
来年の潮干狩りシーズンの参考までに…体験談をご紹介

編集 ハヤサカ
潮干狩りは未体験だがアウトドア歴は長い。もう、他人の前で子供に素人ムーブは見せられない。誰よりもスタイリッシュに潮干がるために、コソ練を決行!
「潮干狩りがこんなにも過酷だなんて知らなかった……」
とある大潮、広大な干潟でひとり途方に暮れるのは編集ハヤサカ。完璧な潮干狩りを家族に提供するべく秘密の練習に繰り出したが、春の嵐に見舞われて顔には大粒の雪が打ちつける。
「しかし私には手塩にかけた耐寒ギア(脂肪)がある。誰もいないのはむしろ好都合。この1日で潮干狩りをマスターしちゃいますよ……!!」
ものは試しと砂浜に熊手を突き立てると、さっそくポロリとアサリが転がり出した。
「いた!でもこのペースでは満ちるまでにたいして採れない。もっといい場所があるはず」
続けて掘ったのは、まだ水が残る浅瀬。ここはひと掻きで数個のアサリが顔を出した。
「ハハ〜ン。浜にはちょっとした丘と谷があるけど、アサリは谷に多いわけね。おっ、この穴はもしや噂のマテガイ?塩を入れたらどうなるの?あっ、本当に出てきた!これは楽しい。縄文人が貝塚築くほど掘っちゃうわけだわ〜」
潮が満ちるまでの1時間で1㎏ほどの貝を収穫。行きは空だったバケツの重さがうれしい。
「砂のなかから貝を探すのは宝探し感があるし、見つけたときには原始的な喜びがわく。今年から子供たちと楽しむぞ〜」
基本の道具
バケツ

塩

水切りかご

手鍬・熊手

潮干狩り道具は地域ごとに使ってよいものが異なるので、遊びに行く場所のルールに従おう。
大潮の干潮を狙え! アサリは澪筋にひそむ
干

満

潮干狩りの最盛期は干満の差が大きくなる春〜初夏。新月と満月の前後に訪れる大潮・中潮の干潮時に行なう。潮が引いた浜には緩やかな起伏があるが、アサリは谷状の澪筋に多い。
嵐の渚、ひとりきりの潮干狩り

最盛期には連日数万人が繰り出す浜をひとり占め。「ものは考えよう。潮干狩りデビュー戦で人気ポイントを独占できるなんて超ラッキー!でも指が動かなくなってきた…」

試掘を繰り返して効率アップ!
澪筋のなかでもアサリが濃い場所と薄い場所があり、数mずれるだけで密度に雲泥の差があることも。数回掘って少なければ場所をずらしてみる。
多

少

罰金3000万円の胸騒ぎ! 守ろうぜ、海のルール

海面の利用法方法や使ってもよい漁具、採捕してもよい魚介類は3つのルールで規定される。ひとつは地域の遊漁のルール。おもにそこで採捕が許される水産物を定めている。
もうひとつは都道府県ごとに異なる漁業調整規則。遊漁者に許される漁具や漁法を定める。そして国が定める「特定第一種水産動植物」。アワビ、ナマコ、シラスウナギは漁業権がない場所でも遊漁者は採集できない。刑罰が重たいので要注意!
マテガイ、しょっぱい初体験



アサリと同所で採れるが、深い場所にいるマテガイ。そこで使うのが手鍬と塩。手鍬で浜の表面を削ぐように掘ると菱形の巣穴が現われるので、そこに塩を注ぐ。すると塩気に驚いて穴から飛び出してくるので、すかさずつまんで引き上げる。
その場の海水と持ち帰る
その場の水がいちばん砂を吐きやすいので、海水も一緒に持ち帰る。寒い時季は貝と海水を一緒に持ち帰ってもよいが、暑い時季は貝が活発に呼吸して酸欠になるので分けて持ち帰る。

↓
砂抜き→空気さらしで旨みをUP!

砂抜きするときは貝を水切りかごに入れ、浅く海水を張る(海水がないときは塩分濃度が3%の塩水をつくる)。アサリの水管が水面に届く深さにすると、酸欠で死ににくい。砂抜き後に引き上げ、数時間空気にさらすと旨みが増す。

TOKYO BAY ASARI COLLECTION
アサリ
北海道から九州にかけて分布。内湾や汽水域の砂浜、砂利浜に生息し、地域ごとに殻の模様が異なる。東京湾のものは模様にメリハリがあり、鮮やかなブルーのものが混じる。


ツメタガイ
北海道から沖縄にかけて分布。二枚貝の殻に穴を開けて中身をすする、"貝を食べる貝"。煮付けにすれば食べられるが、それほど美味しくない。
シオフキガイ
東北以南から九州にかけて分布。砂を吐きにくいため敬遠されるが可食。少量の水で茹でて身を取り出し、茹で汁のなかで洗うと良い。
マテガイ
北海道から九州にかけて分布。貝殻から斧足を出したまま浜に転がっていることがあるため、この名がついた。さっと湯がいて美味。
バカガイ
北海道から九州にかけて分布。アサリの旨みをさらに強くしたような風味をもち、砂抜きも容易なので、こちらを本命にする人も。
つくろう春の海の味! 和洋貝料理2種

深川飯
現在「深川飯」には白飯にアサリの味噌汁をかけたものと炊き込みご飯の2種あるが、こちらは炊き込み版。バカガイ、シオフキガイも一緒に調理してOK!
作り⽅
❶砂抜きしたアサリをひたひたの水でさっと茹で、身を取り出す。身には少量の醤油をからめておく。アサリから出た汁は残しておく。
❷酒、醤油、みりんを合わせた液に①のアサリの煮汁を合わせ、加水して液量を調整。刻んだ生姜とニンジンも加え、この汁で米を炊く。味付けの濃さは好みでよいが、濃すぎると焦げ付きやすい。
❸米が炊き上がったら、醤油を絡めたアサリを米と混ぜ合わせて5分ほど蒸らし、茶碗に盛って海苔を散らす。
ボンゴレビアンコ
言わずと知れた、アサリ料理の王様。……だけど、ひと工夫でもっと日本人好みの味になる!
作り⽅
❶塩分濃度1%の塩水を沸騰させ、スパゲッティを茹でる。
❷冷たいフライパンにオリーブオイルを敷き、刻んだニンニクと唐辛子を弱火で加熱する。香りが出たらアサリ、日本酒、バターを加えて中火で加熱する(本式は白ワインだが日本酒のほうがまろやかに)。
❸指定茹で時間より2分早くスパゲッテイを引き上げ、アサリの入ったフライパンへ。加熱しつつ味見をする。スパゲッティの茹で汁を少量追加して塩気を調えつつ乳化させる。
❹スパゲッティに火が通ったらイタリアンパセリなどの香草を散らして盛り付ける。

Complete!
※構成/藤原祥弘 撮影/矢島慎一
(BE-PAL 2025年5月号より)