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登山やトレッキング、「自然の中を歩く旅」に備えて読んでおきたい2冊の本

2020.06.11

私が書きました!
著述家・編集者・写真家
山本高樹
1969年岡山県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとザンスカールに長期滞在して取材を敢行。以来、この地方での取材をライフワークとしながら、世界各地を取材で飛び回る日々を送っている。著書に『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)『ラダック ザンスカール スピティ 北インドのリトル・チベット[増補改訂版]』(ダイヤモンド社)など。厳寒期のザンスカールで凍結した川の上を歩く究極の旅を綴った新刊『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)が2020年4月に発売。

今回紹介する、エイアンドエフブックスから刊行されている2冊の本。統一感のある装丁も魅力的。

自然に対して新しい視点を与えてくれる本

トレッキングや登山など、自然の中に身を置く時、みなさんはどんなことを考えているでしょうか? 眺望がすばらしい、空気が澄んでいる、道が歩きにくい、おなかがすいた、など、いろんな考えが頭の中を巡っているのではないかと思います。

では、自分を取り巻いている地形や動植物の一つひとつに、それぞれどんな意味があるのか、考えてみたことはあるでしょうか。あるいは、自分が歩いているトレイルそのものが、どのような成り立ちを経て今ここにあるのか、と考えたことは? 自然の中を歩いて旅する時に備え、そういったそもそものところから思考を巡らせて新しい視点を与えてくれる2冊の本を、ここで紹介しようと思います。いずれも、エイアンドエフブックスから刊行されている本です。

『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』 ロバート・ムーア著 岩崎晋也訳 エイアンドエフブックス 本体2200円+税

『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』

この本の著者、ロバート・ムーアは、かつて米国のアパラチアン・トレイルをスルーハイクした時の経験から、「トレイル=道とは、そもそも何なのか」という疑問を抱き、取材と研究を始めました。その取材は実に徹底していて、5億6500万年前の原始生物が遺したトレイルの化石を見に行くことから始め、アリなどの昆虫がトレイルを形成するメカニズム、ゾウなどの野生動物や家畜の羊などが移動する時の習性、古代の人間がどのように道を形成して文化を育んできたか、といったテーマを、一つずつ丹念に分析しています。また、自身も大きな影響を受けたアパラチアン・トレイルが誕生するまでの歴史や、近年になってその概念が大西洋を超えて拡大している点についても、詳しく紹介しています。

この本を面白くしているのは、膨大かつ多岐にわたる資料を集めて「トレイル=道」を分析しているだけでなく、それぞれのテーマを取り上げる際、著者自らがその筋の研究者や専門家に会いに行き、できるだけ自分自身でも実体験を得ようと体当たりでチャレンジしている点です。化石の発掘現場に赴いたり、チェロキー族の羊飼いの仕事を体験したり、ハンターとともに樹上でシカを待ち伏せたり、先住民の古いトレイル調査に同行したり……。著者の原点であるアパラチアン・トレイルでも、チェロキー族の友人とともにセクションハイクをしています。

特にエピローグで描かれている、北米大陸を長年歩き続けてきた伝説のハイカー、ニンブルウィル・ノマドに同行した時のエピソードは、非常に印象的です。 道とは何か。なぜそこに道があるのか。道は世界と人をどうつなぐのか。そして私たちは、生き方、人生という道を、どのように選ぶべきなのか。この本は、そういったさまざまな示唆を私たちに与えてくれます。

『失われた、自然を読む力』 トリスタン・グーリー著 田淵健太訳 エイアンドエフブックス 本体2400円+税

『失われた、自然を読む力』

作家で探検家でもある著者のトリスタン・グーリーは、自然の中に潜んでいるさまざまなサインを手がかりに、現代社会に生きる人間が忘れかけている自然を読み解く力を身に付け、自然の真のありようを理解し、楽しもう、と本書を通じて提案しています。太陽、月、星などの天体。空と雲、風、雨、虹などの気象。岩や土、水などの地質。樹木、植物、鳥、動物……。多岐にわたる膨大な数の自然のサインとその解読法が、ぎっしりと詰め込まれています。 地面に残る足跡の見分け方。木の葉をコンパスとして用いる方法。虹の色による雨の度合いの予測。星の位置で現在時刻を知る方法。鳥の警戒声の聞き分け方などなど……。一度通読しただけではとても覚え切れないほどの情報量なので、テーマごとに分かれている章を折りに触れて読み返して、知識を吸収するのもいいかもしれません。

豊富な知識を経験を持つ探検家である著者ですが、そんな彼も悪戦苦闘した、ボルネオ島の奥地のジャングルをダヤク族とともに徒歩で旅した時の記録は、本書の中でもとりわけ興味深い章になっています。 この本を通じて感じるのは、自然の中にある、天体、気象、地質、動植物、そして人間も含めて、あらゆる存在はそれぞれ有機的につながりあい、影響し合っているということ。さまざまなサインを手がかりに自然を読み解くことは、そうした関係性についての理解を深め、尊重することにもつながるのではないでしょうか。

山本高樹の新刊『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』発売!

『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』
文・写真:山本高樹 価格:本体1800円+税 発行:雷鳥社 A5変形判288ページ(カラー77ページ) ISBN978-4-8441-3765-8
彼らは確かに、そこで、生きていた。氷の川の上に現れる幻の道“チャダル”を辿る旅。インド北部、ヒマラヤの西外れの高地、ザンスカール。その最奥の僧院で行われる知られざる祭礼を目指し、氷の川を辿り、洞窟で眠り、雪崩の跡を踏み越える“冬の旅”に挑む。人々はなぜ、この苛烈な土地で生きることを選んだのか。極寒の高地を巡る旅を通じて“人生の意味”を問う物語。

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