恐怖の猛毒キノコ『 ミカワクロアミアシイグチ 』 | 自然観察・昆虫 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2019.01.17

    恐怖の猛毒キノコ『 ミカワクロアミアシイグチ 』

    カエンタケは今でこそ猛毒キノコとして有名になったが、わずか20年ほど前までは紹介しない図鑑があるほど、マイナーなキノコだった。写真/浅井郁夫

    キノコの“食用”と“毒”はどう判断している?

    キノコ図鑑を手にすると、食用、毒、食毒不明といった解説がある。そもそも、食用キノコと毒キノコは、どのように区別しているのだろうか。多くの人は、科学的に成分を分析して、厳密に調べたうえで判定されていると思っているかもしれない。実際は、“経験則”に基づいているということは、この連載の第1回目で紹介したとおりだ。

    つまり、過去に『このキノコを食べて中毒した』という人がいれば毒キノコ、『誰もがおいしく食べている』のであれば食用キノコ扱いなのである。なぜ、科学的な調査が行なわれないのだろうか。千葉県立中央博物館の吹春俊光さんが解説する。

    「ひとつのキノコには、たくさんの化学成分が含まれています。未知の毒成分も次々に見つかっているような現状であるため、いったいどれが毒成分であるのか…と検証するには膨大な手間と時間がかかります。それに、日本産のキノコの種類そのものが数千種類といわれているため、ひとつひとつを調査するだけの予算も人手もありません」

    中毒者を出さずに猛毒とわかったキノコ

    キノコの食用・毒の分類があくまでも経験則に基づいているのは、こうした事情によるものなのだ。基本的には、誰かが中毒した後に鑑定に回るケースが一般的である。そのため、カエンタケのように、後から猛毒とわかる例も少なくない。未知の毒キノコはまだまだたくさん存在すると考えられる。

     人が中毒をおこす前に、動物実験によって毒キノコと判明したものとしてコテングタケモドキが知られている。しかし、中には新種記載される前に、そして人による中毒が起きる前に猛毒キノコとわかったものもある。ミカワクロアミアシイグチという、愛知県で発見されたキノコだ。

    「このキノコの発見者はアマチュアのキノコ研究者でした。発見者によると、強い異臭がしたということです。そのため、名古屋大学に持ち込んだところ、成分分析によって新規の毒成分が検出され、マウスを使った実験を経て猛毒キノコとわかったのです。いずれにせよ、死者や中毒者を一人も出さずに毒キノコとわかった稀有な例の一つといえるでしょう」

    現在の発見例は愛知県や三重県だが、常緑ブナ科の森に発生するため、他の地域でも見つかる可能性は十分にあるというから要注意だ。

    ミカワクロアミアシイグチ。“ミカワの名は、愛知県の三河地方で初めて発見されたことに由来する。全体が黒っぽいイグチ類には、食用にされることもあるウラグロニガイグチなどがあるため、注意を要する。写真/中條長昭

     安全と考えられていたイグチの仲間

    ミカワクロアミアシイグチは、ヒダの部分が網状になっているイグチ科のキノコだ。イタリア料理などに用いられる高級キノコ“ポルチーニ”もこの仲間である。実は、イグチ科は、ほんの数十年ほど前は毒キノコが存在しない安全なグループと考えられていた。

    そこに大きな落とし穴があった。

    「その後、ドクヤマドリを筆頭に、様々な毒をもつイグチ類が次々に発見されました。致死的な毒をもつミカワクロアミアシイグチの発見で、もはや安全なグループとはいえなくなりましたが、古い知識をもっている“キノコ狩り名人”がいる可能性もあります。イグチの仲間は見た目が肉厚で、いかにもおいしそうなので気を付けましょう」と、吹春さんが警告する。

    アウトドアブームが広がりをみせている。キャンプ中にバーベキューの食料を調達する一環として、キノコ狩りを楽しむ人も多い。イグチの仲間は自然豊かなキャンプ場の周辺にも多く見つかるため、注意を喚起したい。疑わしきキノコは絶対に利用しないようにしたいものだ。

    監修/吹春俊光(千葉県立中央博物館)
    構成/山内貴範

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