徳島県のゼロ・ウェイストの町で始まった、クラフトブルワリーRISE &WIN Brewing Co. | BE-PAL

徳島県のゼロ・ウェイストの町で始まった、クラフトブルワリーRISE &WIN Brewing Co.

2021.07.09

RISE & WIN Brewing Co.のビール。左から上勝晩茶を使ったIPA、規格外品の甘夏の皮を活用したラガー、柚香(ゆこう)の皮を使ったルーヴェンホワイト、柚香の果汁を使ったモーニングサマー(セッションNEIPA)、徳島の海塩と乳酸発酵のビヨンド・ザ・シー(ゴーゼ)、ローストした栗の殻でスモーキーな香りづけをしたチェスナッツエール(アンバーエール)。RISE & WINの意味は「上へ・勝つ=上勝」。ZERO WASTEは上勝町 が取り組むゼロ・ウェイスト 活動を表す。

地域に根づき、地域とともに成長するクラフトブルワリーを紹介するシリーズ。第14回は徳島県上勝町のRISE & WIN Brewing Co.を紹介する。葉っぱビジネスで知られた町だが、もうひとつ、ごみゼロの町としての顔もある。

 日本初「ゼロ・ウェイスト宣言」をした町で

上勝町は日本で初めてゼロ・ウェイスト宣言をした町として知られる。2003年に「2020年までに町から出す焼却・埋立ごみをゼロにする」と宣言したのだ。徳島市から車で約1時間。人口1,511人(2020年)。町の人は、町内で1箇所しかないゴミ・ステーションで、ごみを45分類している。ごみのリサイクル率は80%を越える。昨年、ゴミ・ステーションは交流ホールやホテルを備えた「上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHYワイ)」にリニューアルされ、2030年に向けてあらためてゼロ・ウェイスト宣言をしている。

上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)。町の人はここでごみを45分類に分別する。見学に訪れる人も多い。

上勝町のクラフトブルワリーRISE & WIN Brewing Coには前身がある。食品や調味料、石けん、シャンプーなど量り売りをするスーパー、上勝百貨店だ。個包装の過剰包装をやめ、ごみを減らす……ごみゼロをめざす町らしい店だ。しかし小さな町のこと、これだけでは多くの人に来てもらうには難しく、ビジネスとして限界があった。「外から人を呼べるものが必要だ……」。当時の運営者はヒントを求めて、先進的なエコタウンとして知られるアメリカ・オレゴン州のポートランドへ視察に向かった。そこで目にしたのが、ビールを量り売りしているブリューバーだった。

2015年にRISE & WIN Brewing Co.(以下RISE & WIN)がオープンした。

設計は中村拓志&NAP建築設計事務所。壁材、窓枠などはゴミ・ステーションに集められた廃材をリユース、リサイクルしている。

RISE & WINの正式名は、RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Storeという。ブルワリーに併設されたレストランでは、できたてのクラフトビールの他、徳島の食材をふんだんに使用した食事やBBQも楽しめる。

そして、今も食品などの量り売りは続いている。ごみ・ステーションに集められた、色も形もさまざまな瓶から作られたシャンデリア。衣類などの生地をリメイクしてつくられたエプロン、小物などが所狭しと並ぶ。値段は決して安くはない。手が込んでいるのだから当然だ。地元の人も「お客さんが来た時のお土産やプレゼントを選ぶとき」などに、よく訪れるそうだ。

General Storeの店内。空き瓶を利用したシャンデリアなど、廃材を活かした雑貨が目を引く。

ビールをきっかけに上勝に興味を持ってもらえれば

RISE & WINは、2015年の開業当初からブリューバーを併設し、テイクアウト用のビールの量り売りを始めた。

「昨年のコロナ禍でグラウラーの認知度は一気に高まりましたが、当時はグラウラーという言葉が一般的ではなかったですね」と話すのは、2015年からのスタッフ、現在ブリュワーの引田佑介さんだ。

RISE & WIN Brewing Co.はオープン当初からグラウラーを活用していた。

トータルではボトルで購入していくお客さんのほうが多いが、グラウラーを手に毎週のように買いに来る常連さんもついていると言う。

筆者は定番のビールを飲んだ。

副原料に柚香(ゆこう)という変わった名前が目に留まる。柚子と違うの?徳島県上勝町特産の柑橘類で、徳島県が全生産量の99%を占め、その大半が上勝町で生産されている。しかも、果実の状態ではほぼ流通せず、そのほとんどがポン酢などの原料や地元で消費されるという、知られざる柑橘類なのだ。

