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達人が伝授 !焼くのが難しい"塊肉"を美味しく焼いてみよう!



塊肉BBQの達人 田中 翔さん

コツは「じっくり焼いて、じっくり休ませる」
幼少のころから野外で豪快に肉を焼く父の姿を見て育った。
生粋のアウトドアのプロ・田中翔さんは、年に100回は各地で肉を焼く、肉焼きの達人でもある。牛、羊、豚。3種の塊肉を王道スタイルで焼いてくれた。
目指すはジューシーな仕上がり。オーブン効果を狙える蓋付きの道具でじっくり焼けば、それが叶う。パサつくので焼きすぎは禁物だ。心配なら途中でフタをあけて確認しよう。そして最大のコツは焼いた後にあり。
「余熱で仕上げる意味も込めて、焼いた肉はアルミホイルでくるんでじっくり休ませることが大事。旨みがぎゅっと閉じこもるし、肉汁も流出しません」
じっくり焼いて、じっくり休ませる。翔さんは「完成を待ちながらのんびりできるって最高でしょ? 塊肉の醍醐味です」と空を仰いで椅子で寛ぐ。
塊肉も人間も休息が大事なのだ。というわけで、休日は塊肉を焼きにキャンプへGO!
塊肉を焼く 3か条
1 塩はしっかりふる
厚みがある分、塩をきつめにふって持ち味を引き出す。まずは塩味で味わおう。
2 蓋をして焼く
オーブン効果がある蓋付きの道具で焼けば、ふっくらジューシーに焼き上がる。
3 焼いたら休ませる
肉は焼いた時間と同じくらいの時間、休ませるのが基本。肉汁の流出を防げる。
しっとりやわらか〜ローストビーフ
にんにくとローズマリーが香って風味豊か。ダッチオーブン×炭でじっくり火を入れればうっとりするほど艶やかなロゼ色に!

牛
放牧で育てられたオージー・ビーフは赤身とサシのバランスが良く美味。今回は脂身の少ないランプ肉を使用。

材料(つくりやすい分量)
牛ランプ肉(塊肉)…1㎏
おろしニンニク…適量
ローズマリー…1枝
塩…適量
黒コショウ…適量
オリーブオイル…適量
作り方
❶肉の全面に塩、コショウをふり、手ですり込む。続けておろしニンニクを全面に塗り込む。

隠し味はおろしニンニク。チューブ入りが便利だ。全面にたっぷり塗り込もう。
❷ダッチオーブンの底一面が濡れる程度のオリーブオイルを注いで中火にかける。ローズマリーを入れて熱し、香りが立ってきたら取り出す。
❸肉を入れ、全面に焼き色をつけて表面を焼き固める。いったん取り出す。

肉汁を閉じ込めるイメージで、全面を焼き固める。こんがり焼き色がつけばOK。
❹ピンポン玉大に丸めたアルミホイルを4つ、鍋の底に等間隔で入れ、その上に網をのせる。

時間をかけて焼くために底上げを。肉への下火のあたりがやわらかくなる。
❺肉を網の上に置き、蓋をする。蓋の上に火をおこした豆炭をのせる。ガスバーナーを弱火にし、30分ほど焼く。
❻焼き上がったら肉の中心部に温度計を刺し、温度を確認。55度C程度でミディアムレアだ。二重にしたアルミホイルに包み、焼いた時間(30分ほど)休ませる。

休ませることで余熱が入る。と同時に、肉汁が落ち着き、切っても肉汁が流れ出ない。
❼薄く切り分けて器に盛る。好みで塩をふって食べる。
焼POINT 豆炭を分散させて配置

コツは上火メインで焼くこと。蓋の上に、豆炭3~4個の塊を3か所に分散させて置くとちょうどいい火加減に。焼きすぎぬよう、ときどき蓋を開けてチェックしよう。
旨いARRANGE ローストビーフサンド

カンパーニュや食パンに、好みの葉物野菜、レッドオニオン、スライスしたローストビーフ、そしてたっぷりのイエローマスタードをかけてサンド。泊まりがけキャンプなら、朝食にしても最高。贅沢な朝を迎えられる。
カリカリ油&レアを楽しむ! ラムラックの網焼き
ポイントは強火で焼いて、しっかり休ませること。サクッと歯切れ良く、甘やかな旨みに悶絶必至!白、緑、爽やかな2種のソースで召し上がれ。

羊
クセがなく旨みの濃いオージー・ラムの骨付き塊肉を使用。1本ずつ切ると定番のラムチョップになる。

塊肉BBQの便利アイテム

肉を触るたび水場へ手を洗いに行くのは面倒。使い切り手袋をはめれば、作業がはかどる。

焼いた肉を包むのにアルミホイルは重宝。料理用のデジタル温度計で肉の芯温をチェック。
材料(つくりやすい分量)
ラムラック…1㎏
塩、黒コショウ…各適量
作り方
❶肉の骨側を上向きにし、白い薄皮の真下に包丁の先を入れてきっかけをつくり、手で薄皮をはがす。

