C.W.ニコルさんからのバトンを未来へ | ナチュラルライフ 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2020.08.07

    C.W.ニコルさんからのバトンを未来へ

    2020年4月3日に亡くなったC.W.ニコルさん。79歳だった。その半生を日本で過ごし、森の再生に尽力した環境活動家が未来に遺したものとは。ニコルさんが実行委員長を務めていた「アースデイ東京」で共に活動した河野竜二さんに話しを聞いた。

    C.W.ニコル|英国ウェールズ生まれ。17歳でカナダに渡り、北極地域への調査探検に同行。1967年よりエチオピアで野生動物保護省の管理官を務める。22歳で初来日すると、1986年には荒れ果てた里山(現在のアファンの森)を購入し再生活動を始める。2002年、「財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団法人」を設立し理事長に就任。1995年には日本国籍を取得。

    イギリスのウェールズに生まれたC.W.ニコルさんは1980年から暮らしはじめた長野県黒姫で、「幽霊森」と呼ばれていた森を買い取り「アファンの森」と名付けた。間伐などの手入れをしながら徐々に広げた森の面積は、現在約34ヘクタールに及ぶ。

    見事な再生を遂げた森は緑が輝く生物多様性の宝庫となり、2008年にはチャールズ英皇太子、’16年には当時の天皇皇后両陛下も視察されている。けれど、ここがゴールではない。ニコルさんは100年、200年先を見据えて森づくりを行なってきた。それはつまり自らの命のその先の未来に森を託すということ。未来を担う若者はニコルさんとどう関わり、何を受け取っていたのだろうか。

    河野竜二さんとニコルさんの出会いは2017年の「アースデイ東京」だった。河野さんは若手猟師らを集め、トークステージでニコルさんとの対談を企画した。

    「その本番のステージ上でニコルさんが怒り出してしまったんです。『罠猟だけは許せない!』って」

    ニコルさんはウェールズで12歳から猟を学び、北極ではイヌイットと共に狩猟を経験。日本でも自然環境を守る上で狩猟は必要だと訴えていた。ただし動物に余計な苦しみを与えぬよう、1発の銃弾で仕留めなければならないと、罠猟は強く否定していたのだ。

    「当時は率直に怖かったです(笑)。でも、カジュアルな狩猟を提案してきた僕らがもう一度考えるきっかけをもらった出来事でした」

    ニコルさん、歌手の加藤登紀子さんとアースデイのステージに登壇した河野さん(左端)。写真提供/アースデイ東京

    その後、年末はアファンの森を訪ねるのが恒例になった河野さんは、ニコルさんから印象的なエピソードを耳にする。

    「アースデイ東京の初年度に、反捕鯨を掲げるグリーンピース・ジャパンと捕鯨文化を尊ぶニコルさんとの対談があったそうなんです。意見は平行線のままだったけれど、アースデイという地球のことを考えるという大きなテーマの前で、僕らは認め合って友達になることができたと」

    対立からの融和はニコルさんの十八番だったのかもしれない。人工林を放置している日本の林野庁も初めは敵として非難の対象にしていたものの、対話の末、アファンの森に隣接する約29ヘクタールの国有林の管理を任されるようになった。

    「つねに強気に見えるニコルさんでしたが、2019年末、最後にお会いした際には『自分はリーダーにはなれなかった』『気候変動の危機を止められなかった』と口にされていました。それほどの重圧を背負われていたのかという驚きと、これまでの功績に対する感謝の気持ちが改めて湧き上がりました。ニコルさん亡き今、アファンの森をどう維持していくのかということも課題になると思います。そのために新しい基金への協力も呼びかけていきたいです」

    森の一生の前で人の命は通過点にすぎない。ならば遺された森をさらなる未来へつなごう。ニコルさんはきっとアファンの森となって生きているのだから。

     

    アースデイとは?

    アースデイ(4月22日)は地球のことを考えて行動する日として1970年にアメリカで始まった市民運動。C.W.ニコルさんが実行委員長を務めたアースデイ東京は2001年にスタートし今年で20周年を迎えた環境イベント。 
    https://www.earthday-tokyo.org

     

    河野竜二

    「罠シェアリング」などのプロデュースのほか、地元で職業紹介事業「湘南WorK.」を立ち上げ。アースデイ東京の事務局長を2018年から務めている。

     

    「C.W.ニコル メモリアル 自然再生基金」が開設!

    「森づくりは100年先の未来をつくること」。その志半ばでの旅立ちとなったC.W.ニコルさんの想いを未来につなぐため、基金が創設された。倉本聰さん、加藤登紀子さん、野田知佑さんなど多くの著名人や団体が呼びかけ人として声を上げ、サポーターを募っている。

    https://afan.or.jp/cwnicol-memorial-fund/

     

    ニコルさん追悼番組放送予定

    NHK総合『”新型コロナ時代” をどう生きるか  C.W.ニコルの遺言』 <再放送>
    2020年8月7日(金)15:33~15:58「にっぽん ぐるり」内放送

    NHK総合『アファンの森よ永遠に ~C.W.ニコルからのメッセージ~
    2020年 8月10日(祝・月)21時~21時59分放送

    映像ファイル あの人に会いたい「C.W.ニコル(作家)」』
    NHK総合 2020年8月22日(土) 午前5時40分~ 午前5時50分放送
    Eテレ    2020年8月28日  (金) 午後1時50分~ 午後2時00分放送

     

    ※構成/甲藤麻美 写真提供/山田芳朗

    ※この記事は、2020年BE-PAL7月号に掲載された記事を再編集したものです。

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