宮古島に移住後、農家に転身!地方移住者のリアルライフとは? | 農業・ガーデニング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2020.02.05

    宮古島に移住後、農家に転身!地方移住者のリアルライフとは?

    私が書きました!
    ライター
    小林悠樹
    宮古島在住フリーランス。1988年2月12日、神奈川県生まれ。新卒で冷凍食品会社に営業として入社。勤続5年で新しいことにチャレンジしたくなり独立&宮古島移住。フードコーディネーターの資格を持ち、特技は「買い物に行かないとな~」という冷蔵庫の状況から夕飯を作り出すこと。著書は『移住にまつわる30の質問』(キッカケ出版)。

    ここ最近、都会を離れ地方移住を始める人が増えています。

    とはいえ、興味はあるけれどなかなか決心がつかない、という方も多いのではないでしょうか。

    そこで今回は「いつかは田舎へ移住したい」「農業に興味がある」という方に向けて、宮古島に移住後、農家に転身した須磨北雄(すま ほくゆう)さんにお話を伺ってきました。

    須磨さんは、農薬・化学肥料不使用で農業に取り組む「スマヤナチュラルファーム」のオーナーで、10年前に宮古島に移住されました。インタビューでは宮古島移住までの経緯、農業を始めた理由、宮古島の生活についてなど、いろいろとお聞きしました。

    宮古島に移住するに至った経緯

    ――さっそくですが、宮古に移住するに至った経緯をおしえてください。

    2007年に4カ月間、宮古島に滞在していたことがおおもとのきっかけです。当時、与那覇前浜ビーチにテントがたくさん張られていて、テント村みたいになっていました。そこで俺も、農作業のバイトをしながらキャンプ生活してたんですよ。最初の1カ月ぐらい。

    与那覇前浜ビーチ…宮古島一有名な海岸。その美しさは「東洋一美しいビーチ」とも呼ばれ、いまでは連日多くの観光客が足を運ぶ人気観光スポットとなっている。

    ―――いまでは観光客がたくさんいるので、考えられないですね。

    当時はOKだったんです。でも、キャンプ生活にもだんだんと飽きてきて、次にそこで知り合った人の家に居候になりました。

    ―――そのまま宮古島に拠点を置くようになったのではないんですか?

    いったん宮古島を出て、その後すぐアフリカに行って3カ月ぐらい滞在しました。

    ―――アフリカ!? アフリカでは何をされていたんですか?

    音楽の修業。コラっていうアフリカの弦楽器を学びに。ガンビアからセネガル、マリを移動しながら音楽を勉強していました。(コラ…西アフリカが発祥の弦楽器。セネガル、ガンビア、マリ、ギニアなどで親しまれる伝統的な民族楽器。その歴史は300年以上とも言われる)

    ―――音楽は以前からずっとされていたんですか?

    3ぐらいからギターを始めて、ハードロックのバンドやって。だんだんとブルースロック、レゲエが好きになり、アフリカ人アーティストに出会って「すげえな!」と感動したのがアフリカに興味を持ったきっかけかな。30歳の時にアフリカから東京に帰ってきたんだけど、「やっぱり宮古島が心地いいな」と思って本格的に宮古島に移住してきました。

    ―――なんという自由人…。

    ただ、移住してきたと言っても最初は居候しながら、車買って、家借りてって、かなり成り行きで生活していました。もともと東京育ちだけど、昔から「東京を離れたい」と思っていたのも大きいかな。

    エリートの道をはずれ、自由に生きる

    ―――なぜ東京は嫌だったんですか?

    母親がいわゆる教育ママで、中学受験して私立に入って。

    ―――須磨さんは、かの有名な慶應義塾出身ですよね?

    そう。慶應に入ったばかりのころは、東京を離れるなんて思ってもなかったし、大学出て普通に就職するもんだと思ってた。

    でも、高校ぐらいの時に山梨にキャンプに行ったのよ。その帰り、東京に向かう電車のなかの人の顔がだんだん暗くなるのに気づいて、大人になったら「ストレスのない場所で暮らしたいな」という気持ちが芽生えたの。

    ―――リアリティのあるエピソードですね。

    やっぱり都会と田舎では世界観が全然違う。こっちに移住してくる人は、やっぱりそういう人が多いかな。あと昔から離島が好きで、伊豆諸島とか三宅島とかいいなと思っていて。沖縄に移住した人が書いた本を読んで、いつか住みたいなと思っていました。

    ―――大学行ってその後は?

    大学行ったけど、就職しないで、北海道とかいろいろ旅して、なんだかんだそのまま。バイトやったり、放浪したりする生活を20代のころまではずっとしてた。だから企業で働いたことがないんだよね。

    ―――すごい。いまはご結婚されてご家族がいらっしゃると思うのですが、奥さんとはどうやって知り合ったんですか?