融点の高いラム肉は強火で焼く。脂身の面はカリッと香ばしく焼き上げよう。
❷脂の面に格子状に包丁で切り込みを入れる。
❸全面に塩、コショウをふる。
❹バーベキューグリルに火をおこした豆炭を入れ、270度Cに温める。網をのせ、ラムをまずは骨の面を下にして置く。

肉の中心部の温度が55度C程度ならミディアムレア。ロゼ色に仕上がる。
❺蓋をして、7~8分焼く。上下を返し、さらに5~6分焼く。
❻中心まで温度計を刺し、温度を確認。55度C程度でミディアムレアだ。
❼アルミホイルを2重にしてラムを包み、焼き時間と同程度(13~14分)、肉を休ませる。
❽骨と骨の間に包丁を差し込んで切り分ける。
※グリルに蓋がついてなければ、ボウルなどをかぶせて蓋代わりにする。
焼POINT 下準備で差がつく!


ラムはサクッとした歯切れの良さが身上。食感良く仕上げるために、薄皮をはいでおくといい。さらに、厚みのある脂身に格子状の切り込みを入れることでムラなく焼き上がる。
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格子状の切り込みを入れるとハリネズミを思わせる焼き上がりに! テンション上がります。
混ぜるだけ! ラムを味わうソース2種
〈グレモラータ〉
パセリ(粗みじん)…3枝
ニンニク(みじん切り)…1/2片
レモン果汁…適量
レモンの皮(刻む)…少々
塩…適量
オリーブオイル…適量

〈ヨーグルトソース〉
ヨーグルト(プレーン)…大さじ4
おろしニンニク…小さじ1
レモン汁…1/4個分
塩…少々

サクサクスパイス衣で旨み凝縮! 豚バックリブのBBQ
低温でじっくり柔らかく焼き上げる王道のBBQ料理。ソースは3段重ね。スパイシー&フルーティーで後引くおいしさだ。手づかみで食らいつこう!

豚
豚の背中側の骨付き肉"バックリブ"は、スペアリブより小ぶりで柔らか。初心者でも焼きやすい。


材料(つくりやすい分量)
豚バックリブ…1㎏
イエローマスタード…適量
〈混合スパイス〉
パプリカパウダー…大さじ2
ガーリックパウダー…大さじ1
ドライオニオンパウダー…大さじ1
クミンパウダー…小さじ1
チリパウダー…小さじ1
塩…大さじ1
黒コショウ…大さじ1/2
砂糖…大さじ1
〈モップソース〉
バター…20g
リンゴ酢…大さじ2
パインジュース…大さじ2
ウイスキー…大さじ2
〈バーベキューソース〉
ケチャップ…大さじ3
ウスターソース…大さじ1
リンゴ酢…大さじ1
ハチミツ…大さじ1
醤油…小さじ1
おろしニンニク…小さじ1
ガーリックパウダー…少々
作り方
❶肉の骨側を上向きにし、白い薄皮の真下に包丁の先を入れてきっかけをつくり、手で薄皮をはがす。
❷全面にイエローマスタードを塗り、混ぜ合わせた混合スパイスをすり込む。
❸バーベキューグリルに火をおこした豆炭を入れる。グリルの底中央に隙間をつくり、アルミ容器を置いて水を注ぐ。
❹網をのせて、肉を置き、蓋をする。170~180度Cで45分ほど焼く。
❺モップソースの材料をシェラカップに入れて火にかける。沸いたら2分ほど加熱してアルコール分を飛ばす。
❻モップソースをスプレー容器に入れて、肉にかける。刷毛で塗ってもOK。15分おきに4回、繰り返す。
❼肉に完全に火が通ったら、混ぜ合わせたバーベキューソースを両面に刷毛で塗る。
❽アルミホイルを2重にして肉を包み、30分ほど休ませる。
❾骨と骨の間に包丁を入れて切り分ける。
ソース3段重ねで旨さ3倍!

糊代わりのマスタードを塗り、混合スパイスをふり、味の土台を作る。
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途中でフルーティなモップソースをスプレー。しっとり仕上がる。
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仕上げに塗るのはBBQソース。醤油を加えれば日本人好みの味わいに!
焼POINT 蒸気でしっとり焼き上げる

グリルの底に水を注ぐと蒸気で肉がよりしっとり焼き上がる。グリルに蓋がついてなければ、大きなボウルやバットで代用を。
旨いARRANGE ほぐし肉と卵のどんぶり

手で骨から肉をはがし、ご飯を盛った丼にのせる。卵黄を落とし、余ったバーベキューソースをかければ完成。スパイシーな香りがご飯に抜群。この丼のためにぜひ肉を食べ切らずに残そう。あるいはたっぷり塊肉を用意して焼こう!
※構成/安井洋子 撮影/猪俣慎吾
(BE-PAL 2025年11月号より)







