PEPPER
1994年創業。カンボジア原種を徹底したオーガニック自然農法で栽培する。最近では人気TV番組でも紹介されるなど、日本国内でもぐんぐん知名度上昇中。現在、国内での販売も可能となり商品も着々と増えている。日本に取扱店あり。業務用等の相談はウェブサイトから受け付けている。201971日、同じプノンペン市内にトゥールトンポン店をオープンした。
http://www.kuratapepper.com/index.html

プノンペン本店
8AM~7PM (休み:クメール正月、盂蘭盆、水まつり)
#35B Street 606, Boeung Kok 2, Tuol Kouk, Phnom Penh CAMBODIA 12152

トゥールトンポン店(KURATA PEPPER TTP)
営業時間と休みは上記と同じ。
Street 444, Toul Tompong 2, Chamkarmorn, Phnom Penh

カワムラケンジ プロフィール

10代の頃から様々な飲食の現場で経験を積み、20代からレシピ開発や飲食業の運営や経営、また物を書くようにもなる。2010年、スパイスをテーマに料理、旅、ヨーガ、科学など多角的にとらえた世界初のバイリンガルミニマガジン「スパイスジャーナル」を創刊(18)。著書に『絶対おいしいスパイスレシピ』(2015年木楽舎)、『おいしい&ヘルシー!はじめてのスパイスブック』(2018年幻冬舎)がある。
www.kawamurakenji.net

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