
1970年代から、アフリカ、ユーラシア、南北アメリカ大陸の辺境の地を旅しながら、現地で生き抜く人々の姿を撮影し続けてきた写真家、野町和嘉さん。50年にわたるその足跡を代表作の数々とともにふりかえる大展覧会「野町和嘉―人間の大地」が、2025年7月5日(土)から8月31日(日)まで、東京の世田谷美術館で開催されます。
辺境の地で生きる人々の姿を見つめ続けた写真家の50年間の軌跡

戦後の日本のみならず、世界を代表するドキュメンタリー写真家の一人でもある、野町和嘉さん。若くして写真家を志して上京し、25歳の時にアフリカのサハラ砂漠を訪れた野町さんは、世界各地で当時まだ知られざる場所だった辺境の土地を訪ね、美しくも苛烈な大地と、そこで生きる人々の姿の撮影に取り組みはじめます。
それらの写真は、当時を代表するグラフ雑誌『LIFE』をはじめ、各国の雑誌に掲載されていき、世界の人々を驚かせることになりました。野町さんの最初の写真集『サハラ』は、日、英、伊、仏、米の5ヶ国で国際出版されています。

さらに野町さんは、エチオピアの洞窟聖堂やチベットの仏教僧院、さらにはイスラーム教の聖地メッカとメディナなど、外部の人間が簡単には近づけない、深い信仰が古来から培われている土地での撮影にも果敢に取り組み、写真集などの形で発表していきます。
そうした成果の集大成として2005年に刊行された写真集『地球巡礼』は11ヶ国語で出版。2013年にはイタリアのローマ市立現代美術館で回顧展が開催されました。79歳になる現在も、野町さんは精力的な活動を続けています。

世田谷美術館で開催される展覧会「野町和嘉―人間の大地」では、サハラ、ナイル、エチオピア、グレート・リフト・ヴァレー(アフリカ大陸を縦断する大地溝帯)、メッカとメディナ、チベット、アンデスという7つのテーマに沿って、野町さんが撮影してきた代表作の数々が展示されます。

これまでの50年で、世界は刻々と変化し、辺境と呼ばれる土地での人々の暮らしも変わっていきました。さまざまな理由で、今ではすっかり失われてしまった風景や伝統も少なくないそうです。そうした移り変わりをカメラを通じて見つめ続け、記録し続けてきた野町さんの写真は、この地球上に生きる人間の、壮大で貴重な記録でもあります。
この世界で、変わってしまったものは何か。それでも変わらないものは残されているのか。写真に興味がある人はもちろん、大地と人間との関わりについて、じっくり考えてみたい人にもおすすめの展覧会です。
「野町和嘉―人間の大地」
会期:2025年7月5日(土)〜2025年8月31日(日)
会場:世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1-2)
https://www.setagayaartmuseum.or.jp
時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館:月曜
料金:一般1400円(各種割引設定あり)
講演会「人間の大地を踏みしめた50年を振り返って」
講師:野町和嘉さん
日時:2025年8月2日(土)15:00〜16:30
会場:世田谷美術館 講堂
定員:先着140名(参加費無料・手話通訳付き)