
今回は、防災訓練や防災イベント、犬の集まるイベントなどで行っている「うちの子救助犬体験」のレポートとともに、私たちの思いの詰まった、このプロジェクトのお話をしようと思います。
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『うちの子救助犬プロジェクト』を立ち上げた理由
近年では、災害救助犬の活動がニュース等で取り上げられることも増え、救助犬に興味を持つ方が増えてきました。それでもまだ、どこか遠い世界の話のように感じているのではないでしょうか.
確かに、救助犬の認定試験に合格して、厳しい環境の現場で活動をすることはとてもハードルが高く、また、訓練をしたからといって、どの犬でも活躍できるとはいかないかもしれせん。

救助犬ハンドラーとして捜索現場に向かった体験から思ったこと
2024年の能登半島地震では、捜索に行きたいのに道が完全に塞がれてしまい、何日も現場に入れない地域がありました。また、以前ある捜索隊の方が「飛んでいる虫でさえ手がかりになります」とおっしゃっていた言葉が、深く記憶に残っています。
そんな経験をするたびに思うのが、「愛犬が家族や親しい人を探すヒントを与えてくれるかもしれない」ということ。
しっぽを振る、クンクン鳴く、飼い主さんだけがわかるそぶりを見せるだけも大丈夫。日頃から遊びながら練習していれば、救助犬のように決められたアラート(見つけたら吠えて知らせる)をしなくても、愛犬が何か伝えたいということがわかるようになります。

犬たちが持つ得意なことを生かして!
犬たちはみんな人間にはない“素晴らしい嗅覚”を持っています。もちろん、あなたの愛犬もです。家庭で大事にされている犬はみんな家族が大好き。家族のにおいを捜すという行動を犬達は教えなくても普段の生活でごく自然に行っています。
もしもの時、愛犬があなたのご家族を救う力になってくれるかもしれないのです。
地震で倒壊した建物などからの救出は、そのほとんどが家族や近所の人に救出されているという調査報告が東京消防庁のウェブサイトにも載っています。

引用:阪神・淡路大震災から学ぶ自助、共助の大切さ | 東京消防庁
愛犬がもつ“素晴らしい嗅覚”が、あなたやご家族の救出の力になってくれるかもしれない、と私たちは思っています。
愛犬たちにこの喜びを知ってほしい!「うちの子救助犬体験」レポート
救助犬ハンドラーの先輩であるつるみさんと私は、自分の家族でもある犬を災害救助犬として育てています。 実際に訓練していて感じるのは「犬にとって飼い主(ハンドラー)と一緒に嗅覚を使って何かを捜すこと(=捜索)はとても楽しい」ということです。

参考記事:「救助犬の仲間たちのものがたり~エムとクレア編【災害救助犬コアと家族の日記 Vol.7】」
家庭犬に無理なくできる形で救助犬の活動を広めたい。そんな思いで『うちの子救助犬プロジェクト』を立ち上げた私たちは、防災訓練やイベント等で「うちの子救助犬体験」を行っています。
愛犬にあなたや家族を捜すことを教えてみましょう
ここからは、飼い主さんも犬も楽しくできる「うちの子救助犬体験」の一部をご紹介していきます。
訓練に入る前の心がけ、用意しておきたいもの
●愛犬の性格を知ろう
年齢や犬種、個体差、得意なこと、苦手なことなどを考慮し無理をさせないようにしましょう。
●他の子と比べるのはやめよう
夢中になると、他の子と比べてしまうことがあります。それぞれの犬の個性を大切にしましょう。広域をエネルギッシュに捜す犬、マイペースだけどしっかり丁寧に捜す犬、それぞれの犬に長所があります。
●愛犬の好きなものを用意しよう
発見したときのご褒美を用意しましょう。トリーツやおもちゃ、ボールなど、愛犬がいちばん好きなものを見つけましょう。救助犬のクレアは茹でた鶏むね肉、コアはボール遊びをご褒美にしています。

それでは練習をしていきます。
第1段階 「人のところへ行くといいことある」ことを教えましょう
1.犬から少し離れたところにしゃがみ、犬を呼びます。
2.犬が来たらほめて、ご褒美をあげます。

すぐにできる子もいれば、なかなかうまくいかない子もいます。できたことだけを評価しないで、いいところを見つけて、愛犬のペースに合わせた練習をしましょう。
第2段階 かくれるところを犬に見せて、捜してもらう
まず「さがせ」「サーチ」「どこ?」などキュー(合図)を決めてから、 犬をリードにつないで、家族や友人に持っておいてもらいます。
1.名前を呼んだり、おもちゃを持って、犬の関心をひきながら移動し、ソファの向こうや、家具の陰などにしゃがみます。初めは犬が一番好きな人がかくれる役になりましょう。
2.「さがせ」などのキューを言って犬を離します。

3.犬がかくれている人のところに来たら、ご褒美をあげます。 これは救助犬の訓練ではランナウェイと言われる基礎の練習。
救助犬の訓練では見つけたら、吠えて知らせる「アラート」もしなくてはいけませんが、うちの子救助犬では、飼い主さんが愛犬のしぐさ(この子がこの行動をする時は「ここにいるよ」と言っているな、等)をよく観察しましょう。

第2段階ができるようになったら、かくれる人を変えたり、犬にかくれるところを見せずに捜せるように少しずつステップアップして練習してみましょう。
イベントでは屋外で練習していますが、室内でもできます。カーテンや押入などにかくれてみてください。こうした練習を日頃からしておくことで、万が一、トレッキングやキャンプの時に愛犬とはぐれてしまった時にも、愛犬の方からあなたのにおいをたどり、見つけてくれるかもしれません。
愛犬と楽しくチャレンジできる『うちの子救助犬プロジェクト』。あなたも参加してみませんか?
うちの子救助犬の練習は飼い主さんと愛犬の楽しい「かくれんぼ遊び」です。嗅覚、聴覚、視覚、身体をフルに使い、飼い主さんと一緒に取り組むことで、あなたの愛犬はあなたとの絆を深め、あなたや家族、親しい人を探すことに喜びを感じるはずです。
「うちの子救助犬体験」に参加したことがきっかけで、救助犬の訓練に参加するようになった犬もいます。
前号(vol.28)で初登場したコアの弟分アオちゃんは生後3ヶ月から、コアの救助犬訓練に見習い犬として楽しく参加しています。

「うちの子救助犬体験」も子犬の頃から楽しくチャレンジできます。楽しくかくれんぼ遊びを繰り返すことで、あなたと愛犬の絆を深まることでしょう。
『うちの子救助犬プロジェクト』についてのお問い合わせは、