「地元の人は絞って酢にして使うんです。残った皮は廃棄されるので、それを引き取って副原料に利用しています」

柚香の実。地元では絞って酢として使われる。

そうしてできたのが「LEUVEN WHITE(カミカツルーヴェンホワイト)」だ。白濁し、ベルジャンホワイトのようなうまさと爽やかさ。コリアンダーだけでなく、柚香ピール(皮)が隠し味ならぬ隠し香りか。醸造の技術なのだろうが、柚子っぽくないところがいい。柚香の果汁を副原料に使った「Morning Summer(カミカツモーニングサマー)」はヘイジーなIPAだが、めっぽうフルーティである。

このほか、乳酸菌で発酵させて作る「上勝晩茶」を使ったIPA、ローストした栗の殻を麦汁に投入し、ほんのりスモーキーな香りづけをしたアンバーエール。どのビールもドリンカブルで、この土地ならではのビールづくりを楽しんでいる雰囲気を感じる。

「ビールについては、ことさらエコとか、ゼロ・ウェイストをアピールするつもりはありません。ただ、うちのビールをきっかけに上勝の町やごみの分別や環境のことに、ちょっと関心を持ってもらえればうれしい」

そう話すブリュワーの引田さんは地元の人ではない。エコや徳島に興味があって上勝に来たのでもない。ブリュワーになる前はコーヒーロースターの仕事をしていた。独自のカフェ文化をもつオーストラリアへワーキングホリデーを利用して勉強へ。ところがオーストラリアに着くと、「クラフトビールがおいしすぎて(笑)」、ホームブリューを始めるまでにハマってしまった。

「オーストラリアの人は明るいうちからビールを飲んで、観光客や外国人ともすぐに打ち解ける」そういうビールのハッピーな雰囲気もろとも惚れ込んだ。帰国後、たまたま目にしたRISE & WINの「土日バイト募集」のチラシを見つけて応募した。できたばかりのブルワリーに飛び込んだのは、「早く一人前のブリュワーになりたかった」からだという。

製材所の跡地を利用した第二工場。2017年開設。赤い建物から車で15分ぐらい離れている。アメリカ・ポートランドの醸造設備会社に特注したタンクが並ぶ。酵母の培養を行うラボ、バレルエイジド(木樽熟成)の設備も備える。年間で最大約110KL醸造可能。

移住組の若い人たちで新しいつながりが発展中

引田さんが上勝町に来た頃は、いっしょに飲みに行けるような若い人も店もなかったという。町の人口減少は今も止まらない。しかし、ここ数年、若い移住者が着々と増えている。RISE & WINのスタッフだけでも5〜6人が移住してきた。

今、上勝町の観光サイトを見るとオシャレなカフェやイタリアンレストラン、ホテルなどが並ぶ。その多くに移住者が関わっている。RISE & WINもブリューバー、BBQに加えグランピングKamikatz Rolling Roomをオープンしている。はじめに紹介した上勝町ゼロ・ウェイストセンターは、視察だけでなく観光の人も呼び寄せている。

「これまでウチに来て帰るだけだったのが、他に行けるアトラクションができたことで、2~3日遊んでいけるようになっています。

ぼくも、2030代の若い人が増えたので、いっしょに飲みに行ったりイベントを開いたりする機会が増えました。困ることですか?車がないと動けないことぐらいですかね」(引田さん)

コロナ禍で今はリアルなイベントは開催できない。今年はオンラインでブルワリー見学ツアーや、上勝町ゼロ・ウェイストセンターと共同でRISE & WINの建築設計士の中村拓志さんや、エコに取り組む若者とのトークショーなどを開催してきた。

「やっぱりぼくら、ビールを造って売るだけではなく、この町に来たいと思ってもらえるような活動をしていきたいんですよ」

2人にひとりが65歳以上という超高齢な町に、若い移住者がぽつりぽつりやって来る。徳島市内から車で約1時間。多くの限界集落を抱えるこの町に、新しいつながりが芽生えている。そこにクラフトブルワリーがあることは、どんなアドバンテージをもつのだろう。

RISE & WINの若きブリュワーたち。真ん中が引田佑介さん。

所在地:徳島県勝浦郡上勝町大字正木字平間237-2 
(東京・東麻布にKAMIKATZ TAPROOMあり)
https://www.kamikatz.jp/ja/toppage.html

 

私が書きました!
ライター
佐藤恵菜
ビール好きライター。日本全国ブルワリー巡りをするのが夢。ビーパルネットでは天文記事にも関わる。@ダイムやSuits womanでも仕事中。
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