    代々木公園で太鼓の練習している時に。

    ―――そうなんですか!? それまた独特な出会いですね。

    当時の妻は、スーツ着て、会社員やってて。会社帰りに公園で、一緒に太鼓の練習したりしてよく遊んでました。その後、俺は北海道のアイヌのお祭りに毎年行っていたんだけど、そこに急に会社辞めて変な格好した奥さんが現れて。そこから仲良くなっていきました。

    ―――お子さんは?

    25歳。すくすく育っている。宮古島は子育て環境としてはやっぱりいいね。

    宮古島の生活とは?

    ―――こちらに来て10年ほどたちますが、宮古島の生活はどうですか?

    快適だよ。でもここ23年はちょっと雰囲気が変わりつつある。直接的に何か影響を受けたわけじゃないけど、畑の近くに移り住んできた家族が詐欺師だったというのはあったね(汗)。

    ―――それはびっくりですね。

    人が増えると少なからず、そういうよからぬ人が現れる。10年前と風景は変わらないけど、時の流れも速くなってる。昔はもっと緩かったと思うよ。そんなこともあり「島を出ようかな」と思ったこともあるけど、もうすこし腰据えてやってみようと今は前向きに考えています。

    ―――宮古島で暮らして大変なことはありますか?

    宮古島は総じて賃金が安い。生活費も最近は高騰しているし、物価が安いわけではないから暮らしづらくなっている部分は確実にあるかな。うちはなるべくお金のかからない生活を目指しているけど、子どもが大きくなってくるとどうしてもお金はかかってくるから。

    沖縄の最低賃金は約790円、東京の最低賃金は約1000円と、その差は200円以上(2019年10月時点)。にもかかわらずここ数年のリゾート開発の影響を受けて、宮古島では地価・生活費の高騰が社会問題化している。「1K10万円」という都心部並みの賃貸アパートが出るほどだ。

    ―――都会に未練はありませんか?

    自分は都会に未練はないけど、ある人だとこっちの生活はつらいかも。「あそこのラーメンが食べたい」とか(笑)。まあ、通販があればだいたいのものは手に入るし、不自由とか不便さはあまり感じない。しいて言えば、好きなアーティストのライブに行けないことかな。

    ―――奥さんもそんな感じですか?

    奥さんのほうが俺より縄文人目指しているようなところがあるから(笑)。より自然的な生活を目指してる。

    自然な形の農業を目指す。畑で直接販売が理想形?!

    ―――宮古島では、どうして農業を?

    昔からなんとなく農業やりたいというのはあったけど、最初はやり方もわからなかった。関東に住んでいる時に畑借りて、農業の真似事をやってみたけどなかなかうまくいきませんでした。宮古島に移住した当初も、家の目の前に畑があったから自分なりにやってみはみるものの全然作物が育たなくて。

    そんななか農家でバイトしたりするうちに、いま俺がやっている畑の主に出会って。本格的に農業を始めた感じかな。

    ―――師匠のような存在ですか?

    そんな感じ。その人は研究好きなタイプで、自然農を目指したりしていて。今は亡くなってしまったんだけどね。

    ―――1年の農業サイクルは、どんな感じでしょうか?

    夏から準備がスタートします。島では「10月の満月が過ぎれば、もう大きい台風は来ない」と言われていて、それが過ぎたらまずは島らっきょうとか島にんじんなどの植え付けを始めます。同時に畝の準備をしながら、いろいろなものを植えていく。春ぐらいまでは植え付けと収穫を繰り返しながら。それが終わるのがだいたい56月。そしたらまた畑の準備に入る、というのがおおまかな流れです。

    ―――宮古島は台風の影響をもろに受けると思うのですが、台風との付き合い方はどうですか?

    本島と違って台風時期を避けて栽培を進めるので、夏はオフシーズン、秋から春にかけてがメインシーズンになります。

    実は農業を始める当初、「宮古島だし熱帯果樹やりたいな」と単純に考えていたんだけど、現実はそう甘くないということを知りました。露地栽培だと台風が直撃したら一発でやられてしまうし、ハウス栽培だとお金がかかる。決して簡単にできるものではない。

    ―――農業は手間暇がかかるし、自然相手ですし、とても大変な仕事ですよね。

    そうですね。宮古島の夏は特に大変。とにかく暑い。立っているだけで、消耗します。草刈りなんか15分やって10分休んでという感じ。だから作業環境としては冬が一番いいかな。

    畑は農薬・化学肥料は使わずにやっています。農法も改善してきたいと思ってる。理想は耕起による土の撹拌を最低限にして、被覆植物を使って雑草を抑えたい。雑草を抑えられるようになれば、最低限の耕起で済むかなと。虫とか病気というよりは、雑草をどうコントロールするかが難しいところかな。

    畑を耕すことは、作物にとっていいことだと一般的に考えられている。しかし、一方で土中の環境が大きく変わることで、土本来が持つ「土壌改善力」が失われてしまうという意見もある。耕さない農業を「不耕起栽培」と言い、サステナブルな農法として注目を集めている。

    ―――作物はどこに販売しているんですか?

