富士山と海はどうつながっている?「ZEROtoSUMMIT」山梨・富士山編 | BE-PAL

富士山と海はどうつながっている?「ZEROtoSUMMIT」山梨・富士山編

2021.07.12

ZEROtoSUMMIT 山梨・富士山篇 富士山と海は、どうつながっているのか?

去年は閉鎖された登山道だったが、今年は感染症対策がされて開山されることになった富士山。コロナ禍になる前2017年に、海抜ゼロメートルから富士山登頂を果たしたルートを紹介しよう。

雨がそぼ降る未明の平塚港。相模川河口で、潮水を撫でる。ここからぼくの旅は始まった。

遠く江ノ島をのぞむ相模川河口からスタート

山梨の最高峰は、言わずとしれた富士山。静岡最高峰でもある。その富士山に落ちた雨粒は、どうやって海までたどり着くのか。これが意外と難しい。

SEA to SUMMITとは違い、一筋の川にフォーカスするのがZEROtoSUMMITだ。それに山梨県内を走らずに山梨篇とは呼べない。

一見、富士川(笛吹川)かなと思うのだが、本栖湖あたりで山に阻まれる。迷った末、相模川(桂川)を選んだ。なんという大回りだ。

山梨側の富士山と海をつなぐのは、相模川と桂川だった

相模湾河口・平塚から富士山まで120km+3000mを走る!

相模湾から富士山まで120km。ものすごく頑張れば一日で走破できるかもしれないが、余裕はまったく無くなる。今回は2日間で走ることにした。1日目は100km、2日目は残り20kmと3000mの登山。この距離と高度は未知の世界で、挑戦しがいがある。

1日目(相模湾~富士吉田:106.5km+800m)

相模川を、北へ北へ

前夜泊の平塚駅前の安宿から相模川河口まで歩き、海面にタッチしてスタート。本日めざす100km先の富士吉田を考えると気が遠くなるので、まずは40km先の津久井湖をめざす。乗り物で横断することはあっても川ぞいの移動は初めてで、景色がひどく新鮮だ。

海老名JCT前で左岸に渡り、しばらく圏央道の下を北上。お年寄りたちや犬の散歩にとってちょうどいい雨よけコースになっている。ただし、多摩川のように、ランニングまたはサイクリングコースが一貫して整備されているわけではないようだ。

相模川河口堰をみて、記憶が蘇る

厚木で、ある記憶が蘇る。二十数年前、ここで相模川河口堰反対運動があった。野田知佑さんと焚き火を囲んで語り合ったな。思い出に浸っていると、いつしか雨はやんだ。

磯部頭首工をすぎ、流れがぐにゃりと45度曲がると同時に地形が複雑になり、やや迷いながら住宅街を抜ける。津久井湖、相模湖を眼下にやりすごし、神奈川県から山梨県に入り、河口から62kmで相模川は桂川と名前を変える。すでに関東平野は後方に消えている。

上野原の桂川河川敷は気持ちがよかった

相模川から桂川に

上野原から先は、甲州街道ぞいを西進する。うなりを上げて脇をかすめていく大型車との並走はかなりの苦行だが、走りに専念するしかない分、距離は稼げる。猿橋を渡って桂川をまたぐと、岩殿山が見えてきた。残り20km、もう一息。

大月で笹子川と分かつと、傾斜がぐぐっと上がる。ダウンは一切なくアップのみで、残りの体力を根こそぎもっていかれる。富士山の登りはもう始まっているのだ。夜8時前に富士吉田駅前着。河口から106.5km、標高は800m。近頃急増中のゲストハウス型の「ホステル 富士山・結」によろよろとたどりつくとすでに余力はなく、早々に寝る。

2日目(富士吉田~富士山:20km+3,000m)

ゼロからの登山

5時前に宿を出て、富士山駅のコインロッカーに不要な荷物を預ける。コンビニで補充。すでに山じまいしていて先の状況が不明なので、飲料水を多めに買う。

富士浅間神社でいよいよ入山。ここが吉田口登山道の起点、つまり0合目だが、ぼくの場合は文字通りゼロからの登山である。

浅間神社でサミット祈願

中の茶屋で作業着姿の男たちがキノコ狩りの取締りをしている。この辺のキノコは放射線量が高いため、食用にはならないようだが、その先にはキノコ狩りに興じる人たちがけっこういた。

吉田口登山道をガシガシ歩き、森林限界を抜けて六合目に到着すると、一気に視界がひらけ、赤茶けた富士山が目前にそそり立つ。誰もがおおーっとなる場面だ。

ここで最終判断。もし天候が急変して雪になったら、軽装のぼくは完全にお手上げ。それは最悪、死を意味する。ライブカメラやネット予報の充実で、一昔前より格段に判断材料は増えたものの、自分の生命までは預けられない。雲、風、自身の身体に、最高レベルで神経を澄ませる。よし、GOだ。アタック開始。標高はすでに2,390m。残り約1,400mだ。

六合目でスイッチ・オン

平塚、河口から127km、ありえねぇっす!

最盛期の人出こそ無いが、御来光を拝んでから下山中の人も含め、登山者はそこそこいる。休暇中なのだろうか、米軍ぽい白人も多い。

八合目の3,000m前後から軽い高山病に掛かることもあるが、今回は順調だ。急斜面を登りきってお鉢めぐりを始めると、A台高校山岳部のパーティーに遭遇。平塚から走ってきたよと伝えると「100キロはありえねぇっす!」と歓声が上がった。さすが地元高校生、土地勘があるのだね。前年の雨中強行の苦難を乗り越え、やっと富士山で晴れましたと喜びを爆発させていた。その若さのすべてが眩しい。

そして富士山の最高地点、剣ヶ峰山頂到着。河口から127km、尺貫法で32里。登山史上、はたしてこのルートで登頂した人はいるのかな。いるとしたら、すぐにでもお友達になりたい。

これがサミット・シャワーだ!(地味です)

山頂の儀式サミットシャワーを済ませ、大勢の観光客で賑わう富士吉田口まで一気に下りて、ゴール。これで完了、下山するまでがゼロサミです。

富士山駅では、嬉しいサプライズが。地元を走ったぼくを歓迎するため、わざわざひとりで駆けつけてくれた人が。河口湖畔にたつホテル&レストラン・イエスタデイの堀内さん、本当にありがとう。涙が出るほど嬉しかったです。

ゼロサミでは全国四十七都道府県の最高峰を踏破する予定。120km+3,776mを走りきったことは、今後の大きな糧となるだろう。

河口湖に向かうバスのなかで飲んだビールが染みた

(※掲載内容は2017年時点の情報になります)

私が書きました!
プロ水流ランナー
二神浩晃
1972年、岐阜県生まれ、世田谷区在住のプロ水流ランナー。「世界の果てまで、川ぞいを走る」の合言葉のもと、水流ランを提唱。四十七都道府県の最高峰まで一筋の川のみをたどって海から走り登る “ZEROtoSUMMIT 47” を実施中。2018年秋にプロ宣言。世界進出を狙いつつ、ランニングを通した表現のあらゆる可能性を試みている。
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