“ ブラックダイヤ ” と命名されたメダカ 漆黒の体色に輝くラメ
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    自然観察・昆虫

    2019.03.01

    “ ブラックダイヤ ” と命名されたメダカ 漆黒の体色に輝くラメ

    神奈川県川崎市在住の中里良則さんが作出された、青ラメ幹之(みゆき)(星河)と“オロチ”を交配して作られた品種である。“オロチ”の血統は、太陽光を浴びなくても黒さがはっきりと濃く出るので、室内でもこの体色の黒さが楽しめる長所がある。多くのブラック系メダカは、太陽光を浴びれば更に黒く、室内で飼育していれば体色が薄くなりグレイがかってきてしまうのだが、“オロチ”の持つ遺伝子は、太陽光を浴びなくても黒くなるのである。

    “ブラックダイヤ”の元親となった青ラメ幹之。

    “ブラックダイヤ”の元親となった“オロチ”。

    “ブラックダイヤ”は、青ラメ幹之との交配ではF2 で“オロチ”の黒さを受け継いだもの、青幹之、白幹之のような青と白の基調色のもの、そして、楊貴妃メダカが見せる朱赤色のもの、幹之血統ではない単にシロメダカに酷似したもの、“オロチ”が持つ透明鱗性を見せるものなど様々な個体が出現した。

    当然、F2 ではこういったバラけ方をするのだが、“オロチ”からの黒さと青ラメ幹之からのラメの両方を持った個体が5%程度であった。その5 %の中から種親を選び、F3 が誕生、ここで初めて呼称的に“オロチラメ”と呼べるまでになったのである。 単に呼称として用いていただけで仮称である。

    2018年春当時の“ブラックダイヤ”。

    2018年春当時の“ブラックダイヤ”。

    “オロチ”から来る室内でも体色が真っ黒になり、ラメ鱗を持つ個体の出現率はF5 で80 %に達した。2018年3月、全国的にリリースされた時に、“ブラックダイヤ”の呼称が広く使われるようになったのである。

    “オロチ”

    “オロチ”は、2016 年、奈良県の『飛鳥メダカ』を主宰される谷國昌博氏が作出した、全身、真っ黒なメダカである。「“オロチ”以上に黒いブラックメダカはいない」と誰からも認められる品種と言える。普通のブラックメダカ系統では黒色素胞が乗りにくい、下顎部、腹面のキールや腹部も黒くなる見事なオールブラックなメダカである。谷國さんの独特な選別淘汰によって作られたと言っても過言ではないだろう。“オロチ”の目はいわゆるパンダ目と呼ばれる、目の中の虹色素胞まで真っ黒なのだが、「全身がパンダ系の透明鱗か?」と言われると、これだけ黒色素胞が乗るということは透明鱗性ではなく、頭部と体側の透明鱗性が異なるメダカだと考えられる。

    この“オロチ”の最大の魅力は、「室内飼いをしても黒色が全く褪めない」ことである。室内で卵から育てた直系の“オロチ”は、太陽光を一切浴びなくても、真っ黒になるのである。スモールアイの保護色機能の低下によって褪色現象が失われたと言われるレベルとは異なり、新たな遺伝子が作られた可能性が高く、1.5cm を超えた時点から稚魚、若魚は真っ黒になる。“オロチ”が持った遺伝子が、“ブラックダイヤ”に活かされたのである。

    2018年春に完成していた“ブラックダイヤ”だが、作出者である中里氏は、当時の個体に満足することなく、さらに厳しい選別淘汰を続け、累代繁殖をされてきたのである。その結果、更に“ブラックダイヤ”の見せる体色は美しさを増したのである。改良メダカの面白さは、別系統を交配して、新たな表現のメダカを作ることにあるが、新しい表現が誕生したから完成したというものではない。それを更に固定度を上げ、美しさを増す方向は簡単ではないのである。全国的に有名になった呼称を持つメダカの作出者は、それを更に進めていく最先端を行くことにもなる。

     そういった機会をようやく春めいてきたこれからの季節に、多くの方々にチャレンジしていただきたい。

    撮影・文/森 文俊


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