    島内のレストランに卸したり、あと個人のお客さんもいるよ。

    ―――みなさん、どこでファームの存在を知るんですか?

    最初はどうやって売ったらいいかわからず。かといってJA(農協)に出す気もなく。知り合いに協力してもらって、スーパーに卸そうとも考えたんだけど、いかんせん卸値が安い。これだと自分のやりたい農業ができないと思って、別の方法を考えなきゃと。

    そんななかで、Facebookで投げかけてみたんだよね。「こんな野菜が取れました」って。そうしたら予想外の反響があって。学生時代の友達に農業やっている人がまったくいないから、珍しがって買ってくれたりして。そこからだんだんと口コミで広まっていって、個人やレストランの取引先が増えていったかな。

    ―――島外発送もしているんですか?

    出荷量は島内・島外でだいたい半々ぐらいです。本島とは収穫時期がずれるから、向こうで出荷量が少ない時期に野菜を送れるのはこっちで農業をやる強みでもある。通販は個人販売だけでなく、無印良品の「諸国良品」で島にんじん、パクチー、島らっきょうなどの野菜セットの通販もやってるよ。

    ―――ネット環境と物流網がこれだけ発達しているので、場所的な制約は減っているということですね。

    特にSNSは馬鹿にできない。やっぱり口コミに勝るものはなくて、口コミで来てくれるお客さんは裏切らないし、理解ある人が多い。一般的なバイヤーは「どれだけの量をどれだけ安く買うか」なので。バイヤーに頼るよりも、自分で小規模でもいいから周りから固めようと思っています。もっと大きい取引をしたい、とも思うけど。いまはつながりを大切にしてるよ。

    畑でそんな話をしていたらちょうど島のおばあがやってきた。初めてで、昔から気になっていて野菜を買ってみようと思って声をかけたそう。

    以下、二人の会話です。

    おばあ 「農薬使ってないって聞いて。何があるか?」
    須磨さん「いろいろありますよ。島にんじんとか、ビーツとか」
    おばあ 「じゃあ、少しずつもらおうね」

    須磨さん「レタスとかも食べます?」
    おばあ 「ちょうだいな」
    須磨さん「パクチーは食べれます?」
    おばあ 「食べたことないけど、食べてみる」
    須磨さん「アオビユっていう野菜も入れておくので、ちょっと食べてみて」
    おばあ 「ありがとう」

    このあとも出身地の話、家族の話などの会話が繰り広げられていました。これぞ “島というような、それはそれはとてもほっこりする会話でした。

    さてインタビューに戻りましょう。

    ―――今みたいに畑で直接売ってもいるんですね。

    もっとも理想なのは、お客さんが畑に直接来て、実際に野菜の状態を見て、自分で収穫をしながら、使ってくれるというのがひとつの理想形。実際に畑を見ると、こういうふうに育っているんだとか、こういうふうに実がなるんだとかわかるし。畑に来てくれる人が増えてくれるとうれしいな。

    あと意外と大変なのが、出荷作業。出荷に合わせて野菜の状態を考えて、包装して、納品書・伝票書いてってやっていると結構時間がかかる。畑の直接販売なら、その手間が省けるからとても助かる。畑に来て「いいな」と感じてくれる人は、人手が必要な時に声をかけたら畑に来てくれたりもするので、お客さんが支援者みたいになってくれるのも理想のひとつだね。

    ―――今後のビジョンはありますか?

    今後のビジョンとしては今の場所で7年ぐらいやってきたけど、今年は新たな取り組みを始めようと思っています。

    ―――そうなんですね。どのような構想を練られているのでしょうか?

    たとえば、荷川取牧場という宮古馬を飼育している牧場があるんだけど、そこで出る馬糞を有効活用して堆肥を作りたいと考えています。

    ―――宮古馬は一時期ニュースにもなりましたよね。

    そうです。宮古馬は沖縄の天然記念物に指定されていて、いま絶滅の危機に瀕している在来馬。宮古馬の馬糞を使わせてもらって、その結果、馬の保護につながるような農業の形を作っていけたらと。

    ―――とてもいい取り組みですね。

    いまは単年作物がメインだけど、そろそろ果樹などの永年作物もやってみたいなとも考えています。単年作物だと、野菜だったら、シーズン終わって、畑また耕して、育てて、の繰り返し。毎年リセットしてというよりは、長期の視点でやれるような形にしたい。畑というよりはガーデン的なイメージかな。多年草、ハーブなども増やして、多様性のある場所作りを目指したいです。

    今回は、宮古島に移住後、オーガニックな農業を営む須磨さんにお話を伺いました。野菜を買ってみたい、畑の様子をもっと知りたいという方は、ぜひ「スマヤナチュラルファーム」のFacebookページをチェックしてみてください。私もインタビュー後に野菜を購入させていただきました。いずれの野菜も美味しかったです。

    スマヤナチュラルファーム

    Facebookページ:https://www.facebook.com/SumayaNatural

    電話番号:080-3123-7071

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