守りたい海
冷たい北風が吹き始め、色づいていた街路樹の葉が落ち裸の姿を見せています。冬の海は肌寒く感じられますが、海を愛する人々にとっては、その寒ささえも魅力的に思えるのではないでしょうか。寒い冬でも港や沖合には釣り人を見かけます。冒頭の写真は、沿岸を進む釣船を撮影したものです。
釣り糸を垂す海中に思いを馳せ、海中はどうなっているのだろうか。どんな魚が泳いでいるのだろうか。そんなことをイメージしながら場所や道具を選び海へ挑む。きっと釣り人なら誰しもがそうなのだろうと思います。
今回は海中清掃の話です。
瀬渡し船の「妙丸」と有志50名より依頼を受け、今年で2回目となる活動に参加しました。
鹿児島県南さつま市の坊津地域にはリアス海岸が続き、磯釣りを楽しめるスポットが点在します。昔から多くの磯釣りを楽しむ方達がこよなく愛し、通う海です。
しかし、その海は変わりつつあると聞きました。この海に30年以上通う方は、「沢山釣れていた魚は減り、イシガキダイやスジアラなどの南方種の魚を目にするようになった。そして、昔の3分の1も釣果は上がらなくなってしまった」と語ります。
それでも通い続けることに、海への深い愛を感じます。
確かに魚の群れはいたけれど……
そんな方達によって企画されたのが、私たちダイバーによる海中清掃です。「根掛かりした針や、落としてしまった釣具など、磯場の環境を自分たちで悪化させてしまっているのではないか」との思いから発案されたものでした。当初は「自分には関係ない」「そんな事をする必要はない」「海中清掃に意味があるのか?」という意見もあったそうですが、少し理解を深めていただき、活動費を集めて2年前から海中清掃に取り組んでいます。
実際に潜水すると、水面下にはメジナの群れ、中層ではニザダイの群れやイシダイ、ツムブリ、タカサゴなどの回遊魚が見られ、海底付近では大きなスジアラなどが見られました。それでも昔に比べると、魚影は薄いのでしょう。
釣り人が乗る磯場の真下には、小さなサンゴや岩肌で絡まる釣り糸やテグスがたくさん見られました。海底には針やオモリは当然のことながら、ビールの空き缶やライトなど、磯場で使用した物や落下したと思しきものが沢山ありました。
海を想う気持ちがやまないことを願って
海中には大物がかかっても切れない頑丈な仕掛けが多く、数年経過しているであろうものも、サンゴや岩に絡まり朽ちることなく残っていました。これらは、自然に還ることなく海に残ってしまいます。釣りを楽しむ立場からすると、「せっかく買った釣具が海に消えてしまった」と残念に思うかもしれませんが、海からすると困ってしまいます。
今回の清掃で集まった海中ゴミは、箱(コンテナ)3つほどの量になりました。
活動を通じて、海を想う気持ちが永遠に続いてほしいと願うばかりです。
※撮影協力 瀬渡し船「妙丸」、ダイビングショップSB
鹿児島県知覧出身。鹿児島市「ダイビングショップSB」の現スタッフ。地元、鹿児島を拠点に海中の魅力を日々発信中。 休日は身近な自然写真の撮影活動。 海中生物の生態行動の観察を積み重ねている。
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