
調味料にすれば季節を過ぎても楽しめる
山菜が一斉に芽吹く季節は忙しい。あれもこれもと目移りしているうちに、駆け抜けていく山菜に取り残されてしまう。
季節の野生食材を食べたいけれど時間がない……なんて人におすすめなのが調味料づくり。
野生のスパイスを塩や醤油、油などと合わせれば長期間保存でき、季節を過ぎてもその味を楽しめる。
「このサンショウ、前から目をつけてたんだよね〜!」
とは、とある林にやってきたハラボー。目論見どおり、サンショウは芳香を漂わせる実をたわわにつけていた。
「この実を集めて、洗って茹でて……っと。醤油と油に漬ければ、一年は香りを楽しめるぞ」
続けて向かったのは河川敷。夏草が一面に茂るが、ところどころに茶色い立ち枯れが目立つエリアがある。
「この時季に枯れているのはカラシナの群落。春先に菜の花畑だった場所はいま、私のマスタードの狩り場に!」
乾いた莢からは、軽く握るだけでたくさんの種子がこぼれ出す。小一時間で一年分のマスタードになる量が集まった。帰りがけに土手からノビルを引っこ抜くのも忘れない。
「調味料にしておけば長い間楽しめる。料理に使うたびに収穫の喜びが蘇ります!」
※自家製の保存食には失敗がつきもの。変質の可能性を頭の片隅におきながらご賞味を!
サンショウ

東アジア一円に分布。日本では北海道から九州までの低山に多い。半日陰を好むので庭に植える際は大きな木の陰や日が当たりすぎない場所へ。実(未熟果)の収穫の適期は5〜6月。

サンショウの木は雌雄異株なので、実がつくのは雌の株に限られる。枝には鋭い棘もあるので、収穫の際は気をつけたい。
小粒でもピリリ! サンショウの醤油漬け&オイル漬け


サンショウの実を収穫し、房からひとつずつちぎり取る。果柄が残ると口当たりが悪いので、できるだけ実だけを取る。
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沸かした熱湯で実を3分ほど煮て冷水にさらし、水気を拭き取る。浸水が長いと辛みが弱まる。
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煮沸した容器に実を入れ、醤油漬けの場合は濃口醤油、オイル漬けの場合はオリーブ油を注ぐ。
右:醤油漬け
豆腐や焼き魚の味付けに。液面より上に実が出ているとカビることがあるので液は深めに。冷蔵庫で1年ほど保存できる。
左:オイル漬け
辛みがほしいパスタや中華料理に。オリーブ油の代わりに香りの薄い米油を使うと、よりサンショウの香りが際立つ。


Complete!

白身魚の刺身やモッツアレラチーズにオイル漬けをふればアクセントに。醤油漬けは豆腐と相性がいい。ちりめんじゃこやダイコンおろしと合わせても美味しい。
セイヨウカラシナ

各地の河川敷などで大群落をつくる。春先から株を伸ばし、初夏には実をつけて枯れ落ちる。実の収穫の適期は6月。
鮮烈な辛みが効く!
カラシナの自家製マスタード

枯れた株から莢をちぎり取り、大きめのボウルで受ける。シートを使うとより効率良く種子を集められる。
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莢を手で揉んで、殻から種子を取り出す。そのあと目の細かいザルに通して殻と種子を選り分ける。
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集めた種子には違う草の種子も混じっている。種子を風にあてて、比重の違いを使って不純物を取り除く。
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選別された種子。小さな虫が混じることがあるが、その場合は半日ほど日光に当てると虫が自分で逃げる。
酢と甘みで性格が変わる

種子を瓶に入れて種子が浸かる深さまで酢を注ぎ、5日ほど寝かせる。種子が酢を吸ったら酢を足しておく。
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種子を摺鉢で潰し塩を加えて調味(少量の砂糖や蜂蜜を加えても良い)。冷蔵庫で1か月熟成させてから使う。
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使う酢で風味が変化!
Complete!

完成から1か月で味がなじむ。冷蔵庫なら数か月保存可能。仕込みに使う酢の種類や塩の量で味が変わるので数パターン作ってみたい。
ノビル

「野の蒜(ひる。ネギの仲間の総称)」の名のとおり、全国の低地に分布。都市近郊の空き地や河川敷でも見られる。繁殖力は旺盛でよく茂る。収穫の適期は4〜5月上旬。
いちばん身近な野生ネギ
ノビルの醤油漬け

冬から春にほかの草に先んじて葉を茂らせて、ほかの草が伸びる5月下旬に枯れおち、秋まで休眠する。

太い株を掘り上げて水洗いし、ひげ根を切除。球根と茎の白い部分だけを残して刻む。柔らかい株の場合、緑の葉はチヂミなどの具材に活用できる。
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濃口醤油に漬ければすぐに食べられる。白飯や豆腐に合わせて美味。長く漬ける場合は細かく刻みすぎないほうが良い。
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Complete!

ネギの仲間特有の辛みと香りが食欲を増進! 卵かけご飯の味付けやお好み焼き、炒飯の具に使っても美味しい。
【「都会でもジオってます!」編集ハラボーより】
小特集にて、南伊豆へジオ旅に行ってきました! ガイドの武田さん曰く、その土地で最もよく採れる石が使われることの多い石垣は、地質を読み解くカギとなるのだとか。東京へ戻ってきてからも、家々の石垣を眺めては、遥か昔の地球に思いを馳せて恍惚としております。
※構成/藤原祥弘 撮影/矢島慎一
(BE-PAL 2025年6月号より